応募期間

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受賞作品一覧
優秀賞
第40回 中学生の部

里山の夏草

卯山愛菜

東京都
明治大学附属中野八王子中学校
中学校3年生

全体説明

今回紹介する観察路は、幼少期から祖父母と何度も歩いた思い出の散歩道です。祖父母の家は、大阪府の南端に位置し、和歌山県との県境にある岩湧山という山の麓にあります。今年の夏は、猛烈な暑さが続く中、祖父母の家に帰省し、植物に詳しい祖父母と楽しく会話をしながら草花を観察してきました。祖父母の家から出発し、岩湧山の麓を通って家に帰るコースです。この散歩道は、周りに民家がほとんどなく山に囲まれた静かな場所なので、近隣のご老人達の絶好の散歩道になっています。さっそく、暑さも和らいだ夕方から、虫眼鏡とスマホを持って自然観察に出発しました。この自然観察には、植物が大好きな祖父母が同行してくれたので、私が知らないような小さな草花まで観察することができ、その数の多さには驚きました。里山の道端に咲く沢山の草花(観察1~18)の溢れる魅力を紹介していきたいと思います。

観察ポイントごとの説明

<1 ヤブカラシ>
歩き始めてすぐ、交差点のフェンスで見つけたヤブカラシは、祖父に言われるまで気づかないほどパッと見では草花だと分かりづらい植物でした。ヤブカラシは藪を枯らしてしまうほど繁殖力が強いことからこの名前が付いたそうで、他の植物にとっては嫌な植物です。しかし、虫眼鏡でよく観察すると淡いピンク色の小さくてかわいい花が咲いていました。容姿と繁殖力のギャップに驚きです。

<2 ヒヨドリバナ>
散歩道を歩いて十分ほど経つと畑が見えてきます。今の時期はオクラやナス、里芋、ピーマンを育てているようです。ふと、石垣の脇に目をやるとヒヨドリバナが咲いていました。多くは咲いておらず、2、3本でしたがしとやかに咲く白い小さな花の集まりはひと際目立っていました。ヒヨドリバナはヒヨドリが鳴く頃に花が咲くため、この名前が付いたそうです。

<3 ノカンゾウ>
2から少し歩くと、百合の仲間のノカンゾウを見つけました。しかし、残念ながら観察時に見たノカンゾウはすでに枯れていて、鮮やかなオレンジ色の大輪を見る願いは叶いませんでした。ノカンゾウは食用や薬としても使われています。利尿作用や解熱作用、むくみや不眠にも効果が期待されていると言われているので、今度祖父母と食べてみようと思います。

<4 ヒメジオン>
さらに畑を進んで行くと、草むらに東京の街中でもよく見かける植物に出会いました。それはヒメジオンです。ハルジオンとよく似たこの花はどんな地形や気候にもうまく対応していること、この岩湧山の麓で発見したことにより、改めて感じました。ヒメジオンは、別名ビンボウグサとも呼ばれているそうですが、見た目のイメージとは異なるこのネーミングに驚きました。

<5 クサノオウ>
クサノオウは私も初めて見る草花で、外見では特に目立った特徴はありませんでした。高さは30センチくらいで祖母の教えにより、茎を切ってみるとなんと黄色の液体が出てきました。この黄色い乳液のような液体は毒性があり、不意に触れるとかぶれてしまいます。ですが、古くから薬としても使っていたようです。クサノオウは季節を過ぎているので、花を見られたことにとても感激です。

<6 シュウカイドウ>
だんだんと山深くなり始めた頃、二つの分かれ道に辿り着きます。片方は岩湧山の頂上まで続く登山道ですが、私たちが通るのはもう片方の道です。その分かれ道では、祖父母一押しの花、秋海棠が咲いていました。秋海棠の花びらは上下が大きく、左右が小さいことが特徴です。私はそんな秋海棠がまるで小さなピンク色の妖精のように見えました。秋海棠の葉はとても大きく、葉脈が集まる部分は、花びらと同じピンク色に染まっていました。緑の葉にピンク色が映えるとても美しい花です。今回の散歩道とは異なりますが、近くにさらに秋海棠が綺麗に見えるスポットがあるので紹介します。それは「岩湧寺」という場所で、岩湧山に続く登山道を歩いていくと辿り着きます。岩湧寺では初秋になると秋海棠の群生が一面に咲き誇る光景が見られます。その光景は圧巻です。祖父母はその時期になると毎日岩湧寺まで足を運ぶそうです。

<7 コマツナギ>
緑が生い茂った山の斜面を眺めていると、大きな葉の中から顔を出すように咲いているコマツナギを見つけました。コマツナギは花が下から順に咲くという独特な特徴を持っています。私が見つけたコマツナギは下の方だけが咲いており、まだ寿命は長いようです。コマツナギは「駒をつなぐ」と書き、様々な説がありますが一説では、馬を繋ぐほど茎が丈夫という意味だそうです。

