受賞作品一覧

本庄早稲田の杜~セミたちの声に耳をすませて~

優秀賞
新井 律子
埼玉県
早稲田大学本庄高等学院
高校3年生
第36回 高校生の部

全体説明

ここ、早稲田大学本庄高等学院の敷地は通称「本庄早稲田の杜」と呼ばれ、多種多様な動植物が生息している。その中でも、私が特に魅力を感じている生き物、それは「セミ」である。現在、卒業論文のテーマとしても扱っている。今回は、その研究結果をもとに、本庄早稲田の杜で出会える七種類のセミと、彼らと関わりの深い草木にスポットライトを当て、このマップを作成した。
皆さんは、セミについて、どのような認識をお持ちだろうか。うるさい?気持ち悪い?うっとうしい?それではもったいない!ぜひ一度、彼らの鳴き声を、耳をすませて聞いてみてほしい。各々が個性的なリズムを刻みながら、力いっぱいに響かせるその声を、じっくりと、味わって聞いてみてほしい。このマップが、セミに少しでも興味を持つきっかけになれば、またそうでなくとも、私のセミへの愛だけでも伝われば、幸いである。

観察ポイントごとの説明

ポイント① アカマツ林
長くゆるやかな登り坂の左手には、県内三大美林の一つに数えられるアカマツ林が広がる。この場所では、五月になると「ムゼー、ムゼー」という、聞き慣れない鳴き声が響く。その正体は、ハルゼミという、松林にしか生息しない、珍しいセミである。非常に高い所に止まって鳴くため、私もまだその姿を見たことは一度もない。何ともミステリアスなセミである。

ポイント② クマザサ
道の両側から、今にもおおいかぶさってきそうな勢いで生い茂るクマザサは、迫力満点である。ササの仲間にセミの抜け殻がついているのをよく見かけるのだが、よくあんなにも細い茎を登ってこられるものだなあと、毎回感心させられる。

ポイント③ 雑木林
背の高いコナラやアオハダなどが茂るこのエリアでは、七月ごろから、アブラゼミやツクツクホウシの鳴き声を聞くことができる。彼らの多くは高い所で鳴いており、また全体的に日陰で暗いため、姿は見つかりづらい。にぎやかさの中にもどこか寂しさを感じてしまう、そんな場所である。

ポイント④ ヤマザクラ
雑木林の出口に近づくと左手に大きなヤマザクラの木が見えるのだが、私はこれを「ヒグラシゾーン」の目印としている。夕方になるとこの周辺でヒグラシが盛んに鳴くためである。互いに呼応するかのように「カナカナカナ」と響きわたる美しい高音、見上げれば鮮やかなオレンジに染まった空……。ロマンチックとはまさにこのことである。

ポイント⑤ クヌギ
一方、右手ではクヌギの木が、青々とその葉を茂らせている。樹液の豊富なこの木には、セミだけでなく、チョウ、コウチュウなど様々な種類の昆虫が集まる。また、その足元にはアズマネザサが群生し、そこでアブラゼミの抜け殻がよく見つかる。観察の際には、スズメバチに注意が必要だ。

ポイント⑥ メタセコイア
雑木林を抜けたところに、四本の大きなメタセコイアがそびえ立っている。植物に詳しい方のお話によれば、メタセコイアの樹液は虫にとって美味しいのだとか。意外である。確かに、アブラゼミやニイニイゼミなどの抜け殻がついていた。

ポイント⑦ グラウンド
グラウンドでは、トラックのバックストレートに沿って、サクラとマテバシイの木が交互に