自然が育む命の探究路
佐久間麻由果
東京都
小野学園女子高等学校
高校2年生
全体説明
この散歩道は、駅前商店街や住宅地のすぐ裏にあり江戸時代、城下町として徳川将軍様の鷹狩りの場でした。山道には水平線が丸く見えるので本当に地球は丸いんだなと実感できる大好きな公園もあります。
湖には学校や花見客で賑わう中、多くの絶滅危惧種も見受けられ東京サンショウウオやメダカも見られると地域の方に教えて頂きました。
菌類と野草の強制・子守唄のように毎夜聞こえる蛙や鈴虫の鳴き声・ツツジや紅葉が美しく咲き季節を問わず発見と喜びを感じさせてくれます。
朝顔から抽出した汁で絵地図を塗ったり、トンボの飛行実験や、蝶の飼育等散歩道での発見だけでなく自宅に帰ってからもとても楽しかったです。
私の通う小野学園では大井町自然再生観察園に力を入れていて、ビオトープ作りを目の当たりにし、人力で自然作りや再生する事の難しさ・人と自然の調和が重要だと学び、繁華街で人と自然が命の共生をしている散歩道を紹介する事にしました。
観察ポイントごとの説明
1. どんぐりと松ぼっくり
団栗や松ぼっくりでアクセサリーや玩具を作って遊んだ思い出の場所で、顔を上げるとクヌギやコナラの落葉樹が見られました。
団栗は生物にとって大切な食糧で、人間も有毒成分(タンニン)を重曹や藁の灰を使ってあく抜きをし、団栗豆腐や団栗パン等を食べたあと祖父から聞き、私も作ってもらいました。
灰汁が少ないためマテバシイが美味しいという話でしたが、独特の味がして品種改良のない自然本来の味は苦いなと思いました。
2. 紫陽花
散歩道には、日本原産のガクアジサイ、シーボルトにより逆輸入されたと知り大変驚いた西洋アジサイが混在し、現在よく見るアジサイは、桜同様日本人の好きな花の一つです。
アルミニウムを吸収し土壌の影響を受け、開花後7変化する花の色が飽きさせない魅力だと思います。
紫陽花からアルミニウムを抽出できたり、青酸ガスを出して葉を外敵から守ったり、装飾花で虫をおびき寄せたり…本当に、この花は不思議な植物です。
3. どくだみ
祖母が「ドクダミは万能薬なんだよ」と、鼻詰まりや蚊に刺された時、怪我をした時等利用していました。
傷口にどくだみの葉を当て治療した方が傷跡も残らず治りが早かったのです。
調べてみると毒や痛み・ウイルスの抑制効果があり、私の大好きな独特の臭気すら強い抗菌効果があります。
漢方薬局ではドクダミや甘草等自然から得た恵みを組み合わせ薬を作っています。
自然の生薬から不治の病も救える特効薬…夢ではない気がします。
4. 蝶
捕まえたモンシロチョウをキャベツに卵を産ませて育てたので羽化を見ることができました。
約200個の卵から蛹になったのは2匹だけ。
自然の厳しさを改めて感じました。
蛹の瀬からエビ反りになったり手伝いたくなるほどじわじわと狭い蛹から出てきました。
うまく折り畳まれた翅を乾かすとすでに燐が付いていました。
燐粉を落としてみるとトンボと同じ透明な翅でした。
散歩道には、多種多様な美しい蝶がたくさん飛んでいました。
5. ツチグリ
林をのぞいたら、とてもユニークなキノコを見つけてワクワクしてしまいました。
本物の栗の様でおいしそうでしたが、丸い部分を押すと、埃のような胞子が煙のように飛び出しむせてしまいました。
雨が降ると、ひび割れ模様のほおづきみたいに川が開きます。
白い幼菌の時には、いためて食べれると祖父は言ってましたが、キノコはちょっと怖いなと思いました。
6. とんぼ
山の上では大きなオニヤンマが頭上をブーンという羽音響かせ向かってきたので、驚いて避難してしまいました。
湖にはアキアカネが逆立ちしていたので不思議に思い調べるとトンボは暑さに弱いので体温が上がらないようにしていたのです。
光を背にして飛行する習性もあると知り、下から光を当てると背面飛行しました!