<8 マツヨイグサ>
7から少し歩いたところに、黄色一色の花が目を引くマツヨイグサが咲いていました。マツヨイグサはこの辺りではよく見かける花の一つだそうです。また、花の寿命が一日しかない一日花なので見られる場所はいつも同じではないそうです。そんなマツヨイグサは葉の筋が白いという珍しい特徴を持っていました。本当かなと疑っているあなたは、是非見つけたら確認してみてください。

<9 センニンソウ>
散歩道も中盤にさしかかってきた頃、不思議な形をした植物に出会いました。名前はセンニンソウという植物で、仙人の白い髭のような綿毛が生えていることからこの名前が付いたと言われています。近くに寄ると、ほのかに甘い香りがして思わず「いい匂い」と声に出してしまうほどでした。ですが、センニンソウは毒性があるため、甘い匂いに誘われて手を出さないように気をつけてください。

<10 カワミドリ>
続けて、少し枯れかかったカワミドリを発見しました。茎が横に倒れてしまっていて花も残りわずかな状態でしたが、懸命に生きているように感じられました。カワミドリの花を虫眼鏡で拡大すると、紫色でラッパのような筒状の形をしていると分かります。また、花の中には黒い小さな虫が入っていて、蜜を吸っているのか、休んでいるのか、どっちだろうと考えたりもしました。

<11 ヤマブドウ>
さらに先に進んだところには、ヤマブドウがありました。ヤマブドウは一粒が小さく、この時期はまだ緑色の堅い粒でした。葉はブドウ園の葉と同じ形で「ヤマ」とついているけれど、普通のブドウと特徴は変わらないようです。ヤマブドウは取ってきたものを花瓶に挿し、観賞用としても人気があります。祖父母のオススメは玄関に飾ることだそうです。玄関が一際映えること間違いなしです。

<12 ヒメトラノオ>
事前に散歩道に生えていそうな植物を調べていた時、高地で良く見られる植物の一つとして掲載があった、ヒメトラノオを発見しました。先端が曲がっている様子はまさに虎の尾のようでしたが、私は野菜のオクラにも少し似ているなと思いました。また、紫に青が混じったような花の色は、絵の具では作り出せない素敵な色でした。

<13 アカメガシワ>
散歩道が緩やかなカーブにさしかかった時、山の斜面から突き出た一本の木が目にとまりました。祖母に聞くとアカメガシワの木だと分かりました。茎が紅色をしているのがとても目を引きます。また、すでに黒い実がなっているアカメガシワもありました。この実は鳥たちによって運ばれ、アカメガシワの強力な生命力によって、どんな場所にも生え出してしまうそうです。

<14 クズ>
クズはこの場所だけに限らず、散歩道のどこでも見ることができます。私たちが自然観察をした時期では、まだ花の開花は見られませんでしたが、あと二週間も経てば一斉に咲き始めるそうです。現在、つる性で繁殖力が強いクズが野山を覆い、他の植物が枯れてしまうという問題が発生しているそうです。手の届く範囲でクズを除去していくことがクズの繁殖を抑えるため、大切になるそうです。

<15 ダイコンソウ>
散歩道から外れた細い脇道の土手で黄色の可愛いらしいダイコンソウを見つけました。丈はおよそ50センチメートルで、日当りの悪い陰に生えていました。なぜなのか気になり、後日調べると、ダイコンソウは湿気た場所に育つ山野草であることが分かりました。乾燥した場所を好まないのなら、納得です。また、球型の果実はひっつき虫になり、種を運ばせるようです。

<16 キンミズヒキソウ(金水引草)>
この辺りには2、3軒、民家が建っていて水田で米作りをしています。この時期には、緑色の稲の背がかなり高くなっていました。そんな田んぼを眺めていると、キンミズヒキソウを見つけました。キンミズヒキソウは祖父母が散歩をしていても、中々見ることができないレアな植物だそうです。水引とはご祝儀袋に巻き付ける紐のことで、金色の水引に似ていることが名前の由来だそうです。

<17 カラスウリ>
坂道をかなり下ってきた頃、白いレース状の花が特徴のカラスウリに出会いました。カラスウリの花は夜から朝方にかけて開花します。そして太陽が出るとすぐしぼんでしまうため、花が完全に開いた状態を見るのは困難です。ですが、夕方から自然観察に出かけたので、ほとんど開花に近いカラスウリの花を見ることができました。珍しい花との出会いがより草花を好きにさせてくれました。

<18 ツユクサ>
散歩道も終わりが近づき、団地が見え始めた頃、何気なく垣根を見ると爽やかな青さを放つツユクサを見つけました。初めて間近でツユクサを観察すると、花は薄緑の葉の中から出ていることに気づきとても驚きました。

このように、今回の自然観察は驚きと発見の連続でしたが、祖父母と共に楽しい時間を過ごすことができました。来年は今年見つけられなかった植物を発見してみたいです。

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