応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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受賞作品一覧
優秀賞
第36回 高校生の部

日本列島誕生に触れる 北浅川の散策路

中山 裕介

東京都
明治大学付属中野八王子高等学校
高校1年生

全体説明

今回紹介するのは八王子市の西部地区にある八王子八十八景に選ばれた北浅川です。陣馬山を水源とし浅川へと流れ込みそして多摩川へと続く川です。浅川や多摩川は流出量の増大に伴い河川改修による人工的な整備が進みますが、比較的川幅が狭く水流の少ない北浅川は自然の姿が多く残っています。川沿いにメタセコイヤの化石や数万年前の地層が見られ独特な景観をしています。僕は初めて近くで見た時に、まるで小さなグランドキャニオンみたいだと驚きました。夏は河原全体が草木に覆われ多くの昆虫が姿を表します。風にのって葛の花の匂いがします。野鳥は少し涼しい陣馬山や高尾山に移動するため木々が葉を落とす秋から冬にかけての散策が適しています。松江橋から北浅川上流方向を眺めると御岳山の山並みがよく見えます。大陸時代から続く自然現象を発見し大切に保存できるようにしなければならないと思います。

観察ポイントごとの説明

ポイント①  陵北大橋の上から西の方を見ると遠くに陣馬山や刈寄山を見る事が出来ます。橋の周りには里山が広がり野鳥にとって恵まれた環境です。冬鳥のユリカモメは10月頃橋のたもとのフェンスに群れで見る事が出来ます。みんな同じ方向にとまっているのがとてもかわいいです。
動きが機敏なシジュウカラは虫を主食としているので、空中で何時も飛び回って狩りをしているので野鳥観察の必需品の双眼鏡もシジュウカラにはかないません・・・動きが早すぎるため肉眼での観察が適しています。

ポイント②  川に沿った遊歩道を下ると手作りの橋があります。橋は幅90センチほどの小さい橋です。川岸と同じ高さなので水面がよく見えます。ウグイやハヤタカは水中の石と見間違うほどの塊になって泳いでいます。網で水底をすくってみるとシマドジョウやカジカの姿も確認できます。
しかし本来この川にいるはずのないコチバスやブルーギルといった外来種も数多く生息しています。釣った場合は処分するようなこともあるそうです。

ポイント③  さらに下ると三段の堰があります。堰の落とし込みでじっと待ち伏せし長い首を利用して水面を見渡しているダイサギや浅瀬の岩場で影を作るようにして待ち伏せをしているゴイサギがいます。コバルトブルーの美しい羽根を持つアワセミは川から突き出した木の枝にとまり、水中に魚をみつけると勢いよく飛び込んで一瞬にして魚をくわえ、水しぶきと共に飛び出してきます。
堰は野鳥にとって格好のえさ場になっています。

ポイント④  この先は川幅が急にせまくなりごつごつとした岩場が続きます。中学の理科で勉強した中生代の岩がむき出しになり川の流れが速くなります。7000万年前この辺りは海底だったことを表しています。岩は斜めに割れ目が何本もはっていて割れたところで少しずれている事が確認できます。日本列島が大陸の一部だった時代から繰り返された地殻変動によってできた割れ目です。さらに岩場は続きます。

ポイント⑤  小仏層群や上総層群とよばれている異なる年代の岩や同じ年代の岩でも浸食の具合によって黒や白っぽく変化している岩など色のグラデーションも観察することができます。浅川渓谷と呼ばれているこのポイントは入り口付近は流れも穏やかで水遊びをしている人も見かけますが岩場なので注意が必要です。
このようなに具体的にみる事が出来る現象や日本列島のおいたちという歴史を具体的に見たり触れたりできる場所も野生生物と同じように私たち人間が大切に思わなくては守ることはできません。大地の現象はスケールが大きい為あまり身近に感じる事が難しいと思いますが、実際に岩を見たり触れたりすることでたくさんの発見があると感じます。

ポイント⑥  岩場を過ぎると住宅地がみえてきます。キョッキョッキョキョキョと鋭い鳴き声のホトトギスがいます。警戒心が強いので間近で見ることは難しいですが、体が大きいので双眼鏡を使うと見つけやすいです。胸からおなかにある黒い斑点が特徴で、秋に咲く花におなかの斑点の模様に似ていることからホトトギスと名付けられた花があります。花は紫色ですが僕は花を初めてみた時になるほどなぁと思いました。

ポイント⑦  遊歩道を進むと川がカーブして遊歩道に近くなっている所があります。コンクリートの土手には瑠璃色の羽根が美しい雄のルリビタリがあるいています。この青い羽根になるには2~3年かかるそうですが、寿命が4年くらいなのできれいな瑠璃色に変わった頃に寿命を迎えるなんてちょっとかわいそうだと思いました。胸からお腹にかけて黄色いキセキレイはいつも尾を上下に動かしています。とても鮮やかな色なので正面から見るとセキセイインコの様です。空中に飛びながら急上昇したかとおもうと小さな虫をフライングキャッチが得意です。

ポイント⑧  川のカーブは反対側に曲がり広い浅瀬になります。長い首と長い脚の持ち主のアオサギが川の中ほどでジーっと獲物を狙っています。飛んでいる時には長い首を上手に縮めるのが特徴です。羽根を広げると僕の身長と同じ175センチにもなり野鳥の中では大型です。数年前はたまに見かける程度でしたが、その数は年々増え下流の浅川や多摩川でも群れを見ることが多いです。実際調べてみると個体数が増え養殖場での魚の食害や住宅地での糞害など人間とのトラブルが目立つようになっています。うまく共存する為の対策が必要だと感じました。

ポイント⑨  遊歩道は公園に差しかかります。園内の芝生に足を踏み入れるとクマバッタ、ショウリョウバッタ、エンマコウロギ、ミツバチなどたくさんの昆虫がいっせいに飛び立ちます。
公園内の原っぱは小さな大自然が広がっています。草を食べるバッタの仲間とそのバッタを食べるカマキリ、テントウムシにも肉食のものが多く植物につくアブラムシを食べます。
黒く見える蝶のカラスアゲハは羽根の表面が青緑色に輝いて見えるとても神秘的なアゲハチョウです。自然が多い八王子ではよく見る事が出来ます。

ポイント⑩  高尾街道に近づく辺りにはハシボソカラスの群れがいます。全身黒色ですが近くで見ると青や紫など光沢のある羽根をしています。街中で良く見るハシブトカラスよりひとまわり小さくくちばしが細いのでスマートに見えます。また河川敷や農耕地に住み植物性の餌をこのみます。
川をさらに下ると200~170年前のメタセコイヤの化石があります。事前に写真などでイメージを持っていると見つけやすく慣れると何個も見つける事が出来ます。真っ黒な炭のようなもので水に浸っている物もあります。
近くではステゴドゾウの化石の歯やキバなどが発掘されています。200万年前人類がやっと現れる頃この辺りはメタセコイヤの林をゾウが歩いていたのかもしれないと想像してみるととても感動します。

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