龍野の自然観察路
盛砂 晶仁
兵庫県
太子高等学校
高校1年生
全体説明
私は、幼い時から自然などに興味があり、よくこの山の近辺で遊んでいた。又、山登りも好きな私は先日もこの山の自然を観察しながら山登りをしたばかりだ。
この山は、近くに小京都といわれる龍野があるためか観光客なども多い。そのような街の近くでも自然が沢山残っていて絶滅危惧種や準絶滅危惧種の生物が生息しているということに私は感動した。
この山は私の家から自転車で約十分の所にあるため軽い山登りや散歩にはちょうどよい。
今回は、私がこの山で自然を観察しながら山登りをしたりするルートのうちの一つを紹介する。
モリアオガエルの産卵場所である池(ポイント①)を出発し山を登り降りてくるという単純なルートだ。そんな単純なルートの中にも自然はたくさんあるということを知ってもらいたいと思っている。
観察ポイントごとの説明
ポイント① モリアオガエルの産卵場所であるせせらぎ
このせせらぎには、様々な動物、主に昆虫のトンボの仲間が集まってくる。
その中で最も目を引くのは日本最大級のトンボ、オニヤンマだ。せせらぎの端からまっすぐに飛んでくる。ちなみに日本で最も速く飛ぶ昆虫はオニヤンマだという。
又、この池は兵庫県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されているモリアオガエルの産卵場所でもある。私もつい最近までこの森にモリアオガエルがいることを知らなかったので非常に驚いている。
ポイント② 参道沿いの幅が二メートルほどの溝
この溝にはポイント①と同じくトンボの仲間をよく見る。その中で最もよく目にするのはオニヤンマ、そして体の色が金緑色で美しいオオアオイトトンボやハグロトンボなどである。
オニヤンマは大型種で7~9月にふつうに見られ、道路上や渓流上・高所を往復しながら飛ぶ。オオアオイトトンボは、アオイトトンボ科のトンボにしては大型。
この山ではこれらのトンボをはじめとする様ざまな種類のトンボを見ることができる。
ポイント③ 防砂ダム(林床に光が届くポイント①)
ここは林床に太陽の光が届く一つ目のポイントで、この近辺にはポイント①や②とは違った種類のトンボが飛んでいる。例えば、やや高所を小群を作ってひらひらとチョウのように舞うチョウトンボ・一定の空間を飛行するウスバキトンボなどである。
又、日当たりの良い土地を好むカナヘビやニホントカゲなども多い。
このような森の中の開けたところには他にも様ざまな生物が集まってくる。
ポイント④森の中の開けた場所(林床に光が届くポイント②)
ここはこの山の山頂付近にある展望台で、この山を登った時はほぼ必ずと言っていいほどここで休憩する。
ここには、カナヘビなどのは虫類やカラス・トビ・シジュウカラなどの鳥類も多い。
又、このようなところで最も目を引くのは、太陽の光を反射し美しく輝きながら飛ぶタマムシで、この他にも様々な種類のタマムシを観察できる。美しい色をした昆虫は林内の開けた所に集まってくることが多い。
ポイント⑤ 木陰
一見、薄暗く何もいないように見える木陰にも、このような場所を好んで選び生活している生物がいる。主にヒカゲチョウというチョウの仲間でこの種は翅の色が枯れ葉などに似ていて地味なものが多い。これは、枯れ葉などに似せて敵から身を守るためだと考えられている。
そしてこの山には、準絶滅危惧種であるキマダラモドキと呼ばれる種が生息している。この種は7月から8月に発生し刺激を与えるとすぐに林内に逃げてしまう。
ポイント⑥ クヌギ林
