津波からの復興 北泉海浜公園自然観察路
平澤志桜里
福島県
福島大学附属中学校
中学校1年生
全体説明
私が自然観察路に選んだのは、北泉海浜公園です。ここは、東日本大震災で津波の被害を受けた福島県の南相馬市にあります。南相馬市には祖母の家があり、遊びに行ったときに、「震災後には見られなかったハマヒルガオなどの植物が海岸にもどってきた」という新聞記事があったと教えてくれました。そこで、震災から13年たった今、津波被害にあった海岸にはどのような植物や生き物がいるのか自然観察をしたいと思いました。
夏休みの初めに海岸や公園の下見をし、大体のルートを決めました。その時に、砂浜に流れている川にメダカがいたり、砂浜にたくさんの穴があったりと気になることがいっぱいでした。一週間後に時間を測りながらルートを観察しましたが、二時間ではじっくりと観察することができず、お盆の頃にもさらに二回行きました。何回も足を運んだり、本やインターネットで調べたりして謎や疑問点を解決していくことはとても楽しい時間でした。
観察ポイントごとの説明
<1メダカと謎の稚魚>
砂浜に用水路から砂浜につながる川があり、下見の時にメダカが泳いでいるのを見つけました。砂浜にある川にいるはずがないと親に言われましたが、自分はメダカだと信じ、二回目の時に採取し持ち帰って観察しました。その時に川の水を舐めて海水ではないことは確認しました。採取した五匹のうち四匹はヒレなどの特徴からメダカと判明しました。ですが残りの一匹は大きさが同じですが背ビレの位置や尾ビレの形が違いました。ネットで検索して「オイカワ」「カワムツ」などの川魚の稚魚ではないかと思いました。もう少し大きくなれば違いがはっきりすると思い、メダカの飼育に慣れている祖母に育ててもらうことにしました。お盆に行った時には、大きさはあまり変わっていませんでしたが、形の違いは、はっきりと分かりました。これからも祖母の家に通って観察を続けたいと思います。
<2水辺で飛び交うトンボたち>
メダカの採取に夢中になっていると、目の前を邪魔するかのようにトンボが飛んできました。確認できたのは「シオカラトンボ」「オニヤンマ」「イトトンボ」でした。小学生の頃に学校の池で観察をしていたので図鑑を観なくてもすぐに分かりました。動きが遅く、簡単に捕まえることができました。
<3砂浜の謎の穴(スナガニ)>
下見の時、砂浜に直径五cmぐらいの穴がたくさんあるのを見つけました。検索してスナガニの穴だということがわかりました。二回目の時にカニの姿を見ることはできましたが、すぐに穴に逃げてしまいました。お盆の時に従兄弟たちと穴を掘り、スナガニを捕獲し観察しました。大きさは七cmぐらいで、色はくすんだ緑色、目が飛び出していてとてもかわいい姿をしていました。
<4砂浜の植物たち>
黄色いタンポポのような「ハマニガナ」。紫の花が付いている「ハマナデシコ」。コンクリートの隙間から伸びていた「スナビキソウ」は丸い実と葉の形から分かりました。祖母から話を聞いていた「ハマヒルガオ」の花はありませんでしたが、ネットで調べた葉と同じ形の植物が砂浜にたくさんありました。津波で流された浜に植物たちがたくさん生育していて、生命力を感じました。
<5近づくことができなかったオニユリ>
海からメモリアルパークへ向かう途中の竹やぶの中に背の高いオレンジ色の花が見えました。柵があって近づくことができなかったので写真に撮りました。祖母に聞くと「ハマカンゾウ」と言われましたが、葉の形が違うと思い詳しく調べたところ、めくれた花びらの形や垂れ下がったおしべやめしべなどから、「オニユリ」だと判明しました。
<6とてもかわいいハクセキレイ>
メモリアルパークの中央付近で一羽の鳥をみかけました。姉が静かに近づくと、2~3mまで寄ることができました。写真を撮って、後から確認すると頭が黒くて目の横に黒い模様があるかわいい鳥でした。調べると主に水辺に住む鳥で、人間に対する警戒心が低い鳥だと分かりました。見つけたのはオスで、メスは背中が灰色。メスもきっとかわいいと思うので見てみたいです。
<7迫力のあるヤマユリ>
公園の周辺や歩道の脇の斜面に背の高い白い大きな花をつけたヤマユリがありました。花びらは一枚一枚が大きく反り返り、表面には赤い点々がたくさんありました。一つの株に2~5個の花をつけていてともて迫力がありました。近づく強い香りがありました。気温が高く暑かったので、余計にむせかえるようでした。調べると山地に咲く日本特産のユリだと分かりました。
<8公園内を飛び交う蝶たち>
海浜公園の中にはたくさんのチョウが飛び交っていました。確認できたのは三種類で、丘の広場の通路の近くで黄色と黒の模様が特徴の「アゲハチョウ」。次にわんぱく広場前の通路でクリーム色の小さな「モンシロチョウ」を見つけました。最後に確認できたのはわんぱく広場のわきの林の所で「クロアゲハ」でした。蝶も小学校の頃に観察をしていたので、すぐに分かりました。
<9通路脇の植物たち>
公園内にはたくさんの木々や草花、きのこが生育していました。気になったのは、白くて小さな花が茎の先にたくさん付いて先端が垂れ下がっている「オカトラノオ」です。他の花とは違う形が気になりました。もう一つは、紫色の花が咲いた「ママコナ」です。調べると半寄生植物とありました。寄生植物というものを初めて知り、どのように寄生しているのか興味が湧きました。
<10きぼうの桜>
わんぱく広場に一本の桜の木がありました。東日本大震災の伝承事業で植えられた「宇宙桜」でした。樹齢千年を超える桜の子孫の種で、2019年に宇宙ひょうたん桜を植樹したと調べて分かりました。当時の写真と比べて、確実に大きくなって、緑が茂っているのが分かりました。来年の春には桜の花を見に行きたいです。
<11斜面に群生するユリ>
わんぱく広場から公園の外に出ると、道路沿いの斜面にユリが群生していました。検索すると「テッポウユリ」と「タカサゴユリ」がヒットしました。詳しく調べると、花びらの先が反っていって、外側に紫色の線があること。開花の時期から「タカサゴユリ」と判断しました。大正時代に観賞用として日本に入ってきて、野生化しました。外来種の繁殖力はすごいと思いました。