私の散歩道ときどき水中観察~「明石の人工干潟 大蔵海岸公園~」
SCIENCE and STEAM CLUB(高嶋 竜友音・菅原 知樹)
兵庫県
WILL学園 明石キャンパス
高校1年生
全体説明
私たちの通うWILL学園明石キャンパスは、日本の標準時を決める東経135度子午線が通る明石市にある。明石の名物は明石焼き、明石鯛、明石蛸などで、明石市立天文科学館も有名だ。
私たちにとって、この大蔵海岸公園はとっておきの散歩道だ。ここは、明石海峡大橋を望める景勝地で、多様な生き物に出会える観察の場でもあるが、実はこの磯辺は人口干潟だ。
さて、私たちも幾度か明石地域の海岸清掃をしているが、海岸のプラスチックごみはなくならない。兵庫県の調査でも、大蔵海岸でプラスチックが多数確認されている。なんと、環境省の令和4年度調査によると、瀬戸内海域で回収されたごみの93%がプラスチックだった。
加えて、夏休みに調査のため、磯場へはいると水温が高く、温暖化を実感した。昨年調査と比較しても平均水温が3度以上も上がっていた。この散歩道は自然の魅力と同時に、環境課題を伝えてくれる場所だ。
観察ポイントごとの説明
<1クロマツ>
学校側から魚の棚商店街を抜けて市役所の脇を通って、散歩道に入ると、約500本の松林が広がっている。この松林の多くを占めるクロマツは学名をPinus thunbergiiといい、マツ科マツ属の常緑針葉樹で日本固有の種だ。散歩道では、多数生息しており、北海道南部、本州、四国、九州、沖縄の暖帯海岸部に分布している。散歩道のクロマツの大きさは2階建ての建物ほどで、セミやクモなどの昆虫がいた。
<2クマゼミ>
松林のクマゼミは、学名をCryptotympana facialisで、カメムシ目セミ科だ。体長は成虫で6~7cm程で、東海地方以南に分布している。シャンシャンシャンという特徴的な声で鳴くが、この日は大潮の午後で、セミの大合唱というほどでもなかった。散歩道では、セミがクモの巣にとらわれて、羽を必死にバタつかせていた。抜け出そうとしていたが、見ている間には抜け出せず、自然の摂理を感じた。
<3ナツアカネ>
この松林ではハチやアリにも出会ったが、赤いトンボにも出会えた。この赤いトンボは帰って調べてみると、ナツアカネとわかった。学名をSympetrum darwinianumで、トンボ目トンボ科で日本全土に分布している。アキアカネ属と異なり、平地でも夏の時期に出会うことができる。体長は3.3~4.3cm程だ。学校から大蔵海岸公園へ向かう道のりにもこのトンボを多く見かけ、散歩道でも、そこかしこで遭遇した。
<4ドバト>
さらに松林を進んでいくと、大蔵海岸公園自然観察センターがあり、ヤドカリやイソスジエビを展示していた。この道を進んでいくと、明石公園にもいるドバトにであった。これは学名をColumba liviaといい、ハト科カワラバト属だ。体長は30~35cm程で、北海道から沖縄まで広く分布しており、「クルックー」や「グルルル」といった鳴き方をしている。散歩道では、人慣れをしているためか、かなり近くまで寄ってきた。
<5ハクセキレイ>
春は、この散歩道にもハマエンドウやハマダイコンの花が咲き、美しい。ここで浜に目をやると、ハクセキレイが堤防に飛んできた。この鳥は学名をMotacilla albaでスズメ目セキレイ科。体長は21cm程だ。日本全土に分布している白と黒のかわいらしい鳥だ。明石にはセグロセキレイも沢山おり、見た目だけで判別するのは困難だ。「チュンチュン」という鳴き声が聞こえてきたので、「ジジッ」と鳴くセグロセキレイはないとわかった。
<6ヒザラガイ>
磯浜に降りると、打ち上げられたミズクラゲがいた。水辺には多くの岩礁がある。中にはヒザラガイが張り付いているものも多くあった。学名をViolophura japonicaで、クサズリガイ科ヒザラガイ属だ。北海道南部から屋久島に分布している。大磯海岸公園では、磯の岩礁の干上がるくらいの上部に張り付いており、体長は約4.5cmだった。この貝は食べれるらしいが、ここの生き物は持ち帰れないため諦めた。
<7アオアジ>
海中に目を転じると、海の生き物に沢山会える。その中で印象的だったのは、アオアジの幼魚だ。半透明の姿がなんとも儚く、透き通る背骨が美しかった。透明骨格標本にできたらいいなと思いながら眺めていた。この学名をDecapterus maruadsiといいアジ科・ムロアジ属。体長は30cm程で、青森県から九州南岸までの日本各地沿岸に分布している。散歩道では、稚魚や若魚ばかりで、成魚は見かけなかった。
<8イソガニ>
さらに海中を覗きながら散策を続けると、体毛を巧みに動かすウミケムシやハコフグの稚魚にも出会えた。ただ、どの生き物より多く会ったのは、イソガニだ。学名はHemigrapsus sanguineusで、モクズガニ科モクズガニ亜科イソガニ属だ。北海道以南の日本各地に分布している約3cm程のカニである。まるで私たちの視線を感じ取るセンサーがついているようで、目が合うと岩礁の下にあっという間に引っ込んでいった。
<9オオヘビガイ>
さて、この岩礁に張り付いていたもう1人の名脇役がオオヘビガイだ。学名をThylacodes adamsiiといい、ムカデガイ科オオヘビガイ属で、北海道南部から九州まで分布している。体長5cm程だ。ヒザラガイと比べると、オオヘビガイは殻口部分が立ち上がるため、うっかり衣類などをひっかかれると裂け、怪我もしやすいので注意が必要だ。ところで、この貝の殻はナベカの隠れ家にもなる。発見した時も近くにナベカがいた。
<10ナベカ>
オオヘビガイの隠れ家の主、ナベカは、学名Omobranchus elegansだ。スズキ目イソギンポ科で、体長6~10cm程だ。北海道南部から九州南部まで広く分布する。
ナベカは、オオヘビガイの殻に隠れるだけでなく、そこで卵を産む習性もある。磯場で網を入れると、成魚はすぐ逃げたが、なんと稚魚が捕らえられ、ここで繁殖しているとわかった。人工の磯場でもこんなにも命を育めるのに驚いた。
その一方で環境条件にも目を向けると、ナベカに適した水温は26℃前後だが、温暖化で海水温がさらに上昇すれば、彼らの生息にも影響が及ぶのではと心配になる。加えて、目の前の小さなナベカが有害物質を抱えたプラスチックの影響も受けるかもしれないと思うと、環境問題は遠い話ではなく、すぐそばに迫る現実なのだと強く感じた。観察だけでなく、小さな生き物たちのために、自分たちにできることから始めてみようと話し、散策を終えた。
代々木高等学校
サテライトキャンパス学研のWILL学園
SCIENCE and STEAM クラブ
部長:高嶋 竜友音
部員:菅原 知樹
高校1年生2名