クヌギ林のような広葉樹林には様々な生物が生息している。この森での例を挙げるとシカ、シジュウカラをはじめとする沢山の鳥類、樹液に集まるカブトムシやクワガタ、そして最近地域によって個体数が激減している準絶滅危惧種のオオムラサキと呼ばれるチョウの仲間などである。オオムラサキは開長が十センチちかい大型種で翅は美しい光沢の有る青紫色、午後になると樹上高くを旋回しながら力強く飛翔する姿が目を引く。
ポイント⑦ クヌギ林などで樹液が出ている木
多様な生物が集まるクヌギ林の中で最も沢山の種類が集まるポイントがここ、樹液が出ているブナ科の樹木周辺では、たくさんの食物連鎖が毎日のように起こっている。そんなクヌギなどの樹液に集まる生物のほとんどがカブトムシやクワガタをはじめとする昆虫類で、今年は、ヒラタクワガタの♂と♀を一頭ずつ、コクワガタの♀を一頭、カブトムシの♂と♀を五頭ほど見かけたが、ノコギリクワガタは一度も見かけなかった。
ポイント⑧ 日照りの良い階段
この野見宿禰神社へと続く長い階段では日照りの良い斜面を好むニホントカゲやカナヘビが生息している。登っている途中で急に出てきたりするのでびっくりしてしまうことが多い。又、ニホントカゲの子供は尾がきれいな青色で美しいが大人になるとその色は失われ赤みをおびた茶色に変化する。
この野見宿禰神社から見える景色は、天気がよいと海まで見え、非常に良い景色である。
ここは私がこの森で一番好きなポイントの一つである。
ポイント⑨ クヌギなどの樹上
<ポイント⑧>の野見宿禰神社は傾斜が急でクヌギ林よりも高い所にあるので下からでは観察できない主に樹上で生活している生物を観察できる。その内の十種がアカシジミという蝶の仲間でこれらは(ゼフィルス)と呼ばれている。この種類は小型ながら美しい羽を持つ種が多く、日本に生息しているゼフィルスの大半は羽が金緑色に輝き「雑木林の宝石」と呼ばれ、この種が生息している林は自然が豊かだと言われる。
ポイント⑩ 薄暗い山の下り坂
このような薄暗い森の中では、夜行性の動物が休んでいることが多い。よく見かけるのがガの仲間でこの辺りを通った時に地面や木に止まり休んでいたガが驚いて飛び出してくる。又、時々アオダイショウなどのヘビの仲間も見かけることがある。そしてこの近辺では、子連れのシカなどをよく見かける気がする。先日も一頭の♀とニ・三頭の子ジカを見た。
あまり知られていないがシカは鳥に近い感の声で鳴き、私も初めて知った時は驚いた。
- 感想
自然を観察したり山登りをしにこの森へ行くことがあってもどこにどの生物が生息しているのかなどまとめたことがなかったので、おもしろかった。これからもこの森に通い新しい発見ができれば良いなと思っている。
しかし最近になって少し心配することも増えてきた。まずその一つがクヌギ林に生息するオオムラサキの個体数が減少しているように思うことである。私が初めてこの森でオオムラサキを見つけたのが約四年前でその頃は、多い時で一日に計約五頭以上見かけたが今年は、一・二頭しかみていないからである。オオムラサキは国蝶にも指定されているチョウなので、年々数が減っていることに心配している。もう一つがゴミのポイ捨てである。ポイント④のあたりでは山登りをしに来た人がゴミをそのまま置いて行くことがありこのままでは自然が壊れてしまうからである。そして最後に、地球温暖化による、団地に生息している生物の北上である。特にここ最近、もう少し南方に昔は生息していたはずのナガサキアゲハやイシガケチョウをこの山でよく見る。又、私たちが夏によく見るクマゼミも元々は南方に生息しており温暖化の影響で北上してきた種で父が子どもの頃には、この辺りでは、ほとんど見かけなかったと言う。これらの種は現在も北上を続けており、生態系がおかしくなってしまう可能性がある。
この森は希少で珍しい種類の生物が何種か生息しているので、この自然をそのまま保っていってほしいと強く願っている。