受賞作品一覧

歴史と自然がいっぱい 明石公園を散歩

最優秀賞
戸田百香
兵庫県
兵庫県立大学附属中学校
中学校2年生
第27回 中学生の部

全体説明

明石という町に生まれ、幼い頃から身近で親しみ深く、遠足や花見、夏祭りに菊花展等四季を通して色々な美しい顔を見せる明石公園は私の大好きで思い出いっぱいの場所です。

 国の史跡、明石城跡を整備した歴史公園で坤櫓と巽櫓は一九五七年に国の重要文化財に指定されていて平山城ではあるけれど、正面から見るとそれは凛とした姿です。戦災からの復興で、二〇〇〇年に城跡修復が完了し、今まで以上に楽しめる公園になりました。

 明石城を築城した小笠原忠真を始め一七代にわたる歴代城主は、今の皆に愛されるこの明石公園を嬉しく思っているかもしれません。私自身も、歩けば緑に包まれてたくさんの生き物に出会い、鳥のさえずりにセミの声、すべてが心地良く、家族で花見をした事や遠足での学習、陸上競技会のマラソンで池の周りを一生懸命走った事、どれもいい思い出ばかりです。大切であり、これからも思い出と共に守るべき場所だと思っています。

 

観察ポイントごとの説明

(1)

 この歩道を通るとまず駅前で車が多いにもかかわらずハトがたくさんいるのに驚きます。そして海が近いので、カモメもすぐ近くまで飛んで来ます。右手の堀には、みずみずしい柳の葉の間から白鳥が優雅に泳いでいます。少し緑の影になった水面を見ると、まるで宝石箱のようにニシキゴイが群れています。手前の石段ではたくさんのカメが気持ち良さそうに甲羅干しをしています。いつもこの地点でなぜだか心がワクワクします。

 

(2)

さあ、立派な灯籠を過ぎ、高い石垣の間を進むと、正面の大きな木々の上に明石城の櫓がパッと目に入ってきます。景色がひらけたと同時にシャンシャンと波のようなセミの声が耳に響いてきました。見ると木の下の方にはぬけ殻がぎっしりありました。上では誇らしげにセミの合唱です。芝生広場はいつもきれいで、小さな子達がボールで遊んでいます。木陰のベンチでは、散歩中のおじいさんが涼しそうに休んでいます。

 

(3)

 そこには美しい武蔵の庭園が見え、木から木へセキレイが忙しく飛び回っています。その高くそびえるクスノキは、昔からずっとこの場所でたくさんの思い出を見守っているのだと思います。櫓を見上げると、石垣がせまって来るような感じになって、石の一つ一つにとても存在感があります。この石垣や櫓も阪神淡路大震災で被害を受けましたが、修復されて今、こうやって美しく見れる事をとても嬉しく思っています。

 

(4)

 シャンシャンからジャンジャンとセミの声が一段と大きくなって来ました。奥の野球場は、高校野球の全国大会予選が行われます。試合の時は、応援の声や選手のかけ声が、一体となって響きます。大きな木々におおわれた中からワーッという声援が聞こえると、びっくりする時もあります。毎年、この大きな声援の中、熱い戦いが繰り広げられています。だから夏の大きなセミの声はもしかして甲子園への応援かもしれません。

 

(5)

 陸上競技場の横を通ると、中では大きな芝刈り車できれいに芝が整えられていました。スポーツ施設が充実しているので、学校の行事や、大会などで利用する事が多く、その時時に食べたお弁当のおいしかった事を思い出します。この道は広くて、鳥やチョウをよく見ることができます。ジョギングする人もいて、木の影の方を選んで走っています。花壇にはいつもきれいな花が植わっていて、その花に虫達が楽しそうに集まります。

 

(6)

 目の前の池には、動物の形のボートに乗った親子が見えました。波のない鏡のような池には、カモ達がスイスイと並んで泳いでいます。この池の周りは、春になると桜が満開になり、池にもその桜が映ってそれは美しいです。家族で花見に来て、このうすピンクのレースを広げたような風景を見るたびに幸せな気持ちになります。桜の木は病気に弱いらしく、この美しい花を咲かせるまでには、たくさんの人の努力があると聞きました。

 

(7)

