古城の田んぼで天然記念物を探す観察路
山下 詩織
宮崎県
宮崎西高等学校附属中学校
中学校2年生
全体説明
今年の二月の新聞のある記事に興味を引かれました。私が住む地域の隣りにある古城で、減少が続いているオオイタサンショウウオの産卵、放流地となるビオトープがつくられたそうです。すぐ近くに大分の天然記念物がいることを初めて知り、オオイタサンショウウオやその周辺の環境を見てみたいと思い、この地域の動植物を調べてみることにしました。この場所には、普段は見ることのできない、もしくは普段見ていても気付かない動植物がかなりいました。残念ながらオオサンショウウオは夜行性で、しかも今の時期には陸に住んでいるので、見つけることはできませんでした。しかし、人間の農業と自然の共存の中では、街の花段とは異なった強い美しさがありました。この自然を見守り、後世へ当たり前にあるものとして残す、これが私達がするべきことだと思いました。
観察ポイントごとの説明
①この辺りは、一面に田んぼが広がっていました。この観察路を歩いて、一番最初に目に入ったものは、古城小の生徒たちが育てている稲の田の中にいたシラサギです。まだ青いもみのついた稲穂や、そっと近づいてみると、突然白い翼を広げ、数メートル南の方にある田んぼへと飛ぶ移っていきました。
②ちょうあぜ道の上にある空を、立派なヤンマがものすごい速さで飛びぬけたのが見えました。そのあぜ道の反対側にあるシラカシの木のすぐ下で、ハゲロトンボが羽やすめをしているかのように静かに止まっていました。同じトンボでも、ヤンマのような力強さはなく、黒い羽を二、三回動かしながら、その場所に三分程とどまっていました。
③山の斜面やそのふもとには、手入れのされていない背の低いスギと、かきの木畑があります。近づいてみると、広いお風呂場に洗面器を落としたような音が、「カーン、カーン」と、規則的なリズムで響いていました。この音は、「ししおとし」という、山からイノシシやサルが来て畑を荒らすことを防ぐもので、人気のない畑などで大切なものだと、後から祖母に教えてもらいました。
④道ばたにはセンニンソウのつるが大きく広がって、数えきれないほどの白い小さな花が咲いていました。花からは甘くてさわやかな香りがして、横を通りすぎるだけでも強く臭います。それにつられたのか、ハチなどいろいろな種類の虫が、急がしそうに花の中で動き回っています。他にもヤブミョウガなどいくつか他の花が咲いていたけれど、この花が一番多くの虫を引きよせていました。
⑤竹やつる植物、ナンテンなどの木々がおいしげっていました。その近くを、ホタルに似たような姿のクロウリハムシがふらふらと飛んでいました。体長が一センチメートルほどの小さな体でしたが、鮮やかな山吹色の頭と黒い体が、ナンテンの葉の上でよく目立ちました。その上では、熟していないカラスウリが、アメリカ人なら手の届きそうな位置にありました。もうすぐ、きれいな赤色に染まるでしょう。とても楽しみです。
⑥ここのコンクリート道路は、他の道と比べて広くなっています。小さなスギや竹林の中に「保安林」とかかれた黄色い看板がこじんまりと、奥のほうに立てかけられていました。根元には、年代ものの石がきがあり、土砂が流れることを防いでいます。③の辺りにある林業用のスギに次いで太い幹の間には、アゲハやトンボがよく見かけられました。保安林は川や海だけでなく、虫の住み処としても大切なものではないでしょうか。
⑦かきの木の並木道は、この観察路の中でもとても涼しい木陰で山の斜面にはさまれています。コンクリートの上には、色鮮やかなハンミョウが五、六匹ほど、私の動かす足から逃げるように、三センチメートルの体で数メートル先へと飛び跳ねていきます。やがて五メートルほど進むと、近場の草むらに飛びこんで、道をあけてくれます。ずっと、これの繰り返しでした。
⑧左右にある土地は、背の高い草がしげっている湿地のような、耕作放棄田でした。この田の中にある水たまりには、黒いタニシのようなものがいて、じっとしていました。しばらくすると二匹のシオカラトンボが追ったり追いかけられたりとくるくる飛んでいて、オスとメスの交際、もしくはオス同士の争いにも見えました。
⑨この辺りにくると、桃色の小さな花の集まりやセンニンソウなど、深い緑に鮮やかな色が多く混ざってきました。そんな中でも、ムサシノアブミは目立つほど大きな葉を持っていて、存在感がありました。三枚しかない大きな葉を押しのけると、「仏炎苞」といわれる、ぶどうの房を逆さにしたような黄緑色の実がありました。フキの茎のようなものから生えていて、他の草も少し距離をおいているみたいでした。
⑩山の奥までくると、一風変わった小さな水辺がありました。昼間だったのでオオイタサンショウウオはいませんでしたが、薄い紫色のアキノタムラソウやオオシオカラトンボなど、先ほどまでとは違った鮮やかさがありました。また、古くなった選挙ボードを道の上にしき、人が置いたような枯れ木の根があり、その上に何回もトンボが止まりました。これらと草木がうまく調和されていて、この地の原点という感じがしました。