受賞作品一覧

滝山城址公園 自然・歴史観察MAP

優秀賞
中山 裕介
東京都
明治大学付属中野八王子中学校
中学校1年生
第33回 中学生の部

全体説明

僕の住んでいる八王子は東京の多摩にある比較的大きな街です。人口も都内で最も多く、ミシェラン観光ガイドで紹介された高尾山や緑豊かな多摩丘陵地帯に囲まれ自然にあふれています。

今回紹介するのは僕の住んでいる地区の近くの滝山城址公園です。八王子は戦国時代、滝山城の城下町として栄え、その後宿場町としても発展しました。標高160メートルの加住丘陵の上にあった滝山城は北条氏照によって築城されました。戦闘のための城だったので天守閣や高い石垣はなく空堀やS字にカーブした急な坂道が特徴です。

平成28年5月から八王子市が観光アプリ「AR滝山城跡」の配信を始めました。散策ルートやサクラ・ツツジ・ヤマユリ・モミジの見所やスマートフォンやタブレットを周囲の風景にかざすと画面で堀や館で戦う武士たちが再現されます。自然も歴史もいっぺんに学べ春夏秋冬季節を問うことなくさまざまな姿を見せてくれる滝山城址公園を楽しんで下さい。

観察ポイントごとの説明

ポイント① 天野坂

真ん中がくぼんだ通路になっている急な勾配を登っていくと一面が竹林だった。この坂は敵の侵入を防ぎ効率的に攻撃するために工夫されているそうだ。そんな説明版をよんだら不思議な緊迫感を感じた。

太陽の光が竹の葉をとおり辺り一面が緑色に見える。周りの空気が全部緑色だ。そして竹の中には<これは電柱ではないのか>と思うくらい太い竹もあった。

足元をふと見ると日本トカゲが急いで道を横切っていくのが目に入った。背中が虹色に光っていてとてもきれいだ。滝山街道からほんの100メートル入っただけなのにまるで別世界のようだ。

ポイント② 小宮曲輪

天野坂を登っていくと少し開けた所に出た。曲輪とは城の中を区画した区域の事でここ滝山城にもたくさんの曲輪があった。

僕たちの足音に気配を感じたのかセミが鳴きやんだ。ふと見渡すと下草が一面に広がっていてかろうじて道が見えた。まるで野草の宝庫の様だった。紫色の小さな丸いつぼみを持ったタチギボウシや冠婚葬祭で使う水引の様なミズヒキや万葉集にも登場するナンバンギセル、鳥のホトトギスの胸にある斑点からなぞられたホトトギスなどが観察できた。ホトトギスの種類はヤマジノホトトギスだった。

ポイント③ 山の神の曲輪

上り坂をさらに進むと行き止まりになっている。ここは城下周辺村々の民衆たちの避難場所だったことから高台に位置している。足元は急な崖となりその先には多摩川が一望でき心地よい風が吹いてきた。倒れた古木にはたくさんの種類のキノコを見ることができた。中にはおいしそうに見えるキノコもあったが種類がわからなかったのでここは観察だけにとどまろうと思った。野草を目当てにキアゲハやクロアゲハにも出会えた。

ポイント④ コの字型土橋

三の丸まで戻り少し平坦な歩道を進んだ。ほりを掘るときに一部をそのまま残し通路にしたことを土橋と言うそうだ。今はコンクリートで舗装されている土橋を歩いていると道を横切る長細い物が目に入った。近づくとなんとヘビだった。ぼくは思わずヘビだぁーっと叫んだ。模様から推測するとヤマカカシかと思った。1メートルくらいありそうだった。滝山城跡公園にはため池もありカエルなども多くいるため食物連鎖が成り立っていると感じた。もっとゆっくり見ていたかったがヘビはその後林の中に消えてしまった。でも僕に姿を見せてくれて嬉しかった。

ポイント⑤ 千畳敷

緩やかな遊歩道を進むと広く静かな草地の広場にでた。千畳敷とは畳千枚を敷くことのできる広い場所の事で日当たりが良く短く刈られた草地ではトンボやバッタやカマキリなどの昆虫が生息していた。遠くのベンチには昼寝をしている人がいた。僕もしばらく横になり虫の声を聞いていた。残念ながらセミの声の方が大きくてあまり耳に入ってこなかった。

ポイント⑥ 二の丸

ここは山の山頂に近く下草が手入れされていた。千畳敷と似た種類の昆虫が生息していた。

観光アプリ<AR滝山城跡>を使いタブレットをかざすと二階建ての物見やぐらや堀で戦う兵士の様子をみることができた。春にはヤマザクラがきれいに咲くエリアだ。戦国時代の兵士も花見を楽しんだのだろうか。今の僕と同じ年頃のいたのだろうか。色々な思いが浮かんできた。

ポイント⑦ 中の丸

山頂に位置する中の丸からは多摩川が一望できる。ベンチで少し休んでいると多摩川の岸に何か白いものが見えた。双眼鏡でのぞいてみるとダイサギだ。サギは集団で暮らすことが多くだいたい5羽から10羽くらいで生活するようだ。多摩川には他にもカワセミやコゲラやアオサギやゴイサギやセグロカモメなど多くの野鳥を見ることができる。以前カワセミを見た時コバルトブルーにきらきら光る羽に驚いた。チャンスがあれば絶対また見たいと思っている。

ポイント⑧ 本丸

中の丸から引橋を渡ると本丸だ。間に深い谷がある所が特徴的だ。引橋は名前の通り敵が来たら外したのではないかといわれている。一角には古い井戸があり上から覗き込むと結構深い。10Mくらいありそうだ。神社の周りにはツツジやソメイヨシノが緑の葉を広げていた。春になると桜が満開になりその下でお弁当を広げる人も少なくないそうだ。八王子八十八景の1つ滝山城の5000本のサクラは見応えがありかなりお勧めだ。

ポイント⑨ 大池

クヌギ林にさえぎられ日の当らない涼しい木のトンネルが続く中セミの声もいっそう力強くないていた。滝山城跡公園一帯はアブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ、クマゼミなど様々なセミを見ることができる。また夕方の涼しくなる頃にはヒグラシがカナカナカナと鳴いて夕暮れ時を知らせている様に感じる。ヒグラシの声を聞くとそれだけで涼しく感じるから不思議だと思う。

ポイント⑩ 木橋

木橋とは別名で引き橋とも言う。その木橋の上でしばらくやすんでいると、どこからか<ぎーぎー>という鳴き声がしてきた。静かにしていると木の枝から何かが飛び立った。目を凝らしてよく見ると鳥だ。コゲラだった。後で調べてみるとやはりコゲラの鳴き声だった。

コゲラは日本一小さいキツツキ。きっとサクラの幹を突いて木くい虫を探していたんだと思った。コンコンと口ばしで木の幹を突く姿が見たかった。