応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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入選
第39回 中学生の部

片倉城跡公園~自然と歴史をたどって~

成瀬俊太郎

東京都
明治大学付属中野八王子中学校
中学校2年生

全体説明

片倉城跡公園は、小学校の遠足で何度か行ったこともあり、自然と歴史をたどれる公園で す。高台からの眺めも良いため、家族でも散策へ時折り訪れる場所です。

今回の自然観察路コンクールは、1972年に開園した片倉城跡公園を紹介します。

北は湯殿川、南は兵衛川、東側は国道16号線、南側を走るJR横浜線に囲まれた区域で、散策していると、横浜線の通過する電車の音が、ゴォーッと聞こえてきます。

標高は110m〜144m程度で、面積は約6haに及び、北側の数箇所に湧水があります。公園にはその湧水を生かした沼・菖蒲田・水車・水田などがあり、動植物、昆虫にも数多く恵まれ、四季折々の様々な自然に親しめます。

丘陵地の雑木林の遊歩道を歩くと、心地良い水流の音、昆虫たちや鳥たちの元気な羽音、その音色やさえずりが聞こえてきて、生命の豊かさに惹きつけられます。

これらの十か所以上の自然について、順番に紹介していきたいと思います。

 

観察ポイントごとの説明

1)コサギ、シジュウカラ

ガァー、ギャウと聞こえてきたのは、コサギです。真っ白な体に黄色い靴下が目を引きま す。クチバシは黒色で、足は黒色ですが、指の部分が黄色なのがオシャレでした。 ツツピー・ツツピー、地鳴き(さえずり以外の声)も、ジュクジュクジュク、と聞こえてきたのは、シジュウカラです。胸元の黒いネクタイがビシッと決まっていてカッコ良いです。体長は、ちょうどスズメくらいの大きさでしょうか、白い頬が特に目立っていました。

 

2)アヤメ、菖蒲

アヤメの名の由来は、黄色い部分にある模様を、織物の織目、「文目(あやめ模様)」(綾 目模様)に見立てた名前だそうです。高さが30〜50cm程で、まっすぐな姿が潔かったです。
菖蒲は、アヤメとよく似ていますが、見分け方は、花びらの付け根をよく観察すると判 別でき、付け根の部分の模様が網目状であればアヤメ、黄色い模様が入っていたら、菖蒲と いうことがわかります。この菖蒲田は、咲き誇ると見応えがあります。

 

3)とんぼ沼のコイ、オニヤンマ、ドジョウ

とんぼ沼に生息しているコイやドジョウに、エサをあげることもできます。周囲には、トネリコ、エノキ、ナツグミの木があります。中でも、ナツグミの赤い実の色がキレイで、野鳥のヒヨドリやムクドリが、このナツグミをつまんでよく食べているようでした。気持ち良さそうに泳いでいるコイ、沼の中の土壌の中に顔を入れては、また顔を出すドジョウ、その上をゆうゆうと飛んでいるオニヤンマの姿が印象的でした。

 

4)はす沼のカワセミ、カルガモ

自転車のブレーキをかけてきしむ様な、チーッ、キッ、キッ、キッという声を発して現れたのは、背中から尾にかけて鮮やかなブルーのカワセミです。体に比べて、意外と尾っぽが短いなあ、体型もずんぐりとしているなぁと思いました。クチバシが黒く先端の黄色い色が目をひくカルガモの、グエー、グエッグエッという鳴き声も聞こえてきました。親ガモの後ろに、ぴったりくっついて泳ぐカルガモの子ガモが、可愛いかったです。

 

5)スイレン、コウホネ

コウホネと並んで咲くスイレンは、朝に咲いた花が夕方には眠るように閉じるため、咲いている様子が見れて幸運でした。また放射状に広がる花の姿から、古代エジプトで太陽のシンボルとされていて、神話などによく登場するそうで、幻想的な雰囲気を感じました。スイレンとハスの違いは、葉が円形で切れ込みがあり水面近くに咲くのがスイレン、葉が円形で切れ込みが無く水面より高い位置に咲くのがハス、ということがわかりました。

 

