カメの調査から見えた低湿地の観察路
カメプロジェクト(代表:石井日香留)
愛知県
愛知県立佐屋高等学校
高校2年生
全体説明
みなさん、カメは好きですか。僕は幼い頃からカメが大好きで、用水路に母とカメを見に行くのが毎日の楽しみでした。今、日本にいるカメの八割はミドリガメです。ミドリガメとは北米原産の外来種で本名はミシシッピアカミミガメです。このカメは在来種を捕食したり、水性植物も捕食します。そのため、低湿地の生態系を破壊し農業に被害を与えています。そこで佐屋高校カメプロジェクトを立ちあげ、外来カメ類の防除と在来種の調査のため罠やタモ網を使い、フィールドワークを行っています。愛知学泉大学の矢部隆教授にもアドバイスを頂いています。そこで得たデータを見ると、佐屋高校周辺は多種多様な生物が生育しすばらしい環境だということがわかりました。スッポンやナマズなどの在来種も多く生息しています。また、コオイムシやミズカマキリなど多くの水生昆虫もみられます。外来種の脅威にさらされながらも懸命に生きる在来種が見られる観察路です。
観察ポイントごとの説明
ポイント1 このポイントは学校の畑が隣接している場所で、実習中などに用水路を見るとクサガメがたくさん見つかりました。なぜ、クサガメが多いのか考えてみました。すると、在来種のヒメタニシや外来種のスクミリンゴガイなどがいてエサが多いためと考えられます。クサガメは雑食ですが、植物より動物性のものを好む傾向があります。
ポイント2 このポイントは①から40mぐらい進んだ場所で、タイリクバラタナゴがよく見られます。大きな網で草の下をすくうと群れで獲れます。タイリクバラタナゴがいるということは、産卵に必要なヌマガイの仲間の貝もどこかにいるということです。ヌマガイの仲間は絶滅が心配されているので、貴重な生き物がいる可能性があるということです。
ポイント3 このポイントは多くのカメ類が生育しているポイントで、冬場の調査では冬眠しているカメを捕獲調査しました。二百匹近く捕獲しましたが、九割近くはミシシッピアカミミガメでした。その中に本来自然界では生まれてはならないウンキュウというクサガメとイシガメの交雑種が見つかりました。四個体もいたので繁殖しているようです。本来イシガメとクサガメは棲む場所を分けています。その為、遺伝子の汚染が心配されます。
ポイント4 このポイントはナマズがよく見られるポイントです。カダヤシやフナの稚魚が多くいるのでエサが多いのだと思います。また、パイプなどがあるので隠れ家になっていると思います。ナマズの他にもフナやコイなどの大型の魚も多く生息しています。
ポイント5 このポイントはオイカワやモロコなどが多く生息しています。成満寺の裏の近くに大きなポンプ場があり、おそらく木曽川の水をパイプラインで送ってきていると思われます。そのため中流の魚のオイカワやカマツカの仲間なども見られます。用水路の水がきれいな証だと思います。今ではめずらしいテナガエビなども見られます。
ポイント6 このポイントは④⑤の用水の縁で大きな仕切りがあり、市江川とは繋がっていません。そのため生活排水の影響をあまり受けていません。それに仕切りがあるので水が流れていないため、ミズカマキリやコオイムシなどの水生昆虫もたくさんいます。現在は農薬により数が激減していてとても貴重です。また絶滅危惧種のめだかも生息していますが、カダヤシが増えているので心配です。
ポイント7 このポイントはサギ類が多く見られます。ダイサギ、コサギ、アマサギ、ゴイサギ、そして準絶滅危惧種のチュウサギもよく見られます。田んぼにはドジョウやカエルなどの生き物が多くいるので、食事をしに来ていると考えられます。もう一つサギ類が多い理由は弥冨インターと蟹江インターに繁殖地のサギ山があるのも多い理由だと思います。
ポイント8 このポイントは大型のカムルチーがよく見られます。水面に顔を上げて空気呼吸をよくしています。水はにごっていてヨシなども岸に多く生えているので大型のカムルチーには格好の隠れ家になります。小型の水生生物が食べられてしまっているので駆除していきたいと思っています。ヘラブナの釣り台があるので、ヘラブナもいるみたいです。
ポイント9 このポイントは罠を仕掛けていて、スッポンがよく入ります。スッポンは肉食でこのカメがいることで、外来種のブルーギルやカムルチーなどを食べてくれるので生態系が守られています。幼体の頃は弱いので外来種に負けずに数が増えてほしいです。
ポイント10 このポイントはスジエビとテナガエビが多いポイントです。ヨシなどの草が多く生えていて隠れ家にする小型の水生生物にはとても良い環境です。モロコやコウライモロコなどの小魚も多く生息していますが、やっかいな外来種であるブルーギルも多いのが現状です。微力ではありますが捕獲し、ブルーギルを少なく低密度で管理することが重要だと思います。
ポイント11 このポイントは、水鳥の宝石としてよく知られているカワセミが見られます。池に小魚が多いのでエサが豊富で食事をしによくこのポイントに来ています。用水路の方から水面の近くを低空飛行します。瑠璃色の宝石はこの水辺の豊かさを物語っていると思います。
ポイント12 このポイントは、ミシシッピアカミミガメがこの水系で一番多いと思います。外来種であるミシシッピアカミミガメは多くの在来種を駆逐し、イネやハスなどの農作物にまで被害を及ぼしています。そのため、佐屋高校カメプロジェクトでは外来カメ類の防除を行っています。一年間で350匹以上のミシシッピアカミミガメを駆除してきました。しかし、彼らには何の罪もありません。ただ、ペットとして日本に来て、人間の身勝手な行動で逃された地で、一生懸命に生きているだけなのです。私達は農業高校生として、この恵まれなかった命を農業に活用するため、甲羅の肥料化の研究を行っています。駆除したミシシッピアカミミガメの甲羅を炭化させ、それを肥料として混ぜたり、マルチングや多肉植物の化粧砂の代わりに活用しています。又、組織培養の寒天培地に入れて活用したところ活性炭よりもイチゴの生存率が高くなりました。外来種のカメが少なくなるように努力していきます。
チーム代表: 石井日香留(2年) 生態調査、絵地図作成、文章考案・作成
澤井亮太(2年) 生態調査、文章作成