応募期間

今年の募集は終了しました。ご応募ありがとうございました。

受賞作品一覧
佳作
第26回 高校生の部

食のめぐみMAP

田村和己

青森県
青森県立名久井農業高等学校
高校3年生

全体説明

私の地図は美味しい観察路です。青森県南部町は名久井岳の裾野にひらけた山里です。春から夏にかけてヤマセという低温多湿の風が吹くことから、昔は米が栽培できない地域でした。したがって山菜は貴重な食材で、郷土料理には欠かせません。学校を1周する山道を散策すると、こんなにもたくさんの食べられる植物を発見できます。美味しいものがたくさんある現代ではなかなか食卓にあがりませんが、それでも行事食として今も山菜は食べられています。今回の地図作りで、古里の食文化はヤマセという気候と恵まれた自然が育んだものであることにあらためて気づくことができました。みなさんもぜひ先人になった気分で観察路を散策してはいかがですか。その際は、手かごを持参することをおすすめします!

観察ポイントごとの説明

食べられる植物

コンフリー(ムラサキ科)……毒があります!

畑や明るい道端で数多く見つけることができました。近年、食べられない植物に分類されましたが、あえて注意してもらいたくて載せました。というのは、以前はおひたしにしてこの地域でも食べる人がいましたが、今は毒性が発見されたからです。猛毒ではないので神経質になる必要はありませんが、気をつけましょう。

ヨモギ(キク科)

道端に普通に生えていました。畑では雑草として嫌われますが、道端のヨモギはじゃまされないのでびっくりするぐらい大きく伸びます。冷蔵庫のない昭和初期、初春に撮れるヨモギは貴重な食材だったそうです。今も春と秋の彼岸には、生や乾燥させたヨモギの葉を使って近所のおばあさんたちが「よもぎ餅」を作っています。

ツクシ(トクサ科)

ツクシが群生していました。ツクシの葉であるスギナは酸性土壌を好むので、この周辺の土壌が酸性に偏っていることがわかります。若いツクシはおひたし、佃煮などいろいろな食べ方がありますが、味はほろ苦いです。

ウツボグサ(シソ科)

明るい山道に群生していました。郷土料理として食べる習慣はありませんが、新芽を天ぷらやおひたしにして食べることができます。あまり食卓にあがらないのは、食材としてよりも喘息などの薬となる「夏枯草」(かごそう)として有名だからのようです。

ウワミズザクラ(バラ科)

明るく開けた場所に自生していました。ちょうど満開で白い小さな花がたくさん咲いていました。しかし、まったくサクラとは違う花で不思議に感じました。若葉を天ぷら、つぼみは塩漬けで食べますが、ちょっと時期が悪く食べることはできませんでした。

マタタビ(マタタビ科)

葉の裏が白いので、すぐわかるそれほど高くない樹木です。猫が大好きな匂いを出すので有名です。開花前なのでまだどんぐり型の実を見ることはできませんでしたが、よく焼酎につけたマタタビ酒は農産物直売所で販売されています。将来ぜひ作ってみたいものです。

フジ(マメ科)

山道から高台の校舎を見上げたら発見しました。フジは別の木に絡んでいるように生えている大木で、紫色の花が咲いているとすぐにわかります。日本料理では、きれいな花を天ぷらやおひたしで食べるそうですが、郷土料理にふじを使ったものはありませんでした。

オニグルミ(クルミ科)

日本原産で10mぐらいの大木で、山道に自生していました。今はお店でクルミ餅が売られているのでいつでも食べられますが、例外が多く米がとれなかった昔、餅は正月などの行事食でした。したがってクルミもめったに食べられない栄養満点の貴重な食材だったそうです。今もお正月のお雑煮に、すっただけのクルミを入れて食べる習慣を残している家庭もあります。

ゼンマイ(ゼンマイ科)

春、山道の斜面で発見しました。クルクルと先が丸まった若芽に茶色い綿毛がついているのが特徴です。しかし、よく気をつけないとなかなか発見できません。昔から郷土料理の煮物にはワラビとともに欠かせない食材です。山菜採りに行くことがないので、スーパーマーケット以外で初めてゼンマイを見ることができました。

ギシギシ(タデ科)

明るい道端に生えていました。大きな葉が特徴のため、方言では「牛の舌」(べこのした)といいます。畑の雑草としてあまり好まれませんが、若葉は酢の物などで食べることができます。また便秘などの薬になることでも有名です。

ハルジオン(キク科)

明るい道端でたくさん見つけました。春菊のように天ぷらやおひたしで食べることができます。この地図の植物を確かめるために牧野植物図鑑を参考にしましたが、この図鑑を作られた牧野富太郎先生が名づけた親だったので驚きました。ヒメジョオンと似ています。

フキ(キク科)

山道の斜面で発見しました。この町のフキは、秋田フキのように丈が高くなりませんが、葉が大きいのですぐ見つけられます。茎は郷土料理「煮しめ」の食材となり、お盆やお正月には必ず食べます。春は若い花茎である「ふきのとう」を天ぷらやおひたしで食べますが苦くてあまり好きではありません。「初春の食べ物は苦いものだ」と年配の人はよくいいます。

オオバコ(オオバコ科)

明るい道路脇に生えていました。草丈が低いので雑草として抜き取られることもなく、どこの道でも見ることができます。郷土料理の食材にはありませんが、天ぷらやおひたしで食べることができます。ただし若菜でなければ葉が硬くて食べられません。しかし最近は、薬局でオオバコの種子を覆っているゼリー成分を粉にしたダイエット食品が販売されているからびっくりです。

アカザ(アカザ科)

明るい荒地に生えていました。郷土料理の食材ではありませんが、天ぷらやおひたしなどいろいろな料理で食べることができます。ホウレンソウもアカザ科の植物であることを考えると納得します。高校で野菜栽培の勉強をしていますが、ホウレンソウもこのように荒地に自生していたのかと想像すると面白いです。

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