生命の息吹感じる油谷湾観察MAP
竹本理起
山口県
精華学園高等学校
高校1年生
全体説明
油谷湾は、多種多様な生き物たちが今もなお自然の営みを続けています。まさに、生命の息吹を感じることのできる地です。ここには本州の日本海側では珍しい大規模な干潟があり、汽水域の生物の多様性が非常に高いです。今回の調査で、本州の日本海側では初確認と思われる生物も多く確認しました。
また、新しい生物の発見だけではなく、今まで見ていた生物の新たな生態や、油谷湾の抱えている多くの課題も知ることができました。特に地元の方々の環境保全への意識が低く、家にカニが入ってくるから持って帰ってほしいと言われたり、川に洗剤を流して洗濯をしたり、水路のカニを食用として乱獲したり等といった行動が見受けられました。私は、これからも油谷湾の生命の営みが続くように、地域の人々に、自然の素晴らしさと大切さを伝えていきたいです。
観察ポイントごとの説明
① この海につながる小さな水路は、コンクリート等で舗装されていない為、周辺に多くの陸棲カニが生息しています。アカテガニは陸寄り、クロベンケイガニは上流側、アシハラガニは下流側、フタバカクガニは石垣や土手、ハマガニとユビアカベンケイガニは体格の差がある為に揃って土手に棲むといった棲み分けがされているようです。陸棲のカニ類は、生物の死骸や枯れた植物を食べてくれる、生態系において欠かせない存在です。
② この水路の水中は、潮の干満の影響を大きく受けるため、淡水域であればコイ目魚類の住む中層に代わりとしてウキゴリとボラの幼魚が棲んでいます。コンクリートで舗装されていない自然のままの低層には、シモフリシマハゼ、ヒナハゼ、マハゼといったハゼ類やユビナガスジエビ、ヨシエビ、ケフサイソガニといった甲殻類が棲んでいます。頂点捕食者のヒラメの幼魚は、中層に浮かぶビリンゴにとびかかって狩りを行っていました。
③ この水路の下流となるここは、上流側から流れた泥が堆積しており小規模な干潟が形成されています。ヤマトオサガニ、ヒメヤマトオサガニ、フタバカクガニといった陸棲のカニ類の他、ボラ、ハゼ類、テナガエビ類、タカノケフサイソガニが生息しています。ミナミテナガエビは、泥に穴を掘って巣を作ることができるようです。ミナミテナガエビは、礫で形成されている河川の石の隙間によくいるのでこのような生態は初めて知りました。
④ この細い水路にはベンケイガニ、クロベンケイガニ、ハマガニ等のカニ類やミナミメダカやドジョウといった小型の魚類が生息しています。クロベンケイガニはよく喧嘩をするため、脚を負傷した個体が多いです。ハマガニは他のカニとは違い、巣穴の入り口に泥を積む習性があるため、水路の土手でもよく目立ちます。工事で川のヨシ原が崩された際には、大量のカニがこの水路に移住した為に一時期は水路が過密状態になっていました。
⑤ ここは潮の干満の影響を受けますがほぼ淡水のエリアです。橋の下には、ウキゴリやゴクラクハゼ等のハゼ類や、カワムツ、ギンブナ等の淡水魚に加え、クサフグ、クロダイ、シマイサキ等の汽水魚の幼魚も多く生息しています。橋の下は鳥類に襲われにくく、岸壁にはエビ類が多く生息しているので、魚たちの良い餌場になっています。テナガエビとミナミテナガエビも周辺に多数生息しており、隠れ家をめぐってよく喧嘩をしています。
⑥ 水路の土手にはヨシ原があり、カワザンショウガイ類やヒロクチカノコといった巻貝類やクロベンケイガニやアシハラガニといったカニ類も生息しています。しかし、この河川は大潮の日の満潮と雨が重なると水が道路に溢れ出すため、水の流れの妨げになるヨシ原は定期的に市によって取り除かれています。河川工事を行った際に生態系が大きく変わる可能性があるので、生態系保護と災害対策の両立を目指すべきだと思います。
