応募期間

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受賞作品一覧
最優秀賞
第26回 高校生の部

なつかしの通学路

三木有紗

兵庫県
賢明女子学院高等学校
高校1年生

全体説明

わが増位校区は、姫路の副都心と呼ばれ、近代的な高層住宅が建ち並び、量販店等、商店街の商業ゾーンとして、栄えてきた。しかし、少し北に足を伸ばすと、広峰山、増位山を背に、伝統的な田園風景が臨める。

 増位川の川ぞいを上って行くと、とんぼやちょう、ざりがになど、小さな生き物に出会った。小学生たちが、自分の背たけよりも長い虫とりあみを持ち、忍び足で虫に近寄っている光景を見て、私も思わず、息を殺した。広峰山のふもとには、私が通っていた小学校があり、在学中に、校庭でタヌキが死んでいるのを見たことがある。また、増位山ハイキングコースでは、祖父母がハイキング中に、イノシシと目が合い、急いで逃げたというエピソードを聞いた。

 開発された新しい街と思われがちだが、山と川にはぐくまれた自然豊かな歴史的な町である「増位校区」をご紹介しよう。

観察ポイントごとの説明

(1)

 出発するやいなや、イチョウの街路樹。病害虫に強く、高さ三十メートルほどある大高木に成長し、炎天下の道に木影を作ってくれている。しかし、巨樹となっているもののほとんどは雄株で、銀杏に養分を消費されてしまう雌株は、なかなか巨樹にはなりにくい。葉は扇形で葉脈が付け根から先端まで伸びている。葉の形から広葉樹と考えられがちだが分類上は針葉樹である。秋には、果実は落下し、果肉には糞臭に似た悪臭がある。

 

(2)

 姫路市の市鳥であるシラサギが、よく増位川にやって来る。水中の足をブルブル震わせ、長くて黒いくちばしを水中に入れ、魚かざりがにかを捜しているようだ。頭の三本の冠羽が愛らしさを増している。私たちは、この鳥を「シラサギ」と呼んでいたが、「シラサギ」とは白いサギ類の総称で、ダイサギ、チュウサギ、コサギを指すそうだ。増位川に来ているのは、大きさ(六十センチ程)、冠羽から、コサギであることが分かった。

 

(3)

 生活排水が流れ込む増位川と蔵谷川の合流点に、アメリカザリガニがいた。体長十センチ、体色は褐色。汚れた水の中でも平気なようで、水の中の残飯を食べていた。アメリカザリガニは、その名の通り、アメリカから、ウシガエルのえさとして、船で連れて来られ、それが飼われているところから逃げ出し、川や池に広がったという劇的なストーリーをもっている。トレードマークでもある大きな爪と足で身体を手入れする様子が見られた。

 

(4)

 ヨーロッパ原産の帰化植物であるオオイヌノフグリ。群生するオオイヌノフグリが、一輪だけ、寂しげに生えていた。果実が、犬の陰部(フグリ)に似ているとの意味からこのような気の毒な名前がつけられたそうだが、小さなルリ色の花が咲く。この花のイメージからすれば、もっと可憐な名前が、似合ったのではないだろうか。花弁四枚、直径一センチほどの小さな花に、二本のおしべが目立っていた。花の寿命は一日。

 

(5)

 涼しげなシオカラトンボが、五、六匹川の上を飛んでいた。体長五センチくらい。体色は塩をふいたような水色。メスは、からだが麦わら色をしていてムギワラトンボと呼ばれているので、私が出会ったのは、すべてオスのようだ。不規則な動きをし、ほんの数十秒間の空中停止で、休んでいるように見えた。水中から出た木の枝に止まって、羽を休めているものもいた。飛んでいる時は、六本の足を格納していて、足は見えない。

 

(6)

 弁天池で、釣りを楽しんでいらっしゃる人に出会った。釣ったフナ(体長十センチ)をさわらせて、もらうと、ヌルッとした感触だった。フナは、冬の間は深い所でじっとしているが、水があたたかくなると岸べの方に出てくるので、この季節には、よく釣れるそうだ。釣り歴の長いこの方の話によると、フナに限らず、ここ弁天池で釣れる魚が、小型化しているそうだ。釣り人の乱獲や、水質、環境ホルモンが影響しているようだ。

 

(7)

 三センチ程の赤褐色のタニシがいた。大きさと色からみて、ヒメタニシだろう。殻に微毛の生えているものや緑の炎のような苔の生えているものもいる。ちゃんと先の尖っているものが少なく、先の欠けたタニシの方が多い。タニシの雄と雌は、触角で見分けるそうだ。両方ともピンと伸びているのが雌、右側の触角が曲がっているのが雄。最近は、この辺りのタニシも激減した。水田での農薬の使用や、用水路の改修工事が原因と思われる。

 

(8)

 人の出入の多いフラワーショップの軒下におわん型のツバメの巣がある。泥と枯葉で造っている。ツバメは、その巣を憶えていて、毎春、間違いなく、ここにやって来る。ツバメは、野生でありながら、人間を頼りにするという不思議な習性がある。一夫一妻で、五、六羽のひなを生んでいる。巣の中をきれいにする為に、親は、ひなのフンをくちばしでくわえ、巣の下に落としている。そのフンの山の中に、ハチやハエの残片を見つけた。

 

(9)

 休耕田を利用して作られたヒマワリ畑が、見頃を迎えている。高さ二メートル、花の直径三十センチ程のヒマワリが、所狭しと約二千本植えられている。ひまわり畑の間に、うねりのある道が作られており、まるでヒマワリで出来た迷路のようだ。その道を優しい風が吹きぬけている。ヒマワリの花は、太陽の方向を追って回ると言われているが、ここのヒマワリは、意外とバラバラで、自由奔放なヒマワリだ。

 

(10)

 水田をのぞいてみると、体長二~三センチの黒っぽいものが30匹以上泳いでいた。初めは、オタマジャクシかと思ったが、尾っぽが二本に分かれ、体はエビのような薄い甲殻で覆われており、カブトエビだと分かった。ラッコのようにお腹を上に向けて、四十対以上の足を休みなく、細かに動かしている。この足には「エラ」のような器官があり、足を動かすことによって、水中の酸素をとり入れているのだ。

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