中山寺~奥の院~参拝観察路 其の弐
宝塚ゴテンヤマTwins(代表・山縣真帆、山縣志帆)
兵庫県
小林聖心女子学院高等学校
高校1年生
全体説明
中山の森に魅了されて、継続して奥の院に登頂される方は多い。数年通い続け植物の命の営みに触れていると、植物が最高の姿をみせるために、四季に応じた成長や変化を繰り返し、壮麗の瞬間が生まれることを実感した。自然の美しさとは植物の一生を見ることだと確信した。私たちは昨年から宝塚エコネットというボランティア団体に所属し、植生調査や除草などを手伝い、活動に参加している。その場で、人間が自然を守る一方、心無い人の行動で生態系が脅かされることを学んだ。中山の森に生きる動植物が未来も生息し続けられるようリサイクル材で啓発プレートを作成した。今後も継続して動植物の観察と記録を行いたい。その一環として中学生で作成したルートとは異なる道を紹介したい。参拝観察路・其の弐を通し、中山寺の歴史、中山の森の魅力、生態系の大切さ、美しい動植物の循環をお伝えできると嬉しい。
観察ポイントごとの説明
<1 ヤマモモ【ヤマモモ科ヤマモモ属】>
常緑樹の山桃は3m程のどっしりした木。葉の脇から3~4月にかけて真っ赤で小さな花を集合体で穂のように咲かせる。その後、青い果実を少しずつ成長させる。果実の表面はタラコのように粒状である。6月下旬頃、1~2cm程度の大きさになると、透明感のある色あいから徐々に赤く塾れる。この果実は洗って氷砂糖と一緒に約1ケ月瓶漬けすると、山桃シロップが完成。ソーダ割りが最高!
<2 霜柱>
午前8時。歩いていて顔や耳が痛くなるほどの寒さ。奥の院の温度計はー2.5度だった。所々にある水たまりは凍っている。盛り土になった場所に10cmと長く、動物の牙のような霜柱を発見。花壇などで見た霜柱は3~5cmで、触れると崩れやすいが、山の霜柱は時間をかけて土を押し上げていく力強さにパワーの違いを感じた。手に取ってみても簡単には溶けない。握ってみると霜柱の先端が手に刺さり痛かった。迫力満点だ。
<3 センブリ【リンドウ科センブリ属】>
秋から冬に季節が変わる頃、乾燥した土の地面に1cm程の小さくてかわいらしい花を発見。花弁に薄紫色の筋が1本入る美しい花。全体の大きさによって花は4または5深裂に分かれる。細い茎は15~20cm程の高さで、葉は漢方薬や生薬として利用されていた。試す勇気はないが、根・茎・花全て苦いらしい。苦味を持つ花とは見た目には想像がつかない。
<4 ニセアカシア【マメ科ハリエンジュ属】>
春から初夏にかけて甘い香りが漂ってくる。周囲を見渡すと、大木に小さな房の花が風に揺れていた。花は藤の花のように房のような花を下垂させて咲かす。房のように見えるのは白い小さな花の集合体で、ひとつひとつは直径2cm程度のマメの花。私たちがよく口にするアカシアのハチミツは、正式にはニセアカシアのことである。花が散った後、インゲン豆をプレスしたような豆ができる。
<5 湿地帯>
奥の院に通う方々の手で約100㎡の範囲にロープが張られている。湧水湿地の成立要件は、水・陽光・貧栄養の3つで、富栄養になると他の背丈の高い植物が入ってくる。無断で植物を刈り取ったり、抜いて持ち去ったりしないよう保護している。狭い湿原地であっても季節の変化とともにMapで紹介している⑥モウセンゴケ⑦カキラン⑧サギソウなどの湿原植物がみられる。
<6 モウセンゴケ【モウセンゴケ科モウセンゴケ属】>
湿原植物。初夏、湿地帯の中でも水気が多い場所でモウセンゴケを発見。うちわを3~5cmサイズに縮小した形をしている。緑色の団扇のような扇状の部分から、マッチ棒を3mmサイズに縮小した、先端が球状のものが全体に付着している。そこから粘着液を出し、コバエなどを捕まえる食虫植物でもある。緑色から赤色へと変化していく。株の中央から背を伸ばし、白く小さな花が咲く。
<7 カキラン【ラン科カキラン属】>
初夏に咲く湿原植物。全長高さ20cm程度。15mmの小さな花は柿色(橙黄色)。5枚の橙黄色の花弁に抱かれるように、内側は紫色の斑紋が入って美しさが際立っている。個体によっては、茎から2つに分かれて咲いている花もある。カキランを見ていると巫女さんが持っている神楽鈴を連想した。今にも“しゃんしゃん”と鈴の音が聞こえてきそうだ。
<8 サギソウ【ラン科サギソウ属】>
準絶滅危惧種のサギソウは湿原植物。高さ40cm程。毎年1~5輪開花している。白サギが翼を広げて飛ぶ様をみたてたことが名前の由来である。白い花で直径は3cm。ギザキザの白い花びらを花粉を運んでくれるスズメガの重要な足場として機能している。スズメガは空中をホバリングして蜜を吸うとされてきたが、実は脚をギザギザに引っかけて体を安定させている。<参考>令和4年8月19日朝日新聞日刊19面
<9 ミヤマアカネ【昆虫綱トンボ科アカネ属】>
