応募期間

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受賞作品一覧
優秀賞
第38回 高校生の部

豊かな通学路~八戸市大久保から岬台~

丸谷佳乃

青森県
八戸工業大学第二高等学校
高校1年生

全体説明

高校へ進学してバス通学となり、登下校で足を使うこともなくなったある日。所用で、数ヶ月ぶりに母校の白銀南小・中学校近辺を歩く機会があった。私の家から両学校までの通学路はとても自然が豊かで、久々に触れる木々や草花の景色、鳥や虫の声に、思わず足を止めた。当時は毎日見ていたためか当たり前のように思っていたが、今改めて目にするとこれ程までに美しい自然の中を歩いていた日々がいかに恵まれたものであったかを実感する。バスの中からでは、この空気も匂いも感じることはできない。都会の学校では、自然どころか校庭すら人工芝だったり屋上だったりする場所もあると聞く。緑豊かな通学路。季節ごとに様々な顔を見せてくれる校庭。これから先も、このままの姿であってほしい。
昔はこうだったんだよ、ではなく、今も変わらないね、と子供たちに伝えていきたい。そんな願いもあって、私の生まれ育った美しい環境を紹介したいと思った。

観察ポイントごとの説明

①白銀南小学校の二ホンタンポポ
今、自然に多いのはほぼ西洋タンポポで、二ホンタンポポは絶滅しつつある。元々繊細なうえ、種が重く遠くまで飛ばせないからだ。十数年前小学校にいらした先生が、ご自宅で育てていた二ホンタンポポを何株か校庭の隅に植えてくださったという。今ではほんのわずかしか残っていないため、何とか増えればいいなと、私の家でも知人からいただいた一株を育て始めた。

②ほたるの里
白銀南小・中学校の裏手には、「ほたるの里」と呼ばれる小川がある。毎年、学校と近隣保育園、公民館が協力して、ホタルの幼虫を放流している。ホタルの光を観察しやすいように、初夏には街頭にカバーをするなどして、近隣住民の皆さんも協力してくださる。自然を残していくためには、こうした地域の連系や学びも必須であると思う。

③野馬小屋
野馬の湯という銭湯の裏手に、野馬小屋と呼ばれる広大な敷地がある。保育園のとき、ここでピクニックをしたことがあり、皆で虫とりをした。バッタを沢山つかまえた記憶がある。この辺り一帯は湧水が豊富で、昔はその水と草木の豊かさから馬を放牧していたそうだ。地名はそれが由来なのかもしれない。

④林道によく現れるキジ
このあたりの林道や田畑には、キジが多く生息している。授業中にもよく、どこからか「ケーンケーン」と鳴き声が響いていた。散歩中に、雄と雌の集団に遭遇したこともある。雄は雌の気を引く為に、緑や赤を基調とした鮮やかな模様をしており、雌は自然にとけこみやすい茶色の姿。大きな鳥なので、見かけるとついワクワクしてしまう。

⑤林道の木々たち
通学路の途中には、クリやドングリなど、実のなる木々も多くある。秋になると、帰り道に落ちている実を拾うのが楽しみのひとつであった。また、ノブドウが生えているところもあり、ピンクや紫、水色、黄色など、実が七色に色づいている様はまるで金平糖や宝石のように可憐で美しいが、食べてもおいしくはない。

⑥コジュケイの親子が現れる野原
コジュケイは、キジよりひとまわり程小さめの体格で、丸っぽい胴体をした茶色い鳥だ。鳴き声も独特で、「チョット、コ―イ」と聞こえる。ここ二年ほど、近くの林からこの野原へと数羽のヒナを連れて足早に移動する姿を見かけている。背の高い草花が生いしげる手つかずの野原なので、子育てにも向いているのかもしれない。

⑦岬台中央公園
ここは私の住む町内の一番大きな公園で、運動会や防災訓練、盆踊り等にも使われる。住民の憩いの場所だ。周囲はぐるりと桜の木で囲まれている。春になり一面ピンクに色づく様子はとても美しく、小さい頃からよく散歩に行っていた。このような、人々が繋がり集える場所、心安らげる場所が近くにあるのは幸いだ。

⑧キツネを目撃
以前夜中に、赤ちゃんが泣いているような声が聞こえ、それがあまりにも大きく長く続くので外に出てみたところ、赤ちゃんではなくキツネの鳴き声だったことがある。奥の林から出てきたらしい。身体よりも長い尾を持ち、住宅街の中を鳴きながらシュッと走り去って行った。鳴き声は昔話に出てくるような「コーンコン」ではなく、「キェーッン」という感じであった。

⑨なかよし公園
遊具がいくつかあるほか、大きな桜の木と、白かばのような木が数本立っている。その中の一本にキツツキの巣があり、ぽっかりと丸い穴が開いている。以前は出入りする姿を何度か見たが、毎年かどうかは不明だ。人から見やすい場所に巣があるのは珍しいのではなかろうか。このままいつでも安心して巣作りのできる環境を、ずっと残してあげたいと思う。

⑩タヌキを目撃
岬台の一番奥には田畑と林が広がっている。様々な鳥や草木、昆虫を見ることができる。中でも驚いたのは、タヌキを目撃したことだ。野生のタヌキは丸々とはしておらず、痩せて鋭い顔をしていた。残念ながら近隣の田畑の作物は被害に遭っているようだが、 このような自然の哺乳類が繁殖している環境は、都会では味わえない、自然の動物園のようで、嬉しくもある。

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