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受賞作品一覧
環境大臣賞
第33回 団体の部

田辺中学生物部 鳥の巣半島 休日の観察コース(2016年版)

田辺中学校生物部 黒澤 裕貴(部長)、他17名(和歌山県和歌山県立田辺中学校一年~三年)

和歌山県
和歌山県和歌山県立田辺中学校
中学校3年生

全体説明

僕たちは休日に学校から約6kmの鳥の巣半島へ自転車で出かけて、生き物を観察しています。鳥の巣半島は昨年から吉野熊野国立公園に含まれました。複雑な海岸地形で、溜池がたくさんあります。里山や海岸の多様な生物がたくさんいて、なかには絶滅危惧種の生物もたくさんいます。毎月観察する池は三ヶ所です。

生物部で溜池をすべて調べると、外来種のアフリカツメガエルが23ヶ所の溜池で繁殖していることがわかりました。アフリカツメガエルの胃からは、エビ、ヤゴ、ゲンゴロウ、マツモムシの仲間などの在来生物が見つかります。僕たちは、地元の生物研究者や環境省のご指導で、アフリカツメガエルの効率よい駆除のしかたを研究しています。

毎週、穴子網という罠をかけて回収しています。しかし、オタマジャクシや幼体は捕まえるのが難しいです。研究を続けて鳥の巣半島の生物多様性を守りたいと思っています。

観察ポイントごとの説明

ポイント① 駐車場周辺

鳥の巣半島には漁師さんが多く、かつては船で移動することが多かったため、農作業用の自動車道はありますが、半島を一周するには自転車か軽自動車でないと難しいです。この駐車場は、すぐ近くにある平和公園のもので、近くに海に面した洞窟があり、戦争の時には人間魚雷が格納されていたそうです。先日、洞窟からコウモリが飛び立つのを見ました。駐車場の周辺には、絶滅危惧植物のタイキンギクがたくさんあります。

ポイント② 放棄水田

昔水田として使われていたところで、道が急に細くなっています。今ではガマが茂っています。この放棄水田から流れてくるコンクリートの水路には、クロベンケイガ二がたくさんいます。アカテガ二は溜池の堤防や水田わきの水路などに大きな穴をあけて棲んでいます。溜池では堤防に穴をあけるので、農家の人はアカテガニが嫌いなようです。

ポイント③ 道沿いの崖

細い自動車道は坂を上がって崖の切通しを通ります。崖が崩れないように金網で覆われていますが、その隙間に、食虫植物のモウセンゴケやコモウセンゴケが生えていて、通る時には毎回観察します。冬に葉は真っ赤になります。夏には白やピンクの綺麗な花も見られます。金網に守られて、シラン、センブリ、キキョウ、キスゲ、リンドウなどが綺麗な花を咲かせます。

ポイント④ 道下池

道の下に溜池があります。堤防には、アブラガヤが茂り、池の中にはミズオオバコやオモダカが白い花を咲かせます。田の畔にはヒヨドリバナの花も咲きます。この溜池は、雨水と崖からしみ出してくる水だけで溜まるようです。初夏の夕方、トノサマガエル、ヌマガエルに混じってシュレーゲルアオガエルの鳴き声がします。シュレーゲルアオガエルは、大きなアマガエルのようです。

ポイント⑤ 道沿い

道の脇には、紅白のシラン、センブリ、ササユリ、キスゲ、キキョウ、タカサゴユリなどの花が見られます。道沿いは、地域の人が定期的に草刈をしてくださるので、明るく、いつも快適です。

内之浦湾は、2009年にマッコウクジラが迷い込んでニュースになりました。この辺の浅い砂地には、アマモやコアマモが生えているので、海が荒れた後には、海岸にたくさん流れついています。

ポイント⑥ ザリガニ池

鳥の巣半島の溜池のなかで、唯一ザリガニがとれる濁った池です。ウシガエル、アフリカツメガエルもいます。沈んだ罠に入ったアフリカツメガエルは空気が吸えないので死んでしまいます。それをアメリカザリガニが食べるので、罠のなかは恐怖の状態です。農家の人に聞くと、黒いパイプで山を超して向こう側の水田に水を送っているそうです。

ポイント⑦ 北鳥の巣

北鳥の巣の溜池では、アフリカツメガエルはとれないところがあります。昔、金魚を飼っていた池もあり、罠をかけるとフナに似ているけれど、目が大きくて黒い不思議な魚がかかります。大きなドジョウもいます。早春、溜池からの水路でカスミサンショウウオの卵もみかけました。ここから、南方熊楠が自然保護運動をした神島がすぐ近くに見えます。罠をかけたら、ロープを動物に囓られました。

ポイント⑧ 竹やぶ池、かしま池

アフリカツメガエルが最初に見つかった池です。2009年に内山りゅうさんが潜って幼生を捕まえました。幼生は、夏のあいだ、空気を吸いに頻繁に水面に空気を吸いにきます。僕たちが使っている罠の目は荒いので、オタマジャクシは滅多に入りませんが、ボートに乗って網ですくうことができました。沈めておいた罠に卵が付いていたことがあります。近くのビワ畑でアライグマの糞を見ました。カンコノキやハマボウも生えています。

