根川緑道散策~The earth is alive~
上條留奈
東京都
明治大学付属中野八王子中学校
中学校3年生
全体説明
立川市にある根川緑道を散策しました。根川は、もともと立川段丘の湧水を集めて多摩川に注ぐ小川でした。何度も氾濫したため、改修工事が行われ昭和四十九年に根川緑道として整備され、人工水路として小川が再現されました。立川市下水処理場で高度処理された綺麗な水を利用してます。根川の岸辺には水草が植栽されていて、草地の土手の護岸で自然の川岸を復元し、水生生物が棲みやすい環境が作られてます。
緑道は、A〜Dのゾーンに分かれていて、それぞれ生物、遊び、休息、散策の4テーマが設けられてます。様々な植物が生え、野鳥や魚や昆虫が生息しています。ここは大人から子供まで、安全に自然環境に触れ合う事ができる貴重な場所です。また、根川貝殻橋という吊り橋があり、その先に貝殻坂があります。坂の途中から貝殻が出るそうです。このあたりが海だったとは、夢にも思いませんでした。「地球は生きている」と改めて実感することが出来る場所です。
観察ポイントごとの説明
① 根川緑道のスタート地点です。下水処理場で綺麗に処理された水が、円柱型の石のオブジェから滝のように流れていて、涼しく感じます。澄んだ川底の石には苔が生えていて、ザリガニがのそのそ歩いてます。川面には、ハグロトンボが2匹飛んでいます。エメラルドブルーの体に黒い羽があるのが雄で、黒い体なのが雌です。ひらひらと飛ぶ姿が、手を合わせて祈っている動きに見えるので、神様とんぼと言われているそうです。
② 道端にオニユリが咲いてます。人間の背丈ほどもあり、花びらは鮮やかなオレンジ色で黒斑点があります。大きく反り返る大きな花弁は、まさに赤鬼を連想させる力強い植物です。昔中国から食用として輸入されました。球根の百合根、葉っぱと茎の間にできるムカゴを食べるそうです。種子を作る他のユリと違い、オニユリはムカゴで繁殖します。この繁殖の様子から、「賢者」という花言葉も付けられました。
③ 柴崎体育館の裏手に、ガニガラ広場があります。立川丘陵に沿って湧水が出ていて、昔は蟹が沢山居たので、「蟹殻」から名前がついたそうです。広場内は、遊具があり、小川が流れていて、池があります。池には、たくさんの白い蓮が花を咲かせています。蓮の花は、早朝に咲いてお昼には花を閉じてしまうそうです。泥水から可憐に咲く姿は、花言葉でもある「清らかな心」そのものだと思います。
④ Bゾーンに入ると川にせり出すように木で出来た東屋があります。そこから川を覗いてみると、色とりどりの錦鯉がゆうゆうと泳いでます。警戒心がなく、人を見ると寄ってきます。全身が金色の鯉、赤と黒と白のぶちの鯉、真っ白な鯉もいます。錦鯉は、観賞用に人間に改良された鯉です。錦鯉は飼育用として海外でも人気が高く、斑点模様、色彩の鮮やかさ、大きさ、体型を価値基準として高額で取引されているそうです。
⑤ 緑道の植え込みにメドセージが咲いています。中南米が原産のシソ科の植物で、「サルビア・ガラニチカ」が本当の名前で、メドセージとは日本国内の呼び名だそうです。サルビアは、とても種類の多い花で、五百種類以上の仲間がいます。濃い青紫色をした筒状の花をつけます。大きく口を開けた花を、唇形花と言うそうです。「ガオーッ」と叫んでいるようで可愛らしいです。青紫の花は、暑い夏にほっと一息つけさせてくれます。
⑥ Cゾーンには、カワセミが飛来する池があります。高価なカメラを持った人達が、カワセミを待ち構えてます。カワセミは、水辺に生息する小鳥で、鮮やかな水色の体と長いくちばしが特徴です。「清流の宝石」と呼ばれてます。美しい青色の羽に、青い色素があるのでなく、太陽光を反射する加減で見える色だそうです。そのため、光の具合や見る角度により色が微妙に変化します。カワセミは、この緑道で一番の人気者なのです。
⑦ Dゾーンに入ると、コンクリートに河岸が覆われていて、壁から丸いコンクリート管が出ている所があります。玉川上水から分かれた柴崎分水が、地下を流れ、ここで根川に合流します。ここは川幅も広く、水深があるため、鯉や亀がたくさんいます。カルガモが数羽仲良く泳いでます。カルガモは野鳥には珍しく、一度に十個以上の卵をうみます。でも、天敵が多く生き残れるのは僅かです。厳しい自然を生き抜く本能によるものなのです。
⑧ 根川の両岸には桜の木が植えられていて、土手から川面に向かって咲く桜は、とても綺麗です。桜は、花が散って数か月後の八月頃に葉の付け根に花芽をつけ、翌年に咲く花の準備を始めます。秋に一旦眠りにつき、冬に一定期間低温にさらされると眠りから覚めて開花の準備を始めます。春に気温が上昇すると花芽が一気に成長し、開花します。だから、一斉に桜が咲くそうです。桜は春夏秋冬の四季がある日本ならではの樹木なのです。
⑨ 根川貝殻坂橋は、根川にかかる橋で、中央の柱には二枚貝のオブジェが付いている趣のある吊り橋です。橋を渡ると、貝殻坂があります。江戸時代は多摩川に渡し舟があり、甲州街道は青柳段丘崖の上にあるため、この坂を下りて、河原に出ていたそうです。坂の途中からおびただしい量の蛤の殻が出てきたのが名前の由来です。約五百万年前は、青梅や飯能が海岸線で、このあたりは海だったそうです。多摩川上流の昭島では、クジラの化石が見つかってます。二百万年ぐらい前になると、気温の変化と共に、海面は上下し、海底が隆起し、富士山や箱根から運ばれた火山灰が堆積し、岩や砂が積もった海底は次第に陸地になったそうです。その時代に立川周辺は遠浅の海となり、蛤や牡蠣が生息していたそうです。その後、陸地となった武蔵野台地を多摩川が削り取り、武蔵野段丘、立川段丘、青柳段丘ができたそうです。ここは地球の息吹を感じることが出来る場所です。
⑩ 木々が多い場所は、セミが激しく鳴いてます。立ち止まって耳を澄ますと、セミの声に混じり「ホーホケキョ」とウグイスが鳴いています。ウグイスと言えば、梅が咲く頃に鳴く春の鳥だと思ってました。雄は、雌に求愛するためと自分の縄張りを誇示するために鳴きます。ウグイスは一夫多妻制で、繁殖期は意外と長く夏の終わりまで続くため、夏でも鳴くそうです。雌は子育てに専念し、雄は縄張りを守ることに専念します。
⑪ 根川は多摩川に合流して終わります。終点には樋門があり、多摩川が増水したときに、根川に逆流するのを防いでいます。多摩川との合流付近は、水の流れも穏やかで、コサギやアオサギがいます。サギは、最近の遺伝子解析により、コウノトリ目からペリカン目に分類が変わったそうです。サギは、飛ぶとき首をZ形に折り曲げて飛ぶのが特徴です。アオサギはサギの仲間で最大級なので、羽を広げ飛んでいく姿は、迫力があります。