応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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受賞作品一覧
最優秀賞
第29回 中学生の部

明石海峡 人の街・鳥の道

大須賀詩織

兵庫県
神戸市立歌敷山中学校
中学校1年生

全体説明

私の住む街、兵庫県神戸市垂水区は、明石海峡に面していて、六甲山と淡路島を結ぶ渡り鳥の経路になっています。古くは、百人一首に「淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝ざめぬ須磨の関守」と詠まれています。でも、今もこの明石海峡に、私が確認できただけでも年間百種を超える鳥たちが飛来していることは、あまり知られていません。ここで紹介する「明石海峡 人の街・鳥の道」は、全て人工の街です。昔の人がつくった古墳は見学用に整備され、その周辺は、すき間なく住宅やマンションが立ち並び、海を埋め立てて、人工の砂浜や大きな商業施設をつくり、植樹して森もつくりました。残された手つかずの自然は海と空だけです。開発が進むこの街で、十年後も百年後も人と鳥が仲良く暮らしていることを願いながら、私は毎朝登校前の鳥の観察を4年以上続けています。歴史ある明石海峡の人工の街で、それを利用しながらたくましく生きる鳥たちを紹介します。

観察ポイントごとの説明

1. 兵庫県最大の前方後円墳である五色塚古墳は、春夏はヒバリやコチドリが繁殖し、冬はツグミなども来る、自然に優しい文化財です。繁殖中のヒバリは人間を警戒して、ホバリング(飛びながら空中で停止すること)しながらにぎやかにさえずります。秋から春、周辺でモズの姿が見られ、枝にバッタなどをさした、「モズのはやにえ」を見つけることもあります。また、野生のタヌキが古墳の溝を道として使っています。

 

2. 五色塚古墳の北西にある竹林は、冬から春にかけて、ムクドリのねぐらとして使われています。二千羽を超えるムクドリが日の出の頃に一斉に飛び立ちます。また、日没のねぐら入りもすごい光景です。ムクドリをねらうオオタカがここにすみついたこともあります。この竹林には、秋にコムクドリも飛来します。

 

3. アジュール舞子の浜近くの松林には、一年中カワラヒワがいます。「キリキリコロコロジュイーン」と鳴きながら、松ぼっくりにぶら下がって松の実を食べたりしています。夏には松の枝に巣を作って繁殖するため、巣立ったばかりのヒナも観察することができます。また、小さなキツツキのコゲラの姿もよく見かけます。

 

4. 秋、アジュール舞子沖の明石海峡の海上をヒヨドリの大群が渡っていきます。「ヒーヨヒーヨ」と鳴きながら、明石海峡大橋に沿って、淡路島へ向かって波間を飛んでいくヒヨドリたちは、多いときには、千羽以上の群れになって渡ります。ヒヨドリをねらうハヤブサの姿も見られます。この光景は、百人一首が詠まれる前からずっと続いてきた、明石海峡の秋の風物詩です。

 

5. アジュール舞子の防波堤には、いつもウミネコやトビがとまっています。ウミネコは大群になって、全部が同じ風上方向を向いてとまっていて、時には千羽以上いることもあります。トビがウミネコの大群を脅すと、一斉に飛び立って、上空はウミネコだらけになります。ウミネコが繁殖地に移動して留守の5月には、防波堤周辺でコアジサシの大群が、上空からダイビングして、魚をとっています。

 

6. アジュール舞子は、人工の砂浜ですが、百人一首にも詠まれた千鳥がいます。シロチドリは夏の繁殖期以外いつもいます。数年前、私はここで釣り糸にからまったシロチドリを助けたことがあります。私は毎朝、鳥を観察しながら、落ちている釣り糸を拾っていますが、いくら拾ってもなくならないのは悲しいことです。春や秋には、チュウシャクシギ、キョウジョシギほか、いろいろなシギが渡りの途中でここに立ち寄ります。

 

7. アジュール舞子の釣り場には、釣り人が捨てる魚をもらいに、アオサギがいつも待ち構えています。時には、アオサギが自分で大きな魚をつかまえて、のどに詰まりそうなようすで無理やりのみこもうとしていることもあります。その姿は面白くて目を離せません。

 

8. 垂水温泉は、埋め立て地につくられた人工の温泉です。その屋根には、いつもイソヒヨドリが陣取って「ホイピーチョイチョイツツピーコー」とさえずったり、ハクセキレイとケンカをしています。また、温泉のあたたかい蒸気が出る排気塔にとまっていることも多く、そこにイソヒヨドリがいないときは、ハクセキレイやハシボソガラスがとまっていることもあります。

 

9. ラグーンは柵で囲まれた海水の池です。魚がたくさんいるのでアオサギをよく見かけますが、カワセミが来ることもあります。春夏はラグーンわきの砂地でコチドリが繁殖します。繁殖中のコチドリはケガをしたふりをして歩く演技をします(擬傷)。演技派コチドリを見たらすぐにそこから離れましょう。近くに卵があったりヒナがいたりするからです。卵やヒナを守ろうとする親鳥の姿に、鳥にも愛情があることが感じられます。

 

10. 砂利が敷かれているマリンピア神戸の駐車場には、小さな虫がいるので、いつもハクセキレイが虫を追いかけて歩きまわっています。また、毎年春から夏には、コチドリがこの駐車場に卵をうんでしまい、車や人に卵を踏まれるといった悲しい出来事が繰り返されています。

 

11. OURの森は、阪神淡路大震災後、阿波(徳島県)から寄付された木々を植えてつくった森です。春や秋には、明石海峡を渡るさまざまな種類の鳥に出会えます。南へ渡る前のアオバズクが来たこともあります。木々の枝に、キジバトやヒヨドリが巣を作ります。冬には、ピラカンサの実にジョウビタキやツグミ、ナンキンハゼの実にキジバトやムクドリ、外来種のハッカチョウ、サザンカの花にはメジロの群れが来ます。

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