応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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受賞作品一覧
優秀賞
第28回 中学生の部

いきものいっぱい高尾の森

篠原由香

東京都
明治大学付属中野八王子中学校
中学校2年生

全体説明

東京都八王子市にある高尾山は、老若男女とわず日帰りで楽しめる山で、特に富士山と同じミシュランの三つ星に認定されてからはいつも沢山の登山客でにぎわっています。私も小学生の頃は年に二・三度は登っていたので全てのコースをガイドできる気がします。

 その高尾山のふもとに私の家があり、場所は紅葉台といいます。高尾山に続く初沢山も家の前から登れるので、幼稚園の頃から探険路でした。東京なのに家の庭にはカナヘビ親子が顔を出し、セミがかえり、ツチガエルが住みつき、鳥が巣づくりをします。家近くの道路でノウサギやハクビシンに遭遇することもあるので母は都内から越してきた時、自然すぎる環境に驚いたそうです。

 私は小さい頃から生き物の採集と飼育が大好きな兄と一緒に網や虫かごやバケツを持ってよく川などに行っていました。そんな高尾の思い出深い散歩道です。

観察ポイントごとの説明

(1)   どんぐり階段

秋になるとクヌギの木から沢山ドングリが落ちてくるので、この名がつきました。小学1年生の初登校の日に両親が見送ってくれたのを思い出します。二百段近いこの階段を毎日利用したので、紅葉台に住む子供達は持久力や足腰が鍛えられ、地域のマラソン大会にも強いと言われていました。帰りの上りはきついのですが、石の階段の隙間にニホントカゲがすばやく逃げるのはかくれんぼの様でした。

 

(2) みころも霊堂

 高尾駅から徒歩五分。私の通っていたみころも幼稚園や浅川小学校の裏手にみころも霊堂があります。始めて訪ずれた時は黄金色の大きく奇妙な建物に驚きましたが、これは産業災害により殉職された方を慰霊する為に国が建立したもので、私が幼稚園生だった頃に雅子様がいらして車の中から手を振って下さいました。ここの池には大きなニシキゴイやミドリガメがいて、近寄るだけでも二十匹以上の様々な色のコイが集まってきます。

 

(3) みころも公園 奥の泉

みころも霊園の周辺はみころも公園と名付けられ、菅原道真公の像もあります。人が入りこまない霊堂の奥手に池につながっている小さな川や泉があり、きれいな水が出ています。だから付近の石を取り除くと今でもサワガニを見つけることができます。大きな木も茂っているので日光も当たらず、夏は避暑地として最適でとても落ちついた気持ちになれる場所です。

 

(4) 金比羅山下

 浅川中学校裏手にあたり西側山頂には金比羅神社があり、毎年家族で元旦に初詣に行く所でもあります。この辺は浅川地下壕という太平洋戦争末期、陸軍の計画によって掘られた十キロにも及ぶ大地下壕が点在しています。道の脇に小さな川があるのでシオカラトンボなどを見ることができますが残念なのは小さな川の護岸が工事されています。でも大雨が降るとすごい量の水が流れこむので仕方ないことだと思いました。

 

(5) 初沢山裏

この場所に限りませんが、高尾はオオスズメバチをよく目にすることがあるので、高尾山の遠足の時にも先生に黒や黄色の濃い目立つ色の服は着てこないように言われました。朽ちたウッドデッキの木片に止まって、木くずを強靭な口と顎でかじり取っている光景を見た時には、本当に凶暴なハチだと思い、ますます怖くなりました。

 

(6) さくら階段

私の住んでいる紅葉台住宅の西側の出入りルートがさくら階段です。名の通り四月の桜並木は本当に綺麗です。階段では何度かクロアゲハを観察できました。さくら階段を上る右手は草原の斜面とその奥が初沢山になり神奈川県の城山湖に通じるハイキングの入口です。最近、この斜面にイノシシを何度か目撃する情報が入り捕獲用のワナが設置されました。何だか可哀想な気もしてきました。

 

