とびうお散歩道
戸田愛理
静岡県
浜松市立雄踏中学校
中学校2年生
全体説明
五年前……私の家の周囲は畑だった。ほかには何もなく、殺風景な地域だった。
家の前の畑には、いろいろな動物が来た。土手からはヘビが、竹林からはキジが、そして新川からはカメまでもが。農作物への被害は少ないので、私はかわいいお客さんとして扱っていた。
それから5年が経って、辺りの様子はすっかり変わってしまった。畑は駐車場やオフィスに、土手は埋め立てられ、竹林は伐採されてしまった。もうふらっと遊びに来られるような場所ではなくなってしまったのだ。
しかし、自然は残された。埋め立て地の住宅街の南側に、緑いっぱいの遊歩道と公園ができた。公園の愛称は「とびっこ」。雄踏が世界に誇る、フジヤマのトビウオこと古橋廣之進さんにちなんで付けられた。
古橋さんの功績と豊かな自然を、後世に伝えるための良い場所になったと思う。
観察ポイントごとの説明
ポイント(1) カメのトンネル
とびうお大橋の下には、遊歩道から新川へと続く短いトンネルがある。このトンネルは、5年前に我が家に迷い込んだミシシッピアカミミガメを川に帰すときに通ったものだ。以前はよくハゼ釣りに行くために利用していたのだが、最近はめっきり使わなくなってしまっていた。
久しぶりに通り、たくさんの生き物たちがいるのを見て安心した。ミシシッピアカミミガメは、今も堤防の草むらに住んでいるようだ。
ポイント(2) アシ原沿いの遊歩道
アシ原に近い2の付近はイソガニがあちらこちらで見られる。人が近づくと逃げ隠れてしまうのだが、しばらくじっとしていると、また出てくる。ハサミを一所懸命振りながら横歩きをする姿は面白い。
一面濃い緑のこの辺りで目立つのが、タカサゴユリの白とマツヨイグサの黄色。草むらの中で誇らしく咲いている花々に、つい頑張れと声をかけたくなる。私達の手でこの環境を守りたいと思う。
ポイント(3) マテバシイの並木道
西区役所の周囲の遊歩道はマテバシイの並木道になっている。まだ新しいこの遊歩道は、近所住民の良いジョギングコースとなっている。空気の澄んだ朝に、日光を浴びてキラキラと輝く新川に沿って走るのは、何とも気持ちがいい。
春から秋にかけて、遊歩道の脇には可愛らしい花がたくさん咲く。その良い香りに誘われて、チョウやミツバチなどが遊びにくる。特に、所所に植えられたアベリアは、キアゲハのお気に入りのようだ。
ポイント(4) 春のさえずり
春になり、沿道に花が咲き始めると、この公園は鳥の声でにぎやかになる。メジロ、ウグイス、ツグミにヒヨドリ。毎年見る顔ぶれにまた会えるととても嬉しく思う。
公衆トイレに巣を作っているのは、ツバメだ。頭上から小さな鳴き声がしたので見上げると、2、3羽のひなが餌を求めて親を待っていた。しばらくして親が帰ると、ひなは競うように餌をついばんでいた。
鳥にとって居心地の良い環境があって嬉しい。
ポイント(5) 憩いの噴水広場
公園の真ん中には小さな噴水広場がある。夏場は、毎日決まった時間に上がる噴水に子供たちがたくさん集まってくる。その中に混ざって水を飲みに来るのがセキレイ科の鳥、ハクセキレイやセグロセキレイだ。人間が騒いでいてもおかまいなしに遊びにくる姿がとても可愛らしい。
いつまでも、人間も鳥も過ごしやすい場所であって欲しいと切実に思う。
ポイント(6) トンボたちの芝生
大きく広がる芝生広場。その上の澄んだ青空を、気持ち良さそうに飛ぶトンボたち。この風景が私は大好きだ。時間を忘れて眺めることができる。
私が一番気に入っているのはチョウトンボだ。光沢のある黒い羽を広げてゆらゆらと飛ぶ。その羽は光の当たる角度によって紫に見えたり青に見えたり、美しい。アキアカネが競うように飛び交う姿もまた好きだ。
来年の夏もまた、会いに来ようと思った。
ポイント(7) 新川
新川で毎年見られる、黒い大群がいる。カワウだ。新川はカワウやサギ科の鳥にとって過ごしやすい場所だ。餌となる魚が豊富で、留まりやすい木もたくさんあるため日光浴もできる。水深も、浅いところから深いところまであるため、いろいろな種類の鳥が遊びに来ることができるのだ。
水面を跳ねる小さな魚はマハゼだ。おそらくカワウが狙っているのはこれだ。最近はハゼ釣りをする人が減っているので、カワウにとっては嬉しいことだ。
ポイント8
この辺り一帯に広がるアシ原。5年程前から始まった周辺の土地の開発によって、消えてしまうと思われていた。しかし、自然保護のため残しておいてくれたのだ。そのため今でも、たくさんの水鳥を観察することができる。
アシの葉をかき分けてのぞいてみると、ホシハジロやコガモなどカモを間近で見られる。アシの多いところは水草も多いらしい。毎年気に入って戻ってきてくれるのは、何となく嬉しい。
ポイント9
この公園には野鳥かんさつデッキが設けられている。区役所東のアシ原からとびうお大橋まで一望できるため、絶好のバードウォッチングスポットだ。おすすめの時期は、冬鳥が多数来る冬。特に早朝がベストだ。マガモやキンクロハジロ、オナガガモの食事風景や、カワウの群れの飛翔を見ることができるからだ。とびうお大橋の上で羽を休めるユリカモメも見られるかもしれない。