応募期間

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受賞作品一覧
佳作
第28回 中学生の部

のんびり散策 早朝の公園

塩飽詩織

兵庫県
兵庫県立大学付属中学校
中学校2年生

全体説明

私のくらす相生市は、「ペーロンの街」として有名です。毎年ペーロン祭が開かれ、たくさんの花火が上がり、幾艘ものペーロン船が相生湾の水面を滑るように進み、海上からも陸上からも元気な掛け声が響いてきます。相生市の人口は3万人余り、都会でも田舎でもない所です。

 そんな相生市には、私のお気に入りの場所があります。それは「岩屋谷公園」です。幼い頃そこへピクニックに出かけたり、小学校の遠足ではみんなと遊んだり、私にはたくさんの思い出があります。そこは私にとってたくさんの自然とふれあえる場所であい、また家族との交流の場でもあります。そんな思い出がたくさん詰まったこの公園で、なんとなく聞いていた虫の声や鳥たちのさえずり、なんとなく見ていた花や植物のことについてもっと知り、自然を楽しみたいと思うようになりました。そこで、私はこの思い出あふれる「岩屋谷公園」を、散策することにしました。

観察ポイントごとの説明

(1) ヒグラシ・スズメ

 まだ薄暗い公園に着くと、最初に聞こえてきたのはヒグラシとスズメの鳴き声です。早朝の公園に来たのは、今回が初めてです。普段ではヒグラシの声は聞きません。私は、時間帯によって鳴くセミの種類が全く違うことが面白いとおもいました。「カナカナカナ…」という澄んだ鳴き声を聞いていると、少し涼しく感じました。小枝にはスズメがチュンチュンと鳴きながら、何かをついばんでいました。最近はスズメが減っているそうです。家の近くでも聞こえていたスズメの合唱が、今年はあまり聞こえてきません。あのかわいい歌声を聞くことができないので、ちょっと残念です。

 

(1)   アメンボ

 公園の入口左側には、人工の小川と池があります。池を眺めていると、たくさんの波紋が見えました。近寄って見てみると、数十匹のアメンボが集まって水の上を滑っていました。一般的な池ではたくさんの水生生物の住んでいるイメージがありますが、この池では水が頻繁に枯れるので、魚が住めないそうです。水の枯れることがあるという環境を理解して、全ての生物が生活を工夫したり、その環境を上手に利用したりしながら暮らしていることを実感しました。

 

(2)   アブラゼミ・イロハモミジ・ウスカワマイマイ

 遊歩道の脇には、イロハモミジがありました。緑色のプロペラ型の実をたくさん付けていました。モミジは種は夏にできることを知りました。種を飛ばすために風を使うというアイデアは、私は思いつかないと思います。イロハモミジの近くの木では、アブラゼミがジジジィと鳴いていました。アブラゼミの鳴き声は、私に夏の太陽を思わせます。夏が来た感じがします。その木の根元に、ウスカワマイマイが自分の殻に体をしまい込んでいました。ここ2、3日間は雨が降っていないので、落ち葉に隠れてひっそりと休んでいるようです。小川の水を掛けてやると、しばらくして頭を出しました。

 

(3)   アラカシ・コガネムシ・クリ

岩屋谷公園には、ドングリのなる木がたくさんあります。もう、緑色の小さなドングリが実り始めていました。秋になると、色々な大きさや種類のドングリが落ちています。私は、ドングリをたくさん拾って家に持って帰った思い出があります。でも、ドングリの種類は知りませんでした。そこで葉を持ち帰って調べると、この木はアラカシでした。別の場所にもドングリのなる木があります。シラカシ、コナラ、クヌギ、などがあるようです。去年のドングリがまだ残っていないか探していると、土の上にコガネムシがいました。背中が色とりどりに輝き、まるで虹を背中に負っているようでした。すぐ近くに、真っ黒のクリの実が落ちていました。去年土にたどり着けなかったクリでしょう。上を見あげると、クリの実が木になっています。ピンポン玉より小さなイガグリがたくさん実っています。図鑑で調べてみると、ドングリには落葉樹と常緑樹の2種類があることを知りました。

 

