自然の息づく川中島探索マップ
杉原珀都
長野県
長野県立長野吉田高等学校
高校2年生
全体説明
ここは犀川と千曲川に囲まれた三角州であり海のない長野県ですが「島」の付く地名が多くあります。水はけの良い土地柄を活かし、果物の栽培、特に川中島白桃の栽培が盛んです。また武田信玄と上杉謙信が五回に渡って戦った地でもあります。
私は小さい頃から自然が大好きで普段から生き物を探しながら生活していますが、改めて探してみるとたくさんの生き物に出会うことができました。しかし動物たちはかわいいだけではありません。山の木々や農作物を食べてしまうことで大きな被害が出てしまいます。また私の住む地域でも外来生物の数が増加しており、昔からそこに住んでいた生き物のすみかが減ってきています。
身近な自然が抱える問題についてより多くの人々に目を向けてもらいたいと日々感じます。
それではお寺から山の中の温泉まで片道一時間の道のりを一緒に見ていきましょう!
観察ポイントごとの説明
<1お寺 ~境内編~>
出発点となるお寺には多くの動物がやって来ます。毎朝境内の南のお堂の前にタヌキのフンの山ができています。同じ所で毎日する不思議な習性です。また屋根裏に住んでいたハクビシンも畳の上に立派なフンを残していました。冬になり雪が降ると足跡を残していく者がいます。イノシシの幅広なひづめやかわいい肉球のスタンプ等、姿が見えなくても想像が膨らんでいきます。
<2お寺 ~木々から見える四季編~>
春には桜や杏、梅の花が咲き乱れます。毎年住職と開花予想をしていますが毎年当たりません。またお寺で獲れた杏で奥さんがジャムをつくってくれます。パンにバタとたっぷり塗るとごちそうです。秋にはみんなで銀杏を拾って銀杏ご飯を食べます。彼岸の時にはお墓一面がヒガンバナで真っ赤に染まります。幻想的でどこか引き込まれそうな恐ろしさも感じる妖艶な雰囲気で満ちています。
<3お寺 ~極楽へ行く編~>
庫裏の裏に極楽を再現した庭園を見ることができます。池にはハスの大輪やスイレンが咲き並び、のぞいてみるとモツゴやフナ、大きなニシキゴイやヨシノボリ等が泳いでいます。池のほとりには150年の歴史を持つ磯馴松や、珍しいシダレウメが植えられ、春先には竹林でタケノコが採れます。本当に極楽に来てしまったかのような気分になる、私の好きな場所です。
<4大漁川 ~ざざ虫編~>
お寺を出て町を歩きます。大きめの農業用水路に沿って歩いて行くと大きなざざ虫を発見しました。ヘビトンボなど水生の昆虫の幼虫の総称であり、海の少ない長野県では貴重なタンパク質として古くから食べられてきました。しかしきれいな水が少なくなりまた継承者が減少し、段々とこの文化は失われてきています。地域の伝統食はその土地の人が受け地でいかなくてはいけないと思っています。
<5大漁川 ~魚たち編~>
タイトルにある大漁川は仲間内でそう呼んでいるだけなのですが、この水路にはとにかくたくさんの魚がいます。色の美しいオイカワや大きなコイやナマズがとれたときは大興奮です。加えてバスやギルなどの外来の魚もいないのも嬉しいです。しかしゴミのポイ捨てをする人も多く、見ていて悲しくなります。そこに住む生物やそれを拾う人のことまで考えてほしいものです。
<6田んぼ ~日本の原風景編~>
線路をくぐると建物が減り、田や果物畑多くなります。道の脇の水田をのぞくと色々な動物に出会うことができます。私が好きなのは泳ぐエビフライことホウネンエビです。ずっと浄土宗を開いた法然上人とつながりがあるのかと思っていましたが、調べてみると「法然」ではなく「豊年」だと分かってびっくりしました。2億年前から姿の変わらない「生きた化石」です。どこか神秘を感じます。
<7ニラ ~地域に根付いた郷土料理~>
庭先や畑の片隅に、小さな可憐な花を咲かせる強烈な匂いを放つ草が見つかります。ニラです。降水量の少ないこの地域では古くから小麦の栽培が盛んで、米よりも「こなもん」と呼ばれる小麦粉を使った料理が多く食べられてきました。子どもたちは庭でニラを獲ってきてお母さんが焼いてくれる「ニラせんべい」を食べて育ちました。後世まで受け継ぐべき伝統的なおいしさです。私も大好きです。
<8ツマグロヒョウモン ~実は厄介者!?~>
この辺りではどこを歩いていても、黒い体に赤い斑点と鋭そうな針を持つ虫を見かけます。我が家の庭にも毎年やってきてはパンジーやスミレを食べ尽くしいつのまにか去っていきます。この虫が後に美しい橙色の蝶になるとは思ってもいませんでした。これから先も戻ってこられるようにスミレ類は抜かないように注意したいです。ですが植わったパンジー類は食べないでもらいたいです。
<9中尾山 ~動物・鳥類編~>
りんご畑を左手に坂道を登っていくと武田信玄も浸かったと言われる中尾山温泉が見えてきます。秋になると熊の目撃があり、沢にはシカやイノシシの足跡がみられます。動物たちの息遣いがすぐそばで感じられる場所です。また県北部に広がる裾花凝灰岩の岸にはハヤブサのアパートがあり、巣から顔を出してエサをねだる幼鳥の姿が見られます。ここの自然はそのまま残していきたいです。
<10中尾山 ~植物編~>
サンショウやタラノキやコゴミなどの植物が顔を伸ばしていました、沢を少し登ると自生したワサビを見つけました。ワサビ栽培も盛んな信州でもワサビ栽培に不可欠なキレイな水資源が少なくなっているという新聞記事も読み、何年後かにはワサビは見られなくなっているのかもと恐くなりました。また山腹でマイタケが生えているのも見つけ、友人と思わず「舞って」しまいました。
<11番外編 早朝早くの大冒険>
中尾山温泉を南側に入ると茶臼山という山に入ります。この2か所は昔からカブトムシやクワガタを捕る格好のポイントです。それに朝早くに山へ行くとテンやリスなどのお目当てではない動物と出会うこともあり、毎年この季節が楽しみでした。しかし砂防ダムを造ることになり、毎年ミヤマクワガタやノコギリクワガタが捕れた木が周りの土ごと無くなってしまいました。すると次の年からその付近ではまったく姿を見なくなってしまいました。もちろんダムが無ければ雨が降った際に被害が出てしまうかもしれませんが、どうにか共存できる方法は無かったものかと考えてしまいます。人がもっと身近な自然に寄り添い、優しくなれる未来を実現するために、まずは周りの人にどんな生き物が自分の側で暮らしているかを知ってもらいたいと考えます。
これからもこの地域の自然を守り、後世に伝え残していける人になりたいです。