⑦ 水門付近は淡水側でも汽水の影響が強く、底が礫になっています。この付近にはミミズハゼやタイワンイソモドキ等の塩分濃度の低い汽水域の転石の下を好む生物が生息しています。水門には6月下旬になるとテナガエビとミナミテナガエビの雌がたくさん集まり、卵を河口へ放ちます。ウグイはカワムツの勢力が強い為か水門の淡水側付近にしか生息していません。水門付近の石垣は、ハゼ類やエビ、カニ類の隠れ家になっています。
⑧ 早春、水門の海側には、シロウオが水門が開いている間に必死に遡上する姿を見ることができます。水門の周りは淡水の影響が強く、病気の魚がよく治療にやってきています。川からの栄養が流れてくる上に、深みにもなっているので、魚の密度が非常に高いです。
⑨ ここには中規模の干潟が生成されていて、その上にはヤマトオサガニ、ヒメヤマトオサガニ、フタバカクガニといった陸棲のカニが生息しています。泥の中にはカワゴカイ類とムロミスナウミナナフシが細い巣穴を掘っている他、ヨコヤアナジャコとその穴に住むクボハゼとヒモハゼが生息しています。ケフサイソガニやガンテンイシヨウジ等の水中の動物も、潮が引くと干潟にできる潮だまりに身を隠します。
⑩ ここは底が礫になっていて、クサガメが多数生息しています。近年、油谷湾で増加傾向にあるアカミミガメは、塩分濃度の低い川の東の池にはいてもクサガメのように塩分濃度の高い場所には侵入しません。このあたりの水路はどれも水深が浅く、アライグマに襲われやすい為、アカミミガメやアライグマのいない安全に暮らせる場所がここぐらいしか無いようです。岸壁で息継ぎをしていたり、ゴミの上で甲羅干しをしているのも見かけます。
⑪ 川の東には池があります。水路と繋がっていますが、水門で水がせき止められているため塩分濃度は低くなっています。水中には主にコイ、ボラ、マハゼ等が生息しています。水面にはアメンボも生息していて、塩分濃度が低いためか小さな幼虫もみられます。池の周りはカワセミの縄張りとなっていて、飛び回っているのをよく見かけます。クサガメとアカミミガメも生息しており、岸で甲羅干しをしているのをよく見ます。
⑫ ここは底が砂泥質になっています。初夏のころにはコアマモが多数生えて、アマモ場を形成します。コアマモが大きくなる晩夏の頃になると、餌を求めて、ヒイラギやガンテンイシヨウジ等の魚達がアマモ場に沢山集まってきます。コアマモの枯れる冬場には、沢山のモクズガニが川を下ります。モクズガニのいなくなった初春の頃には、鮮やかな婚姻色に変化したビリンゴやクボハゼのメスが川を彩ります。
⑬ 水路の上に掛かった橋の上には、ジョロウグモが網をはっています。このクモはメスとオスの体格差が非常に大きいです。私は、オスがどのようにして橋の上のメスのいる巣に辿り着いたのかがよく分かりません。匂いか何かでメスの居場所がわかったのでしょうか?それとも、多くのクモ類の幼体が行う糸を利用した飛行で偶然ここに着陸したのでしょうか?オスが小さい理由は、メスを探す道中に敵に見つけにくくする為な気がします。
⑭ 高架下の周辺は深みになっていて、クロダイ、ヒイラギ、マゴチ、ボラ等の魚類がたくさん生息しています。特に右側はゴロタ場になっており、ヒナハゼやタカノケフサイソガニが生息しています。橋げたには、腰の白いツバメの仲間のイワツバメが多数営巣していて、よく橋の下を行ったり来たりしています。油谷は対馬海流の影響で気温が高いためか冬季でも南へ渡らずに活動します。
⑮ 高架下にある干潟は猛禽類や獣が侵入しにくいため、オオバンがよく餌を探しています。オオバンの指には泳ぐための弁足というヒレがあります。カモの水かきとは違い、指どうしがヒレで繋がっていなく関節を曲げることができるので、陸でもうまく歩けるようです。その証拠に、人が近づくと猛ダッシュで高架下に逃げていきます。フタバカクガニもたくさん生息しており、干潟に打ち上げられた海藻を食べているようです。
