自然がいっぱい、わたしの里山探検コース
岡村夏美
東京都
共立女子第二高等学校
高校1年生
全体説明
ここは東京都八王子市の東端。徐々に開発が進み広がっていく住宅地に接して、こんもりと緑に覆われた雑木林があります。地元で裏山といわれている「里山」です。
小学校の課外授業でその入り口あたりを少し歩いた記憶はありますが、家からは大きな幹線道路(野猿街道)を挟んだ向こう側だったこともあり、それ以来足を踏み入れたことはありませんでした。
そんな「里山」にもう一度行ってみたいと思ったきっかけは、現在通学で利用している多摩モノレールから見える景色でした。モノレールは地上20㍍うらいの高所を通るので、住み慣れた街も少し俯瞰めで見ることができます。あの緑の塊にまた入ってみたい…。
そこは自然の宝庫でした。街で見かけなくなった昆虫、植物、鳥や小動物は里山にいたのです。それに、マイナスイオンの効果なのか、とにかく気持ちがよいのです。
車窓から見えた緑の塊の中は、まさに小さな動植物たちの楽園でした。
観察ポイントごとの説明
(1)
ここは里山の端っこにあたる場所です。里山は外側から見るのと中に入ってみるのとではイメージが大きく違います。小学生のとき理科で習ったとおり、雑木林の外側に近い木は枝に葉がたくさんの葉が付きますが、中心部に近い木には空に近い頂部を除き、枝には葉があまり付いていません。でもそのおかげで、頂部の葉の隙間から入ってきた柔らかい光が枝葉にさえぎられずに地面まで到達して、地表の植物が育つのです。
(2)
雑木林の奥に入るといろいろな鳥の鳴き声が聞こえてきます。目を凝らしてよく観察すると、モズ、ウグイス、ヒヨドリ、オナガ、ホオジロ、ムクドリ、コジュケイ、キジバト、スズメ、シジュウカラなどを見ることができます。そしてカラスもいます。これだけ多くの鳥がいるということはエサとなる虫がここにはたくさんいるのです。鳥たちの楽園であるこの場所を、あらためて守ってあげなければと思いました。
(3)
ここはちょっとグロテスクな場所です。木と木の間が、どういうわけかクモの巣だらけなのです。ひとつだけなら平気でも、向こう側が見えにくいくらいクモの巣があるとさすがに気持ち悪いです。ここのクモは黒と黄色の色が特徴のいわゆる「ジョロウグモ」で、大きさは大きいもので10㌢くらいあります。クモの巣には、チョウやトンボだけでなくセミやカミキリムシなどの大物もかかっていて、その糸の丈夫さに驚かされます。
(4)
夏の夜や早朝、あるいは昼間でも、樹液が出ている特定のコナラの木をチェックしていると、カブトムシやクワガタムシを捕まえることができます。捕っても捕っても、また次の日には同じ木の同じ場所にいます。ただ、まれに体長が4㌢ぐらいあるスズメバチや10㌢以上ある大きなムカデなど危険な生き物が一緒にいることがあります。そんなときは手を出さず刺激しないようそっと離れるのが一番です。
(5)
このあたりの地面にはアオダイショウが通った直径1~3㌢くらいの穴がたくさんあいています。穴の数の割には蛇そのものはほとんど見かけないのですが、地面にはあちこちに脱皮した皮があります。何気なく近くにあった石を動かしてみたら、30㌢くらいの小さなアオダイショウがとぐろを巻いていてびっくりしました。でも、その蛇にしてみたらきっと私よりもっとびっくりしたことでしょう。
(6)
葉の大きなマメ科の植物に覆われた石垣の急な斜面では、大小たくさんのニホントカゲが日向に出たり葉の陰に隠れたりを繰り返しています。そうやって体温を調節しているのです。ニホントカゲには歯がありません。「しれつ」といわれる固い歯茎のようなものがありますが、噛まれても大事には至りません。また、ときどき尻尾の短いものがいます。鳥に食べられそうになって自分から尻尾を切り離した個体かも知れません。
(7)
この森の中腹には、人がやっと通れる程度の小さな朱塗りの鳥居が数カ所あります。その奥にはそれぞれ小さなお堂が祭られているのですが、誰かが管理しているようで、手入れが行き届いています。ひとつのお堂には野鳥が巣を作っていて、まだ毛が生えていない3羽の小さな雛が自分の頭よりの大きく口を開けてぴいぴい鳴いていました。しばらく見ていましたが、親鳥が心配するといけないのでそっとその場を去りました。
(8)
この辺りにはヒイラギモクセイが群生しています。それも葉の長さが10㌢以上ある大きなものです。学校で所属している野外研究部では、文化祭のときにヒイラギなどの肉厚の葉を使って「葉脈標本」を作るワークショップを開きます。水酸化ナトリウムで葉を溶かし、葉脈だけになったものを新聞紙で水分を吸い取って絵の具で色を付け、パウチッコして本のしおりなどにするのですが、一般来校者に好評で、毎年恒例となっています。
(9)
たくさんのアブラゼミが羽化をおこなう場所です。数え切れないほどの脱殻が鈴なりに木の枝についています。夏の夕方7:00頃になると、木の根元から這い出してきた幼虫がいっせいに木に登り始めます。そしてお気に入りの場所が決まるとじっと動かなくなります。次第に背中が割れ羽化が始まります。こげ茶色の羽根を持つアブラゼミも、羽根がピンと伸びて硬くなるまでの間は青白くてとても神秘的な色をしています。
(10)
竹が密生していて、入るとなんだかとても厳粛な感じがする場所です。が、この場所では油断するとすぐに蚊に刺されてしまいます。この辺りにいる蚊はヒトスジシマカといって黒い体に白いしま模様が入っている種類です。蚊を捕まえるには、刺されたら、そこにグッと力を入れて筋肉を固くすると、蚊は口が抜けなくなるのでやすやすと捕まえることができます。ただし、しっかりと血は吸われてしまいますが…。