赤城山の観察路ー地蔵岳・覚満淵ー
木暮悠輝
群馬県
群馬県立中央中等教育学校
中学校3年生
全体説明
今回僕が観察した赤城山には、主峰の黒檜山(一八二八メートル)をはじめ駒ヶ岳や鈴ヶ岳などの山があり、それらを総称して赤城山といいます。日本百名山や関東百名山、上毛三山に数えられる名峰です。上毛かるたに「裾野は長し赤城山」と詠まれているように、その長い裾野は赤城山の象徴ともいえるでしょう。それは日本では富士山に次いで二番目の長さとも言われています。そんな赤城山の中で今回僕が観察したのは、覚満淵と地蔵岳です。覚満淵は標高一三六〇メートルに位置する、周囲約八〇〇メートルの小さな湿原です。「小さな尾瀬」とも呼ばれ、たくさんの人に親しまれています。地蔵岳は標高一六七四メートルの山で、複数の登山ルートがあります。僕が登ったのは八丁峠からの登山ルートです。これらのハイキングコースの一七ヵ所の観察ポイントをそれぞれ紹介します。
観察ポイントごとの説明
(覚満淵)
観察ポイント1) コバギボウシ
紫色の小さくてかわいらしいこの花の名前はコバギボウシ。コバギボウシは、ギボウシの仲間です。ギボウシは、その形が擬宝珠に似ていることからその名前がつけられました。擬宝珠とは、伝統的な建築物の装飾として橋や階段、手すりなどの柱の上に設けられたものです。
観察ポイント2) チダケサシ
チダケサシは小さな花がいくつも咲いています。この花は茎がとても長いのが特徴です。この長い茎に、乳茸と呼ばれるキノコを刺して持ち帰ったので、チダケサシの名前がついたと言われています。
観察ポイント3) ノハナショウブ
ノハナショウブは野生の種であり、ハナショウブの原種です。ハナショウブは漢字で書くと「花菖蒲」になります。ハナショウブの葉が、端午の節句の日の菖蒲湯に使われる菖蒲に似ていたことから、この名前がつけられたそうです。
観察ポイント4) コオニユリ
コオニユリは明るいオレンジ色がとても目立ちます。そもそもオニユリは、その色や形、大きさが赤鬼に似ていることからその名前がつけられました。そんなオニユリよりも少し小さいコオニユリですが、大きさ以外にも見分けるポイントがあります。それは「むかご」があるかないか。オニユリはむかごが葉の根元の上に一つずつでき、コオニユリにはできません。
観察ポイント5) ノハラアザミ
名前が似ているノアザミという花がありますが、その違いは総苞を触ると分かります。触ったとき、粘りがあればノアザミ、なければノハラアザミです。
観察ポイント6) ヒメアカタテハ
オレンジ色がとてもきれいなこのチョウですが、脚は四本しかみられません。一般的に、昆虫の脚は六本と決まっています。不思議に思い、後で調べてみました。すると、タテハチョウの仲間は二本の前脚が味を感じたりするための感覚器官として発達し、歩いたり止まったりするときには残りの四本しか使われていないということがわかりました。
観察ポイント7) ツクバグミ
ツクバグミはマメグミの変種で、グミ科グミ属の木です。ニッコウナツグミとも呼ばれているそうです。僕が観察したときには実がとても赤く熟していました。高さはそれほど高くなく、二~三メートルほどでした。
観察ポイント8) トモエソウ
鮮やかな黄色がとてもよく目立つトモエソウ。トモエソウは漢字で書くと「巴草」です。花が咲いたとき、その形が「巴」型にねじれるためこの名前がつけられたといいます。
観察ポイント9) タケカレハ(幼虫)
全体的に黄褐色で、茶褐色の斑紋列があるのが特徴的でした。調べてみると、幼虫の時期や繭にも毒針毛を持っていて危険だということでした。成虫のタケカレハはチョウ目カレハガ科のガです。
(地蔵岳)
観察ポイント1) ムラサキホタルブクロ
山を登り始めてすぐ、僕らを出迎えてくれたのは淡い紫色のムラサキホタルブクロでした。この仲間には他にも、ホタルブクロという種もあります。ホタルブクロは大抵、漢字では「蛍袋」と書かれます。そのため、「子供がホタルを捕まえてこの花の中に入れて遊ぶため」というのがこの名前がつけられた理由として有力です。しかし、大きな花が茎の頂部に垂れ下がる様子が「火垂る袋=提灯」を連想させることから、という説もあります。
観察ポイント2) シモツケ
木道が終わり、道が山らしくなってきたところで、桃色の小さな花がたくさんついている花を見つけました。この花はシモツケです。僕の住む群馬県は、昔「上野の国」と呼ばれていました。そして、隣の栃木県は「下野の国」でした。この下野の国で初めて自生している物が発見されたことが、この名前の由来だそうです。
観察ポイント3) ホソミシオカラトンボ
地蔵岳では、ホソミシオカラトンボがこの観察ポイントだけでなく、色々な場所で見ることができました。しかし、このトンボもまた、脚が四本しかみられませんでした。実はこれも前足二本を折りたたんで止まっていることが理由だそうです。しかし、なぜ折りたたんで止まっているのかはわかりませんでした。
観察ポイント4) ハクサンフウロ
ハクサンフウロは漢字で書くと「白山風露」です。「白山」は石川県と岐阜県にまたがる自生地の地名からきています。「風露」は夏の朝に朝露が降り、花について風にゆれるさまをたとえたものだそうです。
観察ポイント5) ニッコウアザミ
このニッコウアザミは覚満淵で観察したノハラアザミの変種で、栃木県の日光市に自生が見られることからこの名前がつけられました。これも、ノアザミと違い総苞に触ったときに粘らないのが特徴です。一口にアザミといっても色々な種類があることに驚きました。
観察ポイント6) シロニガナ
ニガナの花びらが白いものをシロニガナと呼んでいます。ニガナは漢字では「苦菜」と書き、葉や茎を傷つけると苦味のある乳液が出ることからこの名前がつけられたそうです。名前がよく似ているシロバナニガナと言う花もありますが、この花はシロニガナより舌状花の数が多いです。
観察ポイント7) セイヨウミツバチ
セイヨウミツバチは、漢字で書くと「西洋蜜蜂」。もともとヨーロッパに生息していたミツバチを、養蜂用に輸入したものだそうです。ちなみに二ホンミツバチと見分けるときのポイントになるのは、”体の色”。セイヨウミツバチはオレンジ色っぽく、二ホンミツバチは黒色っぽいのが特徴だそうです。
観察ポイント8) タカ
山頂で空を見上げるとき、黒いシルエットの鳥が悠々と飛んでいました。タカとワシ、皆さんは見分けられますか。実はタカもワシも、同じタカ目タカ科で同じ鳥の仲間ですが、大きい方をワシ、小さい方をタカと区別しているそうです。しかし、もちろん例外はあります。他の違いとしては、ワシは羽ばたくように飛び、タカは羽ばたかず風に乗るようにして飛ぶことだそうです。これが下から見ていてもわかりやすい違いですね。ちなみに、あの徳川家康も戦闘訓練と健康維持のために鷹狩りをして楽しんでいたそうです。昔からタカやワシは人の心をつかんでいたようですね。しかしタカやワシは、開発による適切な生息環境の減少や、環境汚染物質の蓄積による繁殖成功率の低下などにより、その数が減少しているのではないかと言われています。いつまでも美しい自然を守っていくために、日々自然の恵みに感謝し、環境について考えていこうと思います。