⑯ 本流の横には小さな水路がありクロベンケイガニ、フタバカクガニ、ハマガニ、アシハラガニ等が生息しています。ハマガニは他のカニと違い夜間しか見かけることがありません。ハマガには動きが鈍い代わりに大きなハサミを持ち、近づくとそのハサミを振り上げた後に地面に叩きつけるという方法で威嚇します。しかし、カニの中で一番残骸や負傷した個体を見かけるのはハマガニです。恐らく威嚇が通じず獣に襲われているようです。
⑰ 河口付近は泥が堆積していて、泥の中にはテッポウエビやウリタエビジャコやヨコヤアナジャコ等のエビ類やテッポウエビと共生関係にあるツマグロスジハゼが生息しています。 海藻の中にはヨコエビとそれを食べるガンテンイシヨウジが棲んでいます。また、タマシキゴカイの卵もあり、塩分濃度が高い為生息できているようです。川縁の小規模な干潟にはフタバカクガニが生息していて、打ち上げられた海藻や枯葉を処理しているようです。
⑱ クルメサヨリは秋の水路に群れを成してやって来る魚です。10匹程のグループで流れに逆らいながら泳いでいます。ゴミの多いころに集まって、流れてきたゴミを長い下あごで口に運び、食べられるものかを確認して食べられないようだったら捨てるといった方法で餌を食べます。恐らく、死んだ虫やゴミの周辺にいる小さな動物が目当てなのでしょう。しかし、この餌の食べ方だとマイクロプラスチック等を飲みこまないか心配です。
⑲ 河口の奥側は、地元の方曰く、昔は広大な前浜干潟になっていたそうです。当時は白いシオマネキ(恐らくハクセンシオマネキ)や組体操をするカニ(恐らくヤマトオサガニ)もいたと言われていました。現在は埋め立てられて食品工場やソーラー発電所になってしまいました。確かに工場や発電所も生活においてはなくてはならないものですが、貴重な干潟を大きく壊すよりも、何かしらの配慮を行って建設するべきだったと思います。
⑳ 河口の横には汽水の池があり、水路と河口に繋がっています。表層はメダカが、中層にはボラとビリンゴが、岸壁にはユビナガスジエビ、ミゾレヌマエビ、トゲナシヌマエビといったエビ類やアベハゼ、ヒメハゼ等のハゼ類が生息しています。大規模なヨシ原もあり、放仔前のベンケイガニ類の休憩所にもなっています。アオモンイトトンボも塩分濃度が低い為か産卵を行っていました。ヤゴはまだ確認していません。
㉑ 夏の岸壁には沢山のベンケイガニ類がやって来ます。中でも多いのはアカテガニです。雌は腹部に卵を抱えている為、放仔に来ているようですが、雄は放仔後の雌と交尾をする為に来ているようです。近づくと、クロベンケイガニはハサミを振り上げて威嚇するのに対して、ベンケイガニとアカテガニはハサミを下に向けて、赤い掌部を見せつけて威嚇します。3種とも、小さな個体は威嚇をせずに地面に伏せて身を隠します。
㉒ 池の西側のヨシ原は、へりに大きなトキワススキが生えており、クズで覆われています。トキワススキの中からは、マツムシやスズムシ等の鳴く虫の鳴き声が聞こえます。秋の日暮れ頃になると、海面にどこからともなく大量のツバメが集まって海上を飛び回ります。その後しばらくすると、一斉にねぐらのヨシ原の中へと弾丸のように突っ込んでいきます。こんなに早く飛んでいると、堤防に頭をぶつけないか心配です。
㉓ 砂浜のセイタカヨシで構成されたヨシ原にはアカテガニとクロベンケイガニが生息していて、海岸に流れ着いたゴミを漁って食べています。近づくと 一目散にセイタカヨシの中に逃げていきます。また、海岸のゴミの下にはカクベンケイガニ、ウミベアカバハネカクシ、ハマベハサミムシ、ハマトビムシ等の雑食性の生物が生息しています。ここからは、沖の方に打ってある杭にミサゴやアオサギがとまって羽を休めているのを観察できます。
㉔ 浜の東側には岩でできたタイドプールがあります。マゴチの幼魚、ヒメハゼ、マメコブシガニ、ケフサイソガニ、オサガニ、ユビナガスジエビ、ユビナガホンヤドカリ、スガイ、ヒメケハダヒザラガイ、ウミニナ等が生息しています。汽水の生物と海水の生物が混じわる変わった環境です。ユビナガホンヤドカリは陸上でも平気で活動する変わったヤドカリです。オカヤドカリもこのようなヤドカリが進化して誕生したのでしょうか?
