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受賞作品一覧
優秀賞
第40回 団体の部

香住の観察路 ~水でつながる生き物map~

課題研究清水班

兵庫県
兵庫県立香住高等学校
高校3年生

全体説明

私たちが通う兵庫県立香住高等学校は、兵庫県内で唯一の水産系学科である海洋科学科と、普通科が併設されています。学校のある兵庫県北部は、山陰海岸ジオパークにも登録されており、風光明媚で豊かな自然があります。地域の基幹産業は、その自然を利用した水産業や観光業であり、人と自然が密接に関係しています。現在、課題研究の一環で、学校のある香美町香住区の生物調査を実施しています。
今回の自然観察路には、その調査で見つけた生物や普段の実習で見つけた生物を描いています。一級河川の矢田川をはじめ小さな渓谷や河川を水が流れ、日本海に流れ込んでいます。そこには淡水や海水、汽水など、多様な環境があり、水を介して様々な生き物の営みを観察することができます。JR香住駅から出発し、山や海沿いを巡りながら水の中をついつい覗き込む、「海洋生の性(さが)」を一枚の地図に表し描いてみました。

観察ポイントごとの説明

<1 ヒダサンショウウオ>
JR香住駅から山間の方に歩いていくと、香住谷と呼ばれる渓谷があります。ここには、ヒダサンショウウオという流水性のサンショウウオが生息しています。私達が訪れた4月頃は繁殖期にあたり、卵嚢やその中の幼生を観察することができました。ヒダサンショウウオは準絶滅危惧種に登録されており数も少ないため、私達は卵嚢から幼生を孵化させ、育ててから放流するつもりです。また生息地の清掃活動などの保護活動も行っています。

<2 コウイカ>
香住谷から北上すると香住漁港東港があります。そこには香住高校が保有する大型実習船但州丸が停泊しています。但州丸が係留されている堤防から海を覗き込むと、そこにはコウイカを見ることができます。コウイカは鰭の基部に沿って白線があり、オスは外套に明瞭な横縞があります。海洋生は釣り好きも多く、コウイカを餌木で釣ろうと堤防に通うこともしばしば。甲が硬いことが有名なので釣ったり触ったときに確認してみてください。

<3 アオリイカ>
東港から西に向かうと香住西港があり、港の入り口には地域の人から白塔と親しまれている灯台があります。香住にはイカの観察スポットが多くあり、ここではアオリイカの姿を見ることができます。アオリイカは春から夏にかけて、産卵のため深場から浅場にやってきます。外套が50cmにもなる大きなイカで、大型で幅広の鰭の形や色が馬用の革製鞍側面下側部の障泥(あおり)に似ていることからアオリイカと呼ばれています。

<4 ナブラ>
白灯から日本海側を眺めると、沖の方に魚のナブラを見ることができます。香住高校には小型実習船「しりうす」があるので、私達はこの船を使い直接香住沖の海の上で魚を観察することができます。
ナブラにはハマチなどの温帯性の回遊魚が多くいます。ハマチは出世魚であるブリの名前の一つで、西日本では30~40cm程度のものを指します。体は紡錘形で、背は青緑色、腹は銀白色で、口から尾鰭まで幅広い黄色の帯が見られます。

<5 チヌ>
香住港西港を西側に向かって歩くと香住港南防波堤があります。様々な漁船が漁に出港する通り道で、足元を覗き込むとチヌを観察することができます。チヌはクロダイの関西地方の呼び方で、体長は50cmぐらいになり、全体的に銀黒色で特に若い個体には横縞模様が見られます。塩分の変化にも非常に強く、内湾の汽水域や淡水域の河川の河口付近でも見ることができます。

<6 スズキ>
香住港南防波堤をさらに西に進むと二級河川である矢田川の河口に着きます。時折、バシャッ!バシャッ!!と大型魚の魚影を見ることができます。この河口付近では5、6月になるとアユの遡上が見られ、それを捕食しようとするスズキを観察することができます。
スズキもチヌと同様、淡水への耐性が高く、岩礁域や内湾、河川の淡水域に侵入します。体側の上部は褐色、下部は銀色をしており、幼魚には背側に小さな黒点が見られます。

<7 アカエイ>
香住海水浴場や香住高校前の海岸沿いなど、矢田川河口付近には矢田川から流出してきた砂が堆積し、その上にはアカエイが生息していました。
アカエイも淡水への耐性が高く、汽水域にも行くことがあります。底生生物を主食としており、この付近に生息するハゼやカニを捕食しているようです。上下に平たい菱形をしており、背側は赤褐色で腹側は白色をしています。鱗はなく体表は粘膜質で覆われています。今回唯一の軟骨魚類です。

<8 イシダイ>
香住高校の前を北上すると、香住高校のカッターやボートを管理する艇庫があります。艇庫のある下浜漁港にはテトラポッドや堤防があり、そこではイシダイを見ることができます。
イシダイの幼魚はサンバソウと呼ばれ、黒い横縞模様がくっきり入ります。大人になるとこの横縞模様が薄くなり、全体的に灰色になり口周辺だけが黒くなります。口は嘴のように尖り、歯は強固に融合しているため、硬い貝やウニも砕いて食べます。

<9 アカハライモリ>
艇庫からさらに海岸沿いを歩いて進むと三田浜海水浴場があります。山側には田畑や用水路があり、そこにはアカハライモリが生息していました。アカハライモリも準絶滅危惧種に指定されており、生息数が減少してきています。海の近くで見られたのには、とても驚きました。
かわいい眼が特徴で、背中側は黒色、お腹側は名前の由来となっている赤色をしています。これは警戒色になっており、地域や個体により模様が違っています。

<10 アユ>
三田浜海水浴場から香住高校の方に戻り、矢田川沿いを歩いて上流に向かうと、由良橋という橋の下でアユを見ることができます。
矢田川は、日本海に注ぐ流域面積約277㎢、法定河川延長約38kmの二級河川です。アユは両側回遊魚であり海と川を行き来する魚です。4月から5月頃に川に帰ってきて成長し、最低水温が20度を下回る11月頃に産卵が始まります。雌雄は臀鰭の形でも見分けられますが、婚姻色がでる頃にはオスの体表がザラザラした質感になり「サビアユ」と呼ばれるようになります。
矢田川漁協さんと共にアユの毛釣り体験をするなど、普段からアユに親しんでいます。また、アユの人工授精に取り組んでいます。人工受精後、学校の養殖施設で孵化させ、ある程度育てたら地元の小学生・幼稚園児と一緒に矢田川に放流しています。このような活動を通して、地元の子供たちとともに、もっと香美町の生き物や自然の素晴らしさを知ってもらいたいです。

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