(4)   ウグイス

 この公園の中ほどまで進むと、空はすっかり明るくなり、陽射しもさしてきました。すると、鶯の鳴き声がしました。この公園では、春先からウグイスの鳴き声を聞くことができます。春よりも、鳴き方がずいぶん上手になった感じがします。木陰の中に、黄緑色のかわいい姿を見ることができました。昔の人も、鶯の歌声を愛でていたのかなあと思いました。

 

(5)   ヘビイチゴ・アキアカネ

木々によって遊歩道はほとんど日陰になって、風を心地よく感じられました。遊歩道の脇にある溝の中に、真っ赤な色をしたヘビイチゴが這うように生えていました。同じ這う植物の仲間でも、上に這う植物と横に這う植物があることが不思議です。奥の藪を見ていると、アキアカネを見つけることができました。秋になると、アキアカネをよく見かけるのですが、夏にアキアカネを見るのは初めてでした。秋の頃よりも緑がかっていて、とても驚きました。

 

(6)   ニホンミツバチ・シジュウカラ

 今まで自分の歩いてきた道を見渡せる高い場所に、お花畑があります。その中を、ミツバチが飛んでいました。他のハチよりも小さいけれど、刺されると痛いので、ミツバチが飛んでいくまで静かにじっとしていました。そのとき、山のほうからシジュウカラの鳴き声がしました。姿を見ることはできませんでしたが、とてもかわいい鳴き声でした。鳴き声が何を意味していたのかということが、とても気になりました。シジュウカラ以外にも、4、5種類くらいの鳥の鳴き声がしていました。姿が見えないので鳥の名前は分からないけれど、色々な鳥がすぐ近くの公園にいることが分かりました。

 

(7)   フナ

お花畑の上には貯水池があります。近くの山から水が流れてくるので、いつでも水があります。岸辺近くでは、フナが五匹ほど泳いでいるのが間近で見えました。美しい緑に囲まれた貯水池なのですが、水はあまり綺麗ではありません。枯れ葉の浮いている濁った水の中でも、フナはみんな元気に泳いでいます。この貯水池では、他の魚やカメやカニも見たことがあります。でも、今日は、フナしか見つけられませんでした。

 

(8)   ツユクサ・トビ

 公園を取り囲んでいる山々を眺めていると、岩屋谷公園の名前の通り、ここが谷になっていることがよく分かります。東側の山の頂上近くの木に、何かの巣がありました。その巣の上空を、トビがぐるりと大きな輪を描きながら飛んでいました。きっと、あの巣を守っている親鳥なのでしょう。親が子を守ることによって、今まで生き物の命がつながってきたんだなあと思いました。トビの鳴き声は、谷によく響いています。ふと足下を見下ろすと、ツユクサが生えていました。綺麗な青色で、とても可憐な花でした。

 

(9)    クマゼミ・ハシボソガラス

 太陽が高く昇り、だんだん陽射しが強くなってきました。この辺りでは、クマゼミが鳴いています。クマゼミの鳴き声を聞くと、いっそう暑く感じます。最近ではクマゼミが増えているそうです。クマゼミは暑い地方に多く生息しているそうなので、温暖化が影響しているのだと思います。その近くの木の上に、ハシボソガラスが留まっていました。カラスは害鳥だという概念がありますが、人間が環境を崩した結果、カラスがゴミをつつき、悪者扱いされるようになったと思います。カラスが環境の変化に対応しただけで害鳥と呼ばれるのは、可哀想だと思います。

 

(10)           ショウリョウバッタ・アジサイ

 この辺りはよく整備されていて、低木や芝生が植えられています。その端の茂みにアジサイが咲いていました。アジサイの季節は既に過ぎ、紫や青い花は少し色あせていました。梅雨の頃はもっと綺麗だったんだろうなあと思いました。草むらに足を踏み入れると、何かが一斉に飛び出してきました。ショウリョウバッタの赤ちゃんです。1cm位のショウリョウバッタを驚かせてしまったようです。すぐ近くには、コオロギやキリギリスの赤ちゃんもたくさんいました。私が草むらを歩くと、次々と飛び跳ねています。あとひと月もすると、これらの虫たちはセミに代わって鳴きだすでしょう。こうして、またひとつ季節が進んでいくのでしょう。池をぐるりと回れば、ゴールです。

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