㉕ 海岸の前の海は遠浅になっていて、潮が引けば水深は50㎝前後なので歩くことができます。海中のアマモ場には、ヨウジウオ、オクヨウジ、ヒメタツ等のヨウジウオ類が多数生息しています。アマモ場は河口と同様にコアマモで形成されています。根元には小さなハゼ類やエビ類も隠れているので、ヨウジウオ達はそれらを食べているのでしょう。特に河口付近は川からの栄養が流れてくるからなのか、アマモ場が大きく発達しています
㉖ 海岸の前の砂泥底には、アカエイ、ヒメハゼ、ネズミゴチ等の魚類や、ウリタエビジャコ、テナガツノヤドカリ、タイワンガザミ等の甲殻類が生息しています。タイワンガザミはここでは甲幅5cm程の小さな個体が多いです。しかし、小さくても非常に勇敢で、近づくと果敢にハサミを広げて威嚇してきます。第四歩脚は平たく幅広い形に変化していて、それ以外の脚にも毛が生えており、遊泳や砂に隠れるのに適した形になっています。
㉗ 潮だまりの西にはきめ細かい砂でできた干潟があり、オサガニやユビナガホンヤドカリが生息しています。地面に空いた穴にはスジハゼやヒメハゼ等と一緒にテッポウエビが入っています。オサガニは潮の引いた干潟をはい回って生活していて、油谷湾では今の所ここでしか見つけていません。近づくと一瞬で砂に潜ってしまうので、干潟には何回も通っていましたが、生息しているのに気付くまでに時間がかかりました。
㉘ 砂干潟の横には礫干潟があり、上流の小川から澪筋が流れています。澪筋が流れている箇所にはクボハゼやユビナガホンヤドカリやケフサイソガニ等の汽水域の生物が多数生息しています。礫の下にはヨコヤアナジャコが生息しています。また、それらの生物を狙って、シロチドリとダイサギがよく歩き回っています。ヨコヤアナジャコの腹部には、稀にアナジャコフクロムシというオレンジ色の袋のような甲殻類が寄生しています。
㉙ 海岸の西側にはヨシの生えた小川があり、その周りには海岸林があります。木陰にはハマガニとクロベンケイガニが多数生息しています。小川の周辺にはクロベンケイガニとベンケイガニ、水路の中にはビリンゴとケフサイソガニ、水面にはアメンボが生息しています。海岸林の上にはスズメがたくさん棲んでいるので、林の上にトビが突っ込んで狩りをします。鳶も居ずまいから鷹に見えると言うように、狩りをする姿は鷹そのものです。
㉚ 海岸の最も西側は、塩分濃度が東側より高いです。潮間帯のゴロタ場にはイソガニ、ヒメアカイソガニ、マキトラノオガニ、イシダタミ、アマガイ等の磯の生物が汽水の生物に加えて生息しています。岸壁のくぼみにはカクベンケイガニがいます。マキトラノオガニとヒメアカイソガニは、驚くと脚を縮めて身を守ります。ここは完全な海水ではないので、外洋のゴロタ場ならオウギガニのいる生態系地位にマキトラノオガニがいるようです。
㉛ 海岸のホテルの北のあたりは塩分濃度が海と同等といえる程に高く、アオリイカやヒメイカといったイカ類やカタクチイワシやダツの幼魚等の泳ぎ回る魚も生息しています。アオリイカは海中では腕を平たく広げて金色に輝くため、まるで天女のようでとても美しいです。ヒメイカは、海底に点在している藻の中によく隠れています。
㉜ ホテルの西には干潟が広がっていますが、カニ類はケフサイソガニとタカノケフサイソガニしか生息していません。ここは、冬になるとマガモが沢山やってきます。横の石垣にはカクベンケイガニとヤマトクビキレガイが生息しています。ヤマトクビキレガイは、集団で石垣の上にのった石の下に隠れています。殻の上が成長過程で切れるのでクビキレガイといいます。小さい個体はクビがあるのですが、クビを切る理由がよく分かりません。