トンボには面白い習性があるのですね。
最近の科学技術は、昆虫達の習性を利用しているのでワクワクしました。
7. キジバトと鳥達
昼頃、キジバトのデーデーボーボーという鳴き声がしたと思ったら頭上を大きな影が通ったので見上げるとキジバトでした。
この山には四季折々たくさんの鳥たちが姿を表します。
キジは本当に図鑑で見るようなきれいな色で目の周りの赤い色がにわとりのようで印象的でした。
他にウグイスやシジュウカラの鳴き声は聞こえましたが確認できませんでした。
祖母からウグイスの糞は美肌にいいと聞き、使いましたが少し変わったにおいでした。
8. カモ
この湖にはカモ・サギ・白鳥等多くの水等がやってきます。
すぐ近くでサギが羽を広げただけですがあまりの大きさに驚いているうちに、飛び立っていきました。
カモは垂直になるほど体の半分を湖に入れ、他の鳥たちは湖にくちばしを入れて何か餌をとっていました。
人が与えるえさも食べているので観察しやすかったけれど、無責任にえさをあげたり、誤って危険なものを飲み込まないような環境作りを地域で心掛けなければいけませんね。
9. 桜
桜の名所100選にも選ばれ、湖の周りだけでも約1000本の桜が作るサクラのトンネルは一面ピンクでとても綺麗です。
近年桜の開花も温暖化の影響で、都市部は早く九州では冬が暖かすぎるために遅れ、季節的な自然環境の変化が変わりつつあります。
小さい頃祖母から、どんなに美しくてもサクラには精霊が宿っているから手折ってはいけないと教えられました。
言い伝えとしてだけでなく日本の象徴ともいえる桜を大切にしていきたいですね。
10. せみの羽化
1時間ぐらいかけ、静かな夜にさなぎの背から亀裂が入り、成虫が顔を出し始めました。体を時々震わせながら最後はエビ反りになり落ちてしまいそうになりながら出てきた蝉は白く、翅脈はエメラルドグリーンでとてもきれいでした。
次の日見に行くと、民家の紫陽花の葉に抜け殻があり紫陽花の青酸ガス効果で他の虫に羽化を邪魔されたくなかったのかなと思いました。
人が植えた花も、生物の営みを支えているのだなと感動しました。
11. たんぽぽ
春、かんとうたんぽぽとせいようたんぽぽが混在して咲いていました。
最近は雑種も増え固有種が減りつつあるのが残念です。
夏にたんぽぽ?調べたらせいようたんぽぽでした。すごい繁殖力ですね。
小さい頃、茎や葉を手折ると白い汁で手がべたべたになったり、舌状花と呼ばれる綿毛を飛ばして遊んだりしましたが、今回はかんとうたんぽぽを選んでしっかり吹きました。固有種がたくさん育ってくれるといいな…と、願いながら。
12. カワニナ
真っ黒い円錐形のカワニナはゆっくりと移動しながら、珪藻類を口にこすりつけるように体を左右に大きく振り動かしながら食べていました。
有機物のある綺麗過ぎない水で、人が住む地域では洗剤等が流れず台所などのかすが流れ込む程度が一番良い川で、ここでも人の暮らしがカワニナに影響を与え、人が無責任に薬剤を使わないようにし、流さないように心掛ければ十分に共存できるようです。
13. ヨシノボリ
メダカ発見!!と喜んで川を覗いていると、通りがかった方に「ヨシノボリだよ。」と、教えて頂き少しがっかりしました。
川の水たまりの窪みに各3~5匹程いて、とてもすばやかったけど手ですくったら捕まえられました。
体の模様は様々な変異があるらしく、私が見たのは頭部に赤い線の入ったタイプと体に青とオレンジの水玉模様のある2種類でした。川から出すと黒っぽく見えた体も、水中では透き通るような黄土色で綺麗でした。
14. 沢ガニ
切通しの涼しい岩の陰にたくさんいました。
右の鋏の大きな個体が多くオスの特徴だと調べてわかりました。
水質階級の指標生物になっていて、湧水がきれいな水と評価されたようでうれしかったです。
甲羅を触ってみたかったけれど年配の方に寄生虫の中間宿主でもあるのでやたらに触れないほうがいいと教わり断念しました。
寄生虫の存在まで考えなかったのでもっとよく調べてから接触しなければ危険が伴う生物もいると学習しました。
15. 滝と地層
切り通しになった地層は、昔ここが海だった名残りを生痕化石で知る事ができます。
現在の海岸まで約10kmもあるので想像もつきませんが、有孔虫やヒメスナホリムシ等が壁面に見られたので確かに潮間帯に堆積したとわかり驚きます。
このプレートの動きが地球もまた生きているのだなと思います。
夏は、3m程の滝に湧水が流れ、冬にはツララを初めて見たので、触っていると足元に落ちてきて、刺さるかとヒヤッとさせられました。
16. ワラビ
ワラビの周りに蟻が多くいたので関係があるのか調べると、葉の割れ目に蜜腺をもつ好蟻性植物でした。
ワラビに触れた時少しべとっとしたのが蜜だったようです。
蟻に守ってもらいながら、動物に対してはタンニンや酵素成分で身を守り、発癌物質を含むことでなんと人間からも身を守っていたのです!
ワラビの生き残りにかける執念のようなものを感じるような多重な戦略に驚きました。美味しいけどワラビ中毒にならぬよう要注意ですね
17. 杉
この付近の杉は、山武杉と呼ばれていて江戸時代徳川家の命令で栽培されたものなのだそうですが、日吉神社には樹齢400年以上の杉が何本もあり、二人で幹に抱きつきましたが手が届かぬほど太く、境内の杉並木は圧巻です。
私の母は花粉症ですが、自宅より都会にいる方がつらいといいます。
山武杉の特徴は、早く成長し花粉が少ない品種なのだそうです。
人間の家の木材として、鳥達の住処として“住”にかかわる重要な植物だと思います。