6)カタクリ、ヤマユリ

この公園はコナラ、エゴノキなどの雑木林の斜面に、カタクリが群生することでよく知られていて、カタクリが咲く頃は、一日数千人の人が訪れるそうです。
恥じらうようにうつむいて咲き、6枚の紅紫色の花びらが、優しく風に揺れる可憐な姿は、和やかな気持ちになります。
このカタクリの花は、夕方に閉じてしまい、ふっくらとしたつぼみの形に、またもどってしまいます。翌日、また日が昇ると、少しずつ開き始めます。雨の日や天気の悪い日には開かず、明るくなるのをじっと待っています。
ヤマユリは、茎に対して花が重いようで、少しの風でもすぐに揺れ動いていました。この花にはかなり強い香りがあり、調べてみると、花びらの付け根に、無色透明の香りを発する蜜があり、強烈な匂いを発するという特徴があり、この匂いで昆虫を呼び寄せて受粉させているということがわかりました。匂いには種を保存していくための大切な役割があることを学びました。

 

7)サワガニ、水車小屋

水中の粉状の泥の中で、上半身を出した赤い甲のサワガニを見つけ、その後、落ち葉や石の間、樹木を登ったサワガニを発見したので、水の中よりも陸地で発見される機会が多いのではないか、と思いました。湧水量の多い時期に水車小屋は、コトコトと音を立てて回り、その音のリズムが心地良かったです。「奥の沢」から導水されて廻る水車は、直径1.8mで、土台はベイツガ・建物はスギ、水車はヒノキで造られているそうです。

 

8)キツネノカミソリ、藤棚

キツネノカミソリの名の由来は、細長い葉をカミソリに見立てて付けられたと言われています。先端に鮮やかな赤オレンジ色の花が咲き、葉っぱの無い状態でにょっきりと伸びていたので、地面からいきなり花が咲いている様な気がしました。藤棚の花が垂れ、淡い紫色の花が咲く様子は、幻想的でまるで天然のシャワーを浴びている様でキレイでした。蔓が伸びると緑のカーテンにもなり、日よけとしての役割も果たしてくれて有り難いです。

 

9)住吉神社

公園内の山側の階段を左手に上ると、住吉神社が頂上付近に祀られています。室町時代初 期、片倉城主毛利師親(もろちか)が城の鬼門除けとして大坂住吉大社を勧請したのがはじまりと伝えられています。現在は片倉地区の鎮守として崇められています。この神社には嘉永四年(1851年)川幡元右衛門達が掛けた数学の扁額(横に長い額)があり、面積の計算方式もあり、当時は数の計算より、土地測量が大切だったことが窺えます。

 

10)リュウノヒゲ(ジャノヒゲ)、カブトムシ

細長い葉を「蛇」の「ヒゲ」にたとえ「蛇の髭ジャノヒゲ」と言われていて、和名は竜の口髭を連想させることから名付けられました。スーッと細長い葉が、地面を這うかのように覆いかぶさって茂っています。リュウノヒゲの葉は、通年を通して緑色をしている常緑多年草です。公園の雑木林は、クヌギやコナラが多く、カブトムシはその樹液を吸っているようです。このカブトムシを見つけた近くには、朽ちた木が横たわっていました。

 

11)クワガタムシ、ミンミンゼミ

クワガタムシを発見した近くにも、カブトムシの時と同様に朽ちた木があり、クワガタムシの幼虫がその朽ち木を食べて成長したのではないか、と考えられます。クヌギやコナラなどの雑木林は、公園内に至るところにあるので、その朽ち木は、クワガタムシやカブトムシの幼虫にとって楽園なのではないかと思います。
遊歩道を歩くと、あちこちから「ミーンミンミンミンミー」と、ミンミンゼミの鳴き声が聞こえてきて、にぎやかです。

 

12)ハクセキレイ、サルスベリと巣箱

チュチュンと澄んだ声で鳴いているのが聞こえるのは、ハクセキレイです。歩く度に、ぴょこぴょこと尾を振っている様子が可愛らしいです。スズメよりも一回り程大きく、ムクドリよりも小柄な印象です。
濃いピンク色の花が咲き誇っているのは、サルスベリです。このサルスベリの木の枝には、鳥の巣箱が設置されていました。園内を訪れる様々な野鳥のために、公園内のクヌギやコナラの木にも、いくつかの巣箱が設置されています。

 

13)本丸広場、空堀、二の丸広場、蝉の抜け殻、モンシロチョウ

片倉城は、源頼朝の家臣・大江広元の子孫、長井道広が室町時代前期に築城したようです が、詳細不明、扇谷上杉朝定により再築された深大寺城と築城の特徴が類似しているようで す。
本丸広場が主郭、住吉神社側が腰郭(こしぐるわ)、モンシロチョウが飛んでいた二の丸広場は南に張り出し、東部の主郭を守る形を成し、敵に対する守りを考慮した造りです。二つ の郭は空堀で繋がれ湧水があり、クヌギの木に蝉の抜け殻を発見しました。

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