(7) 高尾紅葉台住宅

紅葉台は、山を切り開いた住宅地なので、多くの生き物に出会うことができます。家の前の山側ではノウサギ、夜の車道にはハクビシンがよく姿を現します。家の庭の梅の木には野鳥が巣作りしてくれて嬉しかったです。ウグイスやシジュウカラ、ムクドリのつがいなど沢山の来訪者もいます。カラスがバーベキューのお肉を取っていったこともあります。また、リーダーの浅野かけ声で後を皆が続く習性も面白いです。

 

(8) 桃源台公園

紅葉台には六つの公園がありますが、桃源台は一番大きく、自宅のすぐ近くにあります。夏の夜セミの幼虫が木にはい出して来て、早朝には薄緑色のセミの誕生を見ることができ、変わりゆく様は本当に感動します。また玄関の明かりをつけて、パイナップルの皮をおいておくと、早速カブトムシやコクワガタが来ます。また、卵を生んでから幼虫から成虫に何年かかえしていた時があり、家に二十匹以上の王国ができあがっていました。

 

(9) 拓殖大学近道

紅葉台から拓殖大学正門に抜ける切り通しの道です。紅葉台一帯はアブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミなど様々なセミを見ることができます。明け方四時くらいの鳴き始めは神秘的な感じで目覚めることがある程度です。雨があがる頃には鳴き始めるので、これから晴れるんだなというサインにもなります。また夕立が来て涼しくなる頃には、ヒグラシがカナカナと鳴いて、夏の夕方の良い風情です。

 

(10) 拓殖大学正門南側の休耕田

拓殖大学の南側は、殿入川源流部のひとつで、私が小さかった頃は田んぼでしたが、今は稲作をしていないので雑草が茂っています。でもその分生き物は多く、バッタにキリギリス、オニヤンマは小川に沿って迫力の飛行をしています。小川の脇を網でガサガサとすくうと沢山のヤゴ、ゲンゴロウにタガメ、ミズカマキリなどの水生昆虫を採る事もできます。網でガサガサとゆすり水生昆虫を採るのは、本当に楽しかったです。

 

(11) 休耕田脇の小川

小川の上流部でやや水深の深い所がありここで網をガサガサすると、小川の主のような十cm以上のアブラハヤや絶滅危惧種になっているホトケドジョウを見る事ができます。ホトケドジョウは愛嬌のある顔をしているので可愛いです。この場所は一番お気に入りの場所です。でも八王子バイパストンネル工事の影響かもしれませんが水量が減少してきているので自然が少なくなってきていることが肌で感じられて残念です。

 

(12) 穎明館中学・高校の東側沼地

草がぼうぼうと茂っていますが、沼地にアカハライモリを見つけることができます。何匹か家で飼っていたこともあり、その時はミルワームを餌として与えましたが食べてくれる瞬間は本当に嬉しかったです。朱色のお腹は強烈な印象ですが、性格はおとなしく、顔の表情も面白いです。一度酸素ポンプに吸いこまれてしまって大変でした。また脱走を企てホコリまみれになって部屋の隅から出てきたこともあって笑えました。

 

(13) 殿入中央公園

館町幼稚園は兄が通園していました。隣が雑木林を切り開いてつくった広い山の公園なので、子供達には最高の環境です。蛍を見ることもできます。殿入川源流のひとつですがこの辺りではザリガニが沢山いて、護岸の右の隙間に隠れているので、サキイカを糸でたらして釣ったりします。でもここにも水量が年々減ってきているので生き物は暮らしにくくなっている様で残念です。

 

(14) ゴール

今、私の家の近くでは圏央道の工事が進められていて家と高尾山にもトンネルで五分で移動できる様になりました。便利になるのは嬉しいことですがその影で排気ガスによる汚染や、山を切り開くことで、住み家を追われたり食物を失ったりすると思います。なので私は、自然の中で生きる生態系をなるべくおびやかすことなく、自然を大切に、このまま高尾に住んでいきたいと思います。

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