 陰に入ると、ひんやりと少し風を感じます。秋には紅葉が楽しめ、どんぐり拾いをよくしました。今はまだ青く小さいどんぐりの実も、秋にはきっと大きくなってコロコロと次の芽を出そうと転がるでしょう。

 池のカメやコイは、とても人に慣れていて池の縁に立つと泳いできます。いつも誰かがエサをあげているのでしょう。パクパクとするコイの口がとてもかわいらしく、カメもコイを押しのけて我先にと寄って来ます。

 

(8)

 日の当たらない涼しい木のトンネルが続いています。時々、スーッと風が吹いて、木の葉がサラサラと揺れます。セミの声も少し鳴いては、ピタッと止みまたしばらくすると鳴き始め、不思議なリズムを聞きながら、少し湿った木の根もとを見ると、じゅうたんのような、ビロードのような、きれいなコケがありました。陰で色彩のぼやけている中に、深くて濃い、鮮やかな緑の塊は、そこだけ小さい芝生の広場のようでした。

 

(9)

小川があり、覗いてみると小さな魚やオタマジャクシがたくさんいます。底には少し泥があって、その泥をオタマジャクシが口に入れたり、出したりしています。きっとこの泥には栄養分があってオタマジャクシは、泥から栄養を取っているのだと思います。田んぼで見るオタマジャクシより大きくて黒い斑点があり、ずんぐりと丸い体をしています。おそらくトノサマガエルになると思うのですが、近くにはいませんでした。

 

(10)

 突然、大きな鳥が飛び立ちました。アオサギです。遠くから見る事はありましたが、目の前で見たのは初めてで、思ったより大きく広い翼でした。小川には小魚がたくさんいたので、長いくちばしで食べていたのでしょう。頭の黒いのが目立ちました。意外ときつい顔をしていて、目も少し鋭く感じました。兵庫県にはサギが多く生息しているという事は、それだけ自然が豊かで、エサがあるからだと思います。

 

(11)

 チチチーと鳥の声が聞こえます。明石公園には野鳥も多く、春にはメジロやウグイスの声も聞こえてきます。最近スズメが減っていると聞いた事がありますが、ここにはたくさんのスズメに会います。エサがあるからでしょう。街中では住みにくくなっている原因が色色あるのだと思います。鳥達にとってこの公園はオアシスのような存在なのでしょう。木のすき間をぬってスズメ達はあっちこっちと飛んで遊んでいるようです。

 

(12)

 堀の上をシオカラトンボが上下にホバリングしています。尻の先の黒が、動く度に矢印のように見えます。きっとメスを見つけて堀に卵を産みつけるのでしょう。ヤゴは見ていませんが、もしかしたらこの堀でヤゴから成虫になり、飛び立ったばかりかもしれません。

 突然水面に動きがあり、シュッとトノサマガエルが、音もたてずにジグザグに泳いでいました。その動きはとても早く、機械で動かしたような正確さでした。

 

(13)

 上り下りをゆっくりと歩き、すぐ近くに櫓を見ながらひと休みして、しばらくベンチに座りました。今年は、クモの巣がとても多くて、ベンチの横の木にもたくさん巣がはられていました。ひとつの巣に中身のないカマキリがひっかかっていました。食べられた後なのでしょう。その下に、小さなカマキリがクモの巣にかかった蚊をかかえていました。小さな世界でも弱肉強食があり、そうやって命が回っているのだとおもいました。

 

(14)

 出口近くの池で、水がプツプツしているのが見えて、目を凝らして見ると小さなヌマエビがウジャウジャとうごめいていました。少し気持ち悪いけど、水温が高くなって苦しんでいるように見えました。体が透けているので何匹くらいいるのかわかりません。

 この小さな生物達は、環境の変化にも必死に耐えて、生きるための力をふりしぼっているのではないかと思うと、「がんばれ」と心の中で応援せずにはいられませんでした。

 

(15)

 外の堀へ出ると道の照り返しの熱さが、ムワッと押し寄せてきました。今まで歩いてきた涼しい木のトンネルとはまるで別世界のようです。外から見る明石公園は、大きな木です。この森の中で、たくさんの木や花、鳥や虫が育ち、その美しい自然の営みを私達は見て触れて、その力強さや優しさで心をいやされています。

 ワクワクしたり、ホッとしたり、元気の出るこの散歩は最高でした。