受賞作品一覧

馬見丘陵 心が和む散歩道

優秀賞
田中友香理
奈良県
智辯学園奈良カレッジ中学校
中学校1年生
第30回 中学生の部

全体説明

私の住む町には、古墳や公園がたくさんあります。馬見丘陵公園は、毎週行く散歩道の一つです。整備されていますが、まだまだ自然は残っています。私は、その自然の中で、力強く生き続けている在来種を見守りながら観察をしています。十三個もある古墳は、歴史について深く考えさせられます。自然にも歴史にもふれることができるのが、馬見丘陵公園です。

公園をとり囲むようにして広がる田んぼ。小さな生き物の姿を昔ながらのあぜ道で観察することができます。

調整池は、住宅地の中にありますが、木や草が生えていて自然がそのまま残っています。フェンスがあるので双眼鏡を使ってじっと鳥がくるのを待って観察しました。

これから、古墳群に囲まれた豊かな自然の中に住んでいる生き物や植物と、心のリフレッシュができる散歩道を紹介します。

観察ポイントごとの説明

1. 陸地で尾を上下にふりながら歩いているセグロセキレイと出会いました。名前の通り肩や背が黒く腹が白くて、きれいです。陸地を歩いて昆虫をとったり、空中でとったりしていました。空中では波形を描いて飛んでいました。長い尾はえさをとるときにバランスをとることができます。「ツビビッビ」と、少し濁った感じの声で鳴いていました。道を歩いていると一日一回必ず出会える鳥でもあります。

 

2. 目がくりっとしていて、全身が黒いカイツブリが、池で気持ちよさそうに浮いています。そんなかわいい鳥ですが、くちばしが鋭いのです。「潜り専門の鳥」と呼ばれるくらい潜る時間が長いのです。計ってみると三十秒ほど潜っています。潜った所からでてくるのかと思ったら、遠い所からひょっこり顔がでてくるのです。四月から七月にかけて繁殖します。水辺近くの水生植物や杭に葉や茎を組み合わせ、水上に巣をつくります。

 

3. 散歩道に欠かせないのはあぜ道です。あぜ道は、田んぼの水辺をすぐ近くで見ることができるのです。しゃがんでのぞいて見るとタニシや「生きた化石」とも言われるカブトエビなどがいます。特定外来種であるスクミリンゴカイは、稲が小さい、田植えの時期に稲を食べます。七月ごろになると田んぼの周りに生えている雑草を食べるので一概には、害虫とは言えません。でも、補獲した時は、もとにもどさず、処分するようにしてください。

 

4. 「ケーン、ケーン」と畑の方からきれいな鳴き声が聞こえました。それは、緑色の金属光沢があり尾羽が長く、顔が赤い雄のキジでした。「ケーン」という鳴き声は繁殖期に鳴く声です。しばらく静かに見ているとカラスがキジを襲おうとしていました。でも、さすがにカラスよりキジの方が大きかったのでカラスはあきらめていました。ちなみに、キジは日本の国鳥です。

 

5. 巣山古墳の近くにある雑木林の中にはクヌギの木が数本立っていました。樹液のあまい香りにさそわれて木々の中に分け入ると、スズメバチがいました。慎重にクヌギを観察しました。カブトムシとコクワガタがブラシのような口を使って、樹液を吸っている光景を見ることができました。虫たちは、樹液を分け合いながら共存しているのです。人も虫を見習っておたがいに助け合い、生きていかないといけないと改めて感じました。

 

6. 池の上をロケット弾のように猛スピードで飛んでいる鳥がいました。それはコバルトブルーの華麗な羽をもつカワセミでした。池の中にはいる時、ホバリングをしてから、垂直に飛び込んでいました。カワセミはなかなか姿をみせませんが、私は今まで、三回以上見ました。カワセミは、町の中でも川の排水管の中に巣を作ってたくましく生きていける美しい鳥です。

 

7. 「うさぎとカメ」や「浦島太郎」にはカメがでてきます。昔から日本人に親しまれているカメ。ところが全国各地の水辺でくらすカメは外来種ばかり。よく見るのは、ミシシッピアカミミガメです。でも、この下池では、日本固有のクサガメを見ることができます。この環境を保ち大切にしたいです。他にも、ヤマトヌマエビが生息しています。このエビは半透明で背中に青色のすじが通っていて、きれいでした。

 

8. 奈良県なのに、なぜナガサキアゲハがいるのだろうと不思議に思いました。実は、地球温暖化で北へ北へと移動してきたのです。人間が必要以上に二酸化炭素を排出し、温暖化が進んでいるのです。大きな黒い羽をつかって優雅に飛びまわっていました。家のユズの木にも産卵し、きれいなナガサキアゲハが生まれました。成虫が大きいだけに幼虫も中指ほどの大きさでした。

 

9. 雑木林の近くで、「チンチロ、チンチロ」と鳴くうす茶色のマツムシがいました。体は、二センチメートル位でした。今は、木の上で鳴く中国原産のアオマツムシが多いです。アオマツムシは木の上であちらでもこちらでも鳴いています。マツムシもアオマツムシも、オスはメスにプロポーズするために一生懸命。はねをこすりつけてきれいな音色で音楽を奏でていました。

 

10. 池の近くに、ミモザの木があります。ミモザはオーストラリア原産で巨木です。しかも、人の手が加わっていないので十数メートルほどの巨木な木になってしまっています。春には黄色い小さな花をつけます。巨木に黄色の花が咲き乱れるとまぶしいくらい鮮やかに見えました。私の家の庭にも植えてあるのですが、剪定しても次から次と枝を伸ばして生命力を感じる木です。

 

11. ここは私の秘密の場所。公園の端にあるので、だれも行ったことがないかもしれません。そこには夢のような世界が広がっています。私の好きなスダジイをひとりじめできるからです。春は、黄色い花がたわわになっています。秋には、細長い卵型の実をかごいっぱい拾います。生でも食べられますが、煎るとナッツのように香ばしいおやつになります。縄文時代の人々も食べていたのかなと思うとタイムスリップした気持ちになります。