新緑の京都鴨川 出逢いと育みの路
吉岡 万愛
京都府
同志社女子高等学校
高校3年生
全体説明
京都市を南北に流れる鴨川の三条から五条は市街地で、唯一緑やせせらぎを楽しむ憩いの場です。
鴨川では生物が養育や求愛行動を行っていました。特にヌートリアの養育行動には興味があり、養育中の五月から七月まで観察をしました。コロナの為外国人観光客が少なく地元の人が多く、生物を介してコミュニケーションが盛んだったので、給餌する人達への聞き取り調査も行いました。多くの人がヌートリアは危険ではないしかわいいと思い大切にしていました。しかし外来生物の個体数が多くなると既存の生態系に影響が出ます。食パンには脂質と糖質が多く、仔の生存率を高めさらに多仔出産になります。『ヌートリアの食べ物は鴨川の植物が適していて、食パン等の食べ物は脂質や塩分が多く餌に適していません』と看板で伝えてはどうでしょうか。人間の都合により勝手に持ち込まれた外来生物の個体数を調整していくのは人間の責任です。
観察ポイントごとの説明
①イクメンツバメ
雄雌同色だが雄は尾が長めです。五条大橋の下に巣を作り雛を雄雌共同で育てていました。親はすごい速さで川の上を飛んでハチ、ガ、ハエ、トンボ等の虫を捕まえて、巣に戻り雛に与えていました。ハシブトガラスが雛を狙うことがあり、親燕は必死に羽ばたいて追い払いました。南国から来たツバメは雄が育雛に参加します。私達が親になる頃には、ツバメに倣い日本の父親の育児参加率を上げていきたいです。
②ヌートリアの養育
五月初めにヌートリアの親子を見た時、仔は親の3割程の体長でした。親の背の後方側面に仔が口を何回も寄せていました。雌の乳首がそこにある為、哺乳行動の名残り、又は乳首付近から出るホルモンにより安心を得ていたと考えられます。川の中で半円を描き近寄ったり離れたりする求愛行動が何回か確認できました。養育している親と一回り大きく色の濃いヌートリアが求愛行動をしていました。獣道にヌートリア大がシャワー行動をした時、雄の性器を確認できました。仔達はこの雄に出会うと一目散に逃げます。雄は他の仔を攻撃し自分の種を繁栄させるそうです。以上の事から養育している親は雌だと考えられます。げっ歯類は視覚より嗅覚が優位な為、母親は仔と口と口を合わせて同胞か確認していました。七月仔が親の八割ほどになり単独行動を始めると、母親は口を合わせてきた仔に噛みつきました。仔の自立を促す母親の愛情を感じました。
③雌を奪い合うカルガモ
番の雌に緑色の薄い雄が近づくと番の雄は威嚇を始めます。色の薄い雄は若いのか色の濃い雄に負けて逃げました。雌は草むらに丸い寝床を作りそこで卵を温め、雛を育てていました。カルガモの親子が岸に上がると、ヌートリアの親子がいました。親ヌートリアが雛に接近すると、母鴨は嘴をヌートリアに突き出して威嚇しました。雛を守る為に獣にも立ち向かい、母は強しと思いました。
④ハトの求愛
雄が首を伸ばして胸を膨らませ体を大きくさせて、雌を追いかけて求愛していました。雄は雌よりも鼻瘤が少し大きいです。ハトは年に五〜七回も産卵します。以前、私の家のベランダの室外機の下に巣を作り、ベランダが糞害に合いました。CDをぶら下げるのは駄目でしたが、ネットを張ると侵入が防げました。鴨川にパンを撒く人が現れるだけで、どこからともなく集まってくるハトは学習能力が高いと感心しました。
⑤魚の様に泳ぐカワウ
よくカワウが浅瀬の石の上で羽を乾かしていました。カワウは羽に油脂が少なく水分を多く含んでしまうそうです。水中に潜り縦横無尽に泳ぎ魚を口に入れ水中に上がってから飲み込んでいました。カワウはたくさんの魚を食べてしまうので漁師からの嫌われ者です。松原橋より北に白いロープが東西に張り巡らされているのはカワウ避けです。アユ漁が解禁になると外されました。
⑥ムクドリ対策
ムクドリの仲良しの番をよく草むらに見かけました。体長はハトより小さくスズメより大きい。色の濃い方が雄で薄い方が雌。鴨川では百メートル間に二から四羽程しかいないが、京都駅や四条大宮の交差点には夕方になると大群で移動し、大量の糞や騒音の被害が出ています。ムクドリは枝の幹寄りに止まるので、街路樹の枝葉を大きな網で覆うと枝に止まれず、市街地から山に戻っていくのではないでしょうか。
⑦遠くから来た草花達
今回川縁の雑草を調べました。実は殆ど外来種で日本固有の在来種はごく僅かでした。特に河原や沼地では整備される為外来種が多くなります。人間が意図的に持ち込んだ物と他の物に紛れ込んで持ち込まれた物が定着し自生している植物を帰化植物といいます。同じ島国ハワイのマウイ島が植物の帰化率47%と高いのは観光で人の出入りが多い為です。京都も同様です。日本を代表する古都なのに皮肉にも国際色豊かな植物で覆われています。
⑧アオサギ
アオサギは日本のサギの中では最大種。トビが人の食べ物を取ったらアオサギもその後に続いて同様の行為をしていました。人の食べ物を取ることをトビから学習したのでしょう。飛行中は長い首を安定させる為に折りたたんでいます。雌雄同色だが雄が少し大きい。繁殖期なので雄が雌を追いかけて求愛している姿がしばしば見られました。餌は小魚、ザリガニ、蛙、ネズミ等だが鴨川では主に小魚をじっと待って捕まえていました。
⑨魚道
鴨川は都市河川だがタカハヤ、アブラハヤ、ナマズ、アユ等多くの種類の魚がいます。三条大橋の南には河床の安定の為に河止めがあります。アユが産卵のために上流へ遡上する為の魚道も設置されています。近年大雨の増水が多く、対策に鴨川でも河底を平にする治水工事がされています。しかし夏に高水温になれば魚達は深い川底が無ければ困ります。安価で景観を損ねない様に川縁に柳などの木を植えて日陰を作るのはどうでしょうか。
⑩セグロセキレイ
三条大橋の北側に干上がった川底があり、尾を上下に振りながら泥の中の餌を啄んで歩いていました。全体が白黒模様のセキレイの仲間です。飛行中は白い部分が多く見えました。上下に揺れる波型を描いて飛行し、ジジッジジッと鳴いていました。最近韓国で繁殖例があったそうですが、河川や沼地に生息し海岸には出ないので、日本の特産種と考えられています。
⑪カワラヒワ
セイヨウアブラナの種を啄ばんでいるカワラヒワの番を見つけました。雌は灰色の頭部に茶色胸部、羽に黄色味が少し入っています。雄は深緑の頭部に茶色い胸部、尾は黒く黄色味が何箇所か見られます。独特な鳴き声が聞こえ、撮影しようとすると逃げてしまうので撮影が難しかったです。日本全土にいて巣は街路樹にも作り、繁殖期は草地の広い河原で見られる事が多いのでカワラヒワと言うそうです。