真夏から秋にかけて見られる。浅い緩やかな流水域を好む。体長3.5cm~4cm。はねの褐色の太い帯が特徴。オスは全身赤色。日本人が「赤トンボ」といえば、ミヤマアカネのことを指す。メスは黄橙色。宝塚市では動植物レッドリストに指定されている。確かに、近年自宅付近においてミヤマアカネを見ることはできなくなった。
<10 ワレモコウ【バラ科ワレモコウ属】>
夏の終わり。お月見の生け花としてさりげない存在感を示す。2mmの細い茎が1m程背をのばし、途中何本か枝わかれした先に赤茶色の花を咲かせる。花全体は約2cmの卵型で、2mmほどの小さな花が集まって成り立っている。花弁はなくイヤホンマイクのようなかたちの花である。つくしの頭にも似ていると思った。あずき色の花は、秋を感じさせてくれる。
<11 ツルリンドウ 【リンドウ科リンドウ属】>
花屋に並ぶリンドウは背が高く7mm程度の茎に濃い紫色の花を複数上向きに咲かせている。野生のツルリンドウは2mmの細い茎を四方へ自由に伸ばし、その先端に一輪の花を咲かせていた。花の根元は白色で先端に向かい、薄い紫色にグラデーションしている。午前8時では陽光が届かず、花は萎み閉じている。時間の経過とともに花は開く。可憐であるのに堂々と咲いている姿に芯の強さが見えた。
<12 モリアオガエル 【両生綱無尾目アオガエル科】>
雨上がりの朝、防火用水ドラム缶の上方に、木の枝と葉に泡状の卵を発見。モリアオガエルは産卵する場所の下方に水がある場所を選ぶ。泡状の卵は白色。ねっとりしており枝と葉にしっかり付着し、簡単に飛ばされたり落ちたりしない。卵から少し離れた枝にモリアオガエルが座っていた。体長8cm。背中は黄緑色。腹に白地に点線の班がある。目の虹彩(瞳孔の周り)が赤いことが他のカエルと区別するポイント。卵は1ヶ月かけ白色から茶系に変化。ふわふわした泡状から、スポンジのような感触に変わる。徐々に空気が抜けたようにしぼみ、乾燥しきった状態で役目を終える。水中に落ちたおたまじゃくしは30~40日かけてカエルになる。変態したモリアオガエルに出会うのは難しい。また毎年数ヶ所で産卵するが卵塊が盗まれる。心無い人の行動で稀少な生物の循環を壊さないで!という思いを啓発プレートにし、掲げた。
<13コジュケイ 【鳥綱キジ目キジ科】>
留鳥であるため、通年出会える鳥だ。体長30~40cm程度で、鳩と同じぐらいの大きさ。首元が赤く茶系の羽に灰色や赤色の紋様がある。親子やカップルで行動する姿をよく見かける。人間の気配を感じても飛ばずにチョコチョコ急ぎ足で木々の間に入っていく姿にはほのぼのさせられる。飛ぶことが苦手な癒し系の鳥。
<14アリマウマノスズクサ 【ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属】>
牧野富太郎博士が命名したつる性多年草。花弁はなく形はサックスに似ている。約3cmの白緑色のU字に伸びた筒状の先端は紫褐色で2cm程のビラビラが広がっている。その中心には黄色の口が開いている。葉はミッキーマウスの形だ。観察中に噂を聞いた人が集まってきた。自然保護の観点から、過剰な見学は植物の負担になるためWEBには掲載しない約束をした。
<15アケボノソウ 【リンドウ科センブリ属】>
花冠の斑点を夜明けの星空に見立てたことに由来し、暁の星からアケボノソウと呼ばれている。40~50cmの高さの茎は直立で、枝分かれした葉には葉脈がみえる。花は白色で、4~5枚に深裂している。裂片の先端に黄色の2つの丸い模様と、紫黒色の斑点がある。これらの模様はそばかすのようで可愛らしいイメージを与えている。種子を採取されている方がいて気になった。
<16しぶき氷 【8時―2.5℃】>
奥の院の小さな滝の水しぶきが凍ってしぶき氷ができていた。丸く氷の玉になっている。氷柱は寒い日に見ることができる。奥の院に通い始めて7年目となるが、しぶき氷を見たのは初めてだった。紅葉した落ち葉の上にできたしぶき氷は太陽の光を吸収し、透明感のある黄色や赤色の宝石のようだった。秋に落下した松笠も氷に包まれていた。あらゆる条件が重なって生まれるしぶき氷。偶然の出会いに感謝する。
<17中山寺>
1300年前に聖徳太子が中山寺を建立。中山寺は子授かりや安産祈願信仰でその名を馳せている。かつて豊臣秀吉は世継ぎがないのを嘆き、中山寺へ祈願したところ秀頼を授かった。明治天皇も然りであった。中山寺は別名「極楽の中心中山寺」と言われる程、霊験豊かな場所である。その一方で、みなさんは中山寺を取り巻く環境、その自然も極楽なのもご存じでしたでしょうか。今回はその一部をご紹介させていただきました。
チーム名:宝塚ゴテンヤマTwins
メンバー:山縣真帆(代表)、山縣志帆 高校1年生
役割分担:全体の構成と配置の作成(真帆)、中山寺の歴史についての調査(志帆)。
絵と説明文は、描きたい所から描きました。分担は決めず、担当が各々半分になるようにしました。