応募期間

今年の募集は終了しました。ご応募ありがとうございました。

受賞作品一覧
佳作
第27回 高校生の部

図書館への道~回り道編~

大澤健太

兵庫県
兵庫県立大学附属高等学校
高校1年生

全体説明

 僕は中学は電車通学だったので、家の周りに通学路や散歩道はありません。散歩道に一番近いといえば、図書館に通っていた道です。今回は久しぶりに図書館まで通った道を往復してみました。

 十箇所ぐらいの自然を見つけるのはたやすいことと思っていたのでしたが、実際に観察しながら歩いていると図書館への往復に十箇所の自然は見つかりませんでした。改めて僕の家の周りには自然がないということに気づかされました。

 そういえば、僕の家には蚊取り線香がありません。小さい頃から窓を開けっぱなしにしていても蚊に刺されたことが有りません。また、お菓子の食べかすをこぼしたままにしておいても蟻にたかられたことも有りません。

 そこで、いつもより遠回りをして、自然が少し残っている蓬川公園まで足を伸ばしてみました。

 

 尼崎の自然は、本来の自然、つまり、人間の手が入っていない自然とは少し違うような気がします。誰かが飼っている訳でもないのだけれどみんなのペットのように人間を頼りながら生きているという感じです。それゆえ、人間を恐れないし、懐いてきます。唯一、孤高の動物はカラスで、人間と距離を置きたがります。カラスは長い間人間の近くにいるのに何を恐れているのだろうか。その持つ色の不気味さに人間が嫌っているのを感じ取っているのだろうか。自然と人間の調和を考えさせられる散歩であった。

観察ポイントごとの説明

(1)路地

 竹谷小学校からスタートです。小学校から駅に向かう路地に数匹の野良猫がいます。人間にとても馴れていて、目が合うと逃げるどころか「ニャー」と鳴きながら寄ってきます。色んな人が気まぐれで餌をやっています。

 

(2)立ち食いソバ屋前

 駅前の直前にある立ち食いソバ屋の前にスズメがいます。立ち食いソバ屋のおばさんが、食べ残しのソバを数本スズメにあげるので、突きに来ています。これも近くを通っても逃げません。

 

(3)駅前広場

 駅前の広場に大きな木が数本生えています。その木に無数のクマゼミが付いていて気が狂ったように鳴いています。ここを通るとこっちの気が狂いそうです。

 

(4)広場の木

 駅前の広場には鳩が数十羽歩いています。人工水溜りでも数羽が水浴びをしています。誰かが毎朝パンの耳を撒いているので、ここがお気に入りのようです。馴れている鳩の中を通っても飛び立ちません。この辺の動物は人間慣れしすぎです。

 駅前から寺町を通って図書館へ向かいます。

 

(5)図書館の前の川

 割りと簡単に四つの自然を見つけたので幸先良いと思っていたのに、図書館の近くまで何も新たな自然に会いませんでした。図書館脇の川を見ると一mぐらいの色とりどりの錦鯉が泳いでいます。誰かが放流したのでしょうか。色が付いていると綺麗ですが、人工的で自然の生物の気がしません。

 

(6)尼崎駅前

 図書館を出て尼崎の駅前にはカラスがいました。ごみを突いているのでしょう。近寄ると逃げますが、すごく大きいことが分かります。

 

(7)蓬川の中

 蓬川まで行って川を見ると一mぐらいの大きさのボラが泳いでいます。この川は僕が生まれる前は真っ黒で臭い川だったと母は言いますが、今は魚が泳ぐ川です。いつも大きなボラが群れをなして泳いでいます。但し、コンクリートで護岸された川なので、岸辺もなく、川の両岸には自然がありません。

 

(8)蓬川の脇

 蓬川には海カモメもいます。時々川面にプカプカと浮かんでいますが、大体は川の脇の手すりに掴まっています。パンの切れ端を細かくちぎって空中に投げると、パンが着水する前に捕獲して食べます。投げる量が多いと川に落ちますが、それは素早くボラが食べます。

 

(9)蓬川公園の中

 蓬川を渡ったところに蓬川公園があり、そこで少年野球をやっています。夏みかんの木の所に黄アゲハが飛んでいます。何年か前に弟が黄アゲハの青虫を枝ごと取ってきて育てたことお思い出しました。その枝には卵も付いていたようで、次から次へと青虫が増えて、全部で十匹ぐらいになって、羽化した蝶を空に返しました。

 

(10)蓬川公園の地面

 蓬川公園のコンクリートの地面に花壇から這い出したであろうミミズがいて、暑さにやられて死んだようで、蟻にたかられていました。ミミズはなぜ新天地を求めようと思ったのか。新天地を目指したミミズは皆途中で息絶えるのか、新天地に到着するミミズもいるのか。平々凡々とした日常に満足できないのは人間だけじゃないんだなということを考えさせられました。

一覧へ戻る