応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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佳作
第26回 中学生の部

ため池王国~寺田池の自然を求めて~

山本紗椰

兵庫県
賢明女子学院中学校
中学校1年生

全体説明

私の住んでいる加古川市は、昔から農耕用ため池が多く造られていました。寺田池は、892年頃平安時代に造られたと考えられています。水田の増加に伴い、一時は多くあったため池も、昭和になって、ライフスタイルが変わり、多くのため池が埋め立てられ姿を消しました。生活の柱だった田畑も家やコンビニに変わり、地域の自然は大きく変わりました。それでも、ため池から用水路へ田んぼへとつながる水の道は、野鳥やトンボ等、小さな命を育むライフラインとなっています。寺田池は、2年半の改修工事を終え、今年3月より地元の固有種を観察できるため池へと再生しました。改修前は、ミシシッピアカミミガメが多数群れ、ヌートリアも泳ぐ外来種にあふれた池でした。いつも何気なく見ていた生き物達でしたが、改めて人との共生を考えさせられました。100年後も変わらぬ生態系であるように、大切に見守ります。

観察ポイントごとの説明

(1)

 用水路にそった道や住宅地に囲まれた畑でハクセキレイをよく見かけます。タタタターと小走りに走りぬけ、尻尾をピッピッと下げる姿はとてもかわいいです。全長21cm。現在和歌山県が南限。チュンチュン、チュイチーチュイリーとさえずります。海岸や河口の砂地、川岸、水田、畑等、低地の水辺にいる鳥で地上を歩いて昆虫等をとります。橋の下、建物、木に集まってねぐらとします。加古川市内で、セグロセキレイもたまに見かけます。

 

(2)

 アスファルトに囲まれた住宅地をぬけて、五社大神社の石の鳥居をくぐると、明神の森と寺田池が見えてきます。明神の森は、できるだけ自然の状態で保全されているので、昼間も少し薄暗いです。カワラヒワは、時々家の近くでも見かけます。全長14.5cm、オリーブ褐色で、風切は黒く基底部が黄色いので飛ぶと幅の広い黄帯が出ます。キリリコロロチョンチョンジョーイとさえずり、独得の浅い羽ばたきで飛び回るかわいい小鳥です。

 

(3)

 林の中でヒヨドリを見つけました。全長27.5cm 。スズメよりずっと大きく尾が長めです。体色がグレーとほほが独特のエンジ色をしているのですぐわかりました。ピーヨピーヨと騒がしく鳴き、ツーイツーイと波のある飛び方をします。大層いたずら好きで、庭木のなんてんやもちの木の赤い実を全部とってしまったり、人を恐れないので、住宅地でもよく見かけます。カラス同様、畑のトマトや柿の実等つつき、あまり歓迎されていません。

 

(4)

 同じ林で単独のムクドリを見つけました。はぐれたのかもしれません。全長24cm。尾は短く、くちばしがオレンジ色なので目立ちます。夏から春には群れを作り、電線、大木等に並んでとまっているのをよく見かけます。キュルキュル、リャーリャーと騒がしく鳴き警戒声はギャーと鳴きます。ねぐらでは、何万羽という大群になり、ふんの公害が出ています。くさいので嫌がる気持ちもわかりますが、何とか共生していけないかと思います。

 

(5)

 林の中から、セミの協奏曲が聞こえてきます。これぞ夏の定番です。木は私達に、木影と涼しさをくれ、セミ達、生き物達には栄養と住む場所を与えてくれます。熊蝉のシャアシャアと鳴く声を聞きながら、ありがたいなーと思いました。熊蝉は、日本のセミ類中最大で、体長4~5cm。神奈川県以西の暖地に多く、真夏の暑い時に盛んに鳴きます。自然が減りつつある加古川市では、一本の木に沢山の熊蝉がついているのをよく見かけます。

 

(6)

 林をぬけて池の散策道に出ると、裏が畑になっていました。何をいかくしているのか、カラスがカーと鳴いています。近くで見るカラスは、口ばしもするどく、大きい事がよく分かります。全長50cm。私のお兄ちゃんは、電線の上に並んでいるハッカチョウが騒いでいるので見上げたら、カラスがハッカチョウをくわえて飛び去る姿を目撃しました。カラスは、鳴き声で仲間を呼び、学習効果も高いので、人里に住む野鳥の中で最強です。

 

(7)

 サギの飛んでいる姿は、本当に美しいです。サギは種類が多いですが、よく見ると大きさだけでなく足先の色が違ったり、微妙に青色が混じっていたりと意外と見分けられます。ダイサギは、夏と冬でくちばしの色が黒から黄へ変わり、夏羽は背からみの状の飾り羽が出て、首の下端の羽毛も長くなります。ゴァーッという鼻声で鳴きます。全長90cm。飛ぶ時は、長い足を身体にそわしてのばし、長い首はS字に折り曲げています。

 

(8)

 散策道と畑の間の用水路で、初めてアカガエルを発見。殿様蛙によく似ているのに色が赤茶で、ぴょんぴょんと素早く連続して飛びはね逃げます。泳ぎもうまく、じっと観察できませんでした。本で調べると「アオガエルと違い、指に吸ばんをもたないものが多い」とありました。大きさは、大小様々です。同じ用水路に日本ザリガニやしまのあるハゼの様な小魚が多く見られました。残念ながら、魚の名前はわかりませんでした。

 

 

(9)

 寺田池で、バンの巣作りを観察しました。母鳥は水中に顔をうずめたかと思うと水草をくわえて巣へ運びます。オオバンも母鳥の後ろに4羽のひながくっついて泳いでいました。とてもかわいかったです。オオバンは、全長39cm。クイナ科の中では最も大きく太っています。幼鳥は親に似ず、羽もくちばしも茶色っぽい色をしているので、枯れ草にかくれると保護色になるのだと思いました。キョンキョンと甲高い声で鳴いていました。

 

(10)

 寺田池の中央よりやや東へ寄ったヨシの草むらで、二羽のアオサギが巣を守っているのか、ヨシの高さすれすれにはばたいている姿を見かけました。全長93cm。翼開長160cmの日本で最も大きいサギです。すっと水面に立つ姿は堂々としていて、飛んでいる姿は、黒とグレーのコントラストがくっきりと出て存在感に溢れています。飛んでいる時は、キャッと高い声で鳴き、地上ではゴァーという声で鳴きます。若鳥は足が少し黄色いです。

 

(11)

 ガガブタは、寺田池で観察されている浮葉植物の中でも奇重種です。一見ハスの葉のように見えますが、花は小さく白いかわいい花が咲きます。浮葉植物は、水の底に根をはらずに水中や水面にただよっている水草を言います。改修前、ヒシと共に多く生えていましたが、今は、ヒシも見られず、ガガブタも数が減ったように思います。これから頑張ってふえて欲しいです。

 

(12)

 寺田池下の用水路で、タイワンウチワヤンマを見つけました。用水路にそって、ギンヤンマやシオカラトンボ達とレースをくり広げています。ヤンマのヒューと飛ぶ速さに比べて、トンボはフワーと飛んでいるように見えました。タイワンウチワヤンマは、腹長54cm。腹の第8のふしに左右対象にうちわの様なものがついている所から名前がつきました。ヤンマとトンボの体形が異なるのがよくわかりました。

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