ポイント⑨ フキ池

梅畑の奥に溜池があります。ここの水は、黒いパイプで自動車道の上を超えて、つぼ池まで引かれています。この池は、オタマジャクシがたくさんいるので、夏はひっきりなしに水面に空気を吸いに来る姿が見られます。黒いパイプはサイフォン式で高い溜池から水田へ水を送り出し、その流れにオタマジャクシや幼生も乗って移動します。でも、水田にはサギなどの鳥がいて食べます。梅畑の下のフキ畑には、ヤマガカシやマムシもいます。

ポイント⑩ 長池

鳥の巣半島で一番大きな池です。いつもマガモ、ゴイサギ、ダイサギ、アオサギ、トビなどがいます。地元の人に聞くと、「鳥の巣」という地名は、トビの巣がたくさんあったからだそうです。9月、堤防の工事のために水を抜きました。ウナギ一匹と、アフリカツメガエルがたくさんとれましたが、取りきれなかったものは、サギやイタチが食べてくれたようです。泥の上に鳥や動物の足跡がたくさんついていました。

ポイント⑪ 四角池

コンクリート製の溜池です。アフリカツメガエルがいますが、昔、この池ではドジョウが飼われていて、近くの漁師さんが、タチウオを釣るのに活き餌としてドジョウを使っていたそうです。その名残で、いまでは大きなドジョウが罠にかかります。

堤防には、ハルリンドウ、ミヤコグサ、ツリガネニンジンなどが咲いていて綺麗です。

ポイント⑫ ゴルフ場跡

許可をもらって、ゴルフ場跡へ行きました。かつての芝生は草丈が高くなり地面を覆いつくして、溝がわからないのではまります。広くて明るい草原の上を、マイコアカネ、コシアキトンボ、シオカラトンボ、ギンヤンマなどたくさんのトンボが飛んでいきます。溜池でアフリカツメガエルが増え続けると、ヤゴが食べ尽くされてこの風景が見られなくなるかもしれません。ユーカリの大樹や、大きな松ぼっくりがなるシーダーマツが植えられています。

【定点観察A ザリガニ池】

2014年10月から毎月、罠を一個仕掛けています。餌は、鶏の生レバーを冷凍したものを切って使っています。昨年、一回の罠にアフリカツメガエルが18匹、アメリカザリガニが101匹、ミシシッピアカミミガメが2匹入ったことがあります。しかし、毎月続けて罠をかけているので、アフリカツメガエルもアメリカザリガニも少なくなってきました。アフリカツメガエルは最近獲れないこともあります。

この池は、自動車道路沿いにあり、手軽に生物を放せるために、このように外来生物が多くなったと考えられます。ブラックバスやブルーギルがいないことは、とてもよい事だと思います。アフリカツメガエルを退治するためにブラックバスを入れようという人がいますが、それはよくないことです。この池の水は山を越えてポンプで移動し、水田で使われているので、できれば綺麗な水であってほしいです。

【定点観察B 水抜き池】

この池も自動車道路沿いにあり、手軽に観察できるので、毎月罠を仕掛けてきました。今年の2月、池の持ち主さんの許可をもらって、池の水をすべて抜く試みをしました。この時は、和歌山県自然環境研究会や、環境省、田辺市、和歌山県自然環境研究室の方々にお手伝いいただき、泥のなかからクサガメやアフリカツメガエルを探しだしました。すべて捕獲したいと思いましたが、残念ながら、今年7月に一匹、罠にかかってしまいました。なかなか、全滅させるのは、難しいことがわかりました。でも、ほとんどいなくなっているので、これからも毎月一回、罠にかけ続けて、アフリカツメガエルがいない池にするつもりです。今年の春、この池でカルガモが雛を育てていました。池の周辺は草刈が定期的にされていて、ノアザミ、ハルリンドウ、ツリガネニンジンなど、たくさんの花が咲くので、毎回観察するのが楽しみです。

【より深い観察レポート】

定点観察C 道下池

この池も、道沿いにあり、毎月一回罠をかけ続けています。透明度が高く、田植えの時期には水田に使われていて、ほとんどの水が無くなります。アフリカツメガエルは、昨年の冬にほとんど獲れなくなりましたが、親が残っていたのか、今年の夏には、オタマジャクシが空気を吸いに水面に現れ、やはり罠だけでは全滅させるのは難しいことがわかりました。しかし、この池は他の溜池からの水の供給が全く無い池なので、辛抱強く罠をかけ続ければ、もっと減らすことができそうです。子ガエルは罠にかからないので、卵が孵る前に親を捕まえるほうが効果的です。

いまのところ、田んぼの周辺にはアマガエル、ヌマガエル、シュレーゲルアオガエルなど、在来のカエルがたくさんいるので、アフリカツメガエルが持っているというツボカビの心配は無いようです。夏には野生のヤマモモの実が落ち、地面が一面に赤くなります。

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