㉝ 南の方へ歩いていくと、二本の川が合流した地形になっています。西側の川には、陸に上流から流れた砂泥が堆積してできた小さな干潟が形成されています。この干潟には、油谷湾にはここでしか確認していないハクセンシオマネキが凄い密度で生息しています。近隣に住んでいる方曰く、昔からここに棲んでいたそうです。昔は油谷湾の奥の干潟にも沢山いたはずのハクセンシオマネキの最後の生息地と思われる為、この地をしっかり保護すべきだと私は思います。その他、草地の部分にはユビアカベンケイガニ、砂よりの所にはコメツキガニ、泥よりの所にはヤマトオサガニ、水辺付近の岸壁にはフタバカクガニ、草地とその周辺の岸壁にカクベンケイガニ、岸壁以外の陸地ほぼ全てにアシハラガニが生息しています。カニ類の多様性は油谷湾随一の場所ですが、恐らく少し何かが起こるだけで崩れてしまう環境です。カニ達の楽園がこれからも続いていてほしいです。
㉞ 河川周辺の草むらには、ウスイロササキリやマダラバッタ等のバッタ類が生息していて、それを狙ってかヌマガエルやニホンカナヘビも生息しています。ヌマガエルは背中に背中線と呼ばれる黄色い線をもつ物がいるのですが、何故か汽水域や海岸にいるものは背中に背中線を持つものがいません。汽水域、海水域の水中にいるのは見たことがないのですが、このカエルは餌の水分や朝露だけで水分補給をしているのでしょうか?謎が深まります。
㉟ 東側の川は、北側の川縁が砂泥質の塩性湿地になっていて塩性植物が生えています。カクベンケイガニとユビアカベンケイガニ、コメツキガニ、ケフサイソガニが生息しています。ケフサイソガニは潮が引いた際には、塩性植物の根元に潜って乾燥に耐えます。南側の川縁は泥池になっていて、ヒメヤマトオサガニとフタバカクガニ、ケフサイソガニが生息しています。川底は礫で構成されていて、ビリンゴやクロダイ等が生息しています。
㊱ 東側の川の奥側は柔らかい泥で構成されていて、ボラやユビナガホンヤドカリが生息しています。奥側の川縁には泥質の干潟が生成されていて、フタバカクガニとヒメヤマトオサガニが生息しています。
㊲ 東側の川を進んでいくと、川が左右に分かれます。右手の方の川へ行ってみると、フタバカクガニのいる泥質の干潟が続いているのですが、次第に泥がなくなって底のコンクリートがむき出しになり、川幅が細くなってきます。更に進むとヨシが川底に多数生えていて、その間にアカテガニとクロベンケイガニが蠢いています。この二種類のカニは塩分濃度が高い場所は好まないので、存在によってそこが海水の影響が弱い事がわかります。
㊳ 踏切を渡った先にある流れのよどんだ水路には、クロベンケイガニが生息しています。クロベンケイガニは巣穴等への依存性が低く、海の近くの淡水域ならどんな場所にでもいるといってもいいぐらい適応力が高いです。特に、こうした小さな水路のような環境は、他種のカニと被らないので個体数が非常に多くなります。しかし、水路の周りに死骸もあったので、本人たちにとって流れのよどんだ水路の環境が良いのかはわかりません。
㊴ 踏切を渡ると左の川に合流します。底が三面コンクリート張りとなっていますが、西側にはヨシ原があり大量のクロベンケイガニが生息しています。ヨシ原の中には僅かに泥が堆積していてハマガニとアシハラガニも生息しています。しかし、河川の底がコンクリートでできているので穴が深く掘れないため、巣穴への依存性がクロベンケイガニより高いこの2種には環境が適しているとは言えず、個体数はあまり多くありません。
㊵ 川に僅かに転がっている石の下にはゴクラクハゼとケフサイソガニ、カワスナガニ、スジエビ等の甲殻類が生息しています。ゴクラクハゼは派手なオスと腹が卵で膨れたメスのつがいで石の下に隠れていることが多いです。恐らく石の下に隠れにきたこれらの甲殻類を食べて、夫婦仲良く生活しているのでしょう。しかし、一緒に生活した後に卵を産み終わったメスはその後どこかへ行ってしまうようで、卵のそばでは雄しか見かけません。