夏の山辺高校周辺MAP
山辺高校自然観察部(代表:坂本ゆうり)
奈良県
奈良県立山辺高等学校
高校3年生
全体説明
私たちの通っている奈良県立山辺高等学校は、創立七十年を超える歴史ある学校で、私たちは豊かな自然の中で勉強しています。山辺高校は、昭和一〇年に設立された豊農塾を前身として、昭和二一年に組合立山辺農学校、同二三年に県立山辺高等学校となりました。豊農塾の建学精神である「開拓魂」は今も生徒の心に強く根付いています。
山辺高校は植物について学ぶため、綺麗な空気や豊かな自然を生かした農場や茶畑、茶工場といった施設があります。また、動物について学ぶため、ヤギやイヌ、ウサギ、モルモットなどを飼育しています。
山辺高校周辺は、名阪国道が近いこともあり、ステンレスや金属を加工する工場が建ち並んでいます。最近では森林を拓き、太陽光パネルの設置が進んでいます。
山辺高校の周辺では、潤沢な自然の美しさとともに、自然の大切さが味わえる、とても勉強になる地域です。
観察ポイントごとの説明
観察ポイント①
山辺高校の裏門を抜けると、左手には農場があり、木々に囲まれた自然の中を歩くことができます。ここでは、カナヘビやムクゲ、ワルナスビを見ることができました。ムクゲは、花材や夏の茶事の生け花としても広く活用される花で、日本人にとって馴染み深いといえるでしょう。ワルナスビは要注意外来生物に指定されているナス科の植物です。全草が有毒で、完全に根絶やしにすることがとても難しいとされています。
観察ポイント②
この先からは観察ポイント①よりも緑が深くなっていきます。道沿いに春日台カントリークラブがあります。針葉樹に囲まれた日陰の多いこの道では、ガマやガマズミを見ることができました。ガマは漢字で書くと「蒲」となり、この字は水辺に生える草という意味です。ガマは古くから薬として利用されています。ガマズミは食べられる赤い実をつけていました。
観察ポイント③
ここでは、キジバトの鳴き声を聞けます。キジバトは切手の意匠にもなった鳥ですが、警戒心が強く、姿は滅多に見られません。右手の道を真っ直ぐ行くと、乗馬クラブクレインオリンピックパークがあります。ここでは乗馬体験ができ、レッスンやふれ合い体験などができます。また、施設は山辺高校の馬術部が練習に使っており、今年度の高等学校馬術大会で山辺高校の生徒が個人・団体の二冠を達成しました。
観察ポイント④
この付近は名阪国道のトンネルや、背の高い木々が生い茂っているため、日当たりが悪く、湿気が多い場所です。ヒメジョオンやエノコログサとともに、アケボノアワタケが自生していました。アケボノアワタケは汁物や卵料理に入れて食べることもあるそうですが、一般的には食用ではないそうです。毒はないようですが、色が色なので食べるのは抵抗があります。
観察ポイント⑤
これまでとは違い、大和高原ボスコヴィラに通じる大きな道に出ることができます。近くには布目川の支流、小野味川が流れています。アカツメクサや笹が多い場所です。ここにはワレモコウが咲いています。ワレモコウは薬草としても使用されている植物で、諸説はありますが、源氏物語にも登場するとされている古い花です。付近に大木はなく、日当たりが良いため、ワレモコウが自生しているのでしょう。
観察ポイント⑥
ここには大和高原ボスコヴィラという三つ星ホテルがあります。大自然の中に建てられたこのホテルには人工芝・天然芝のフィールドがあり、山辺高校サッカー部の練習場にもなっています。ここにはクズの花が咲いています。クズの花は古くから秋の七草として数えられており、名は奈良県の吉野川付近が葛粉の名産であったことが由来とされています。奈良県では吉野葛として和菓子などに使用されています。
観察ポイント⑦
観察ポイント⑥から、名阪国道の一本松インターを歩いて数十分の位置です。ここからはまた緑が色濃くなります。ここにはヨウシュヤマゴボウが咲いています。ヨウシュヤマゴボウは雑草として紹介されることが多く、強い毒性があります。黒く熟した果実は潰すと赤紫色の果汁が出て、衣服や皮膚に付着すると落ちないことから、原産の北アメリカではインクベリーと呼ばれています。
観察ポイント⑧
ここではノシメトンボやニラの花を見ることができました。ノシメトンボは赤くありませんが、赤とんぼの種に属しており、西日本では大型化する傾向にあります。ニラは食べられますが、有毒のスイセンの葉に似ているので、注意が必要です。ニラと同じく、全体に独特の臭みがあります。
観察ポイント⑨
道が細く、自動車が二台通れるくらいの幅しかありません。この周辺ではコシアキトンボが見られました。コシアキトンボは全身が黒く、腹部の白い柄が空いているように見えるため、この名が付けられました。また、ここでは、森林を拓いて設置された太陽光パネルが見られます。今後の社会に必要であるものの、豊かな自然を壊すことに抵抗のある人もいます。この場所は、自然について考える良いきっかけになりました。
観察ポイント⑩
山辺高校の手前にある並松池には、ウシガエルやウマビル、ダイサギ、アオサギなどの様々な生き物がいます。並松池の周りは田園が多く、育った稲の近くで羽を休めるサギはとても風情があります。池の中でなく鳴くウシガエルは、警戒心が強いため姿を見ることはできませんでした。向かいの田んぼでは、アマガエルやトノサマガエルが生息しており、私たちが観察した時期はカエルが変態する頃で、まだ尾が生えたままのカエルも少なくありませんでした。また、田んぼの中で見られたウマビルは、毒々しい色をしていますが、血を吸わないヒルです。山辺高校の周りでは、多くの自然が見られました。地域の方々からは、キツネやシカ、キジなどを見たという情報も聞きましたが、実際には見られませんでした。豊かな自然と人間の共存は、今後の大きな課題になると感じました。
以上で、夏の山辺高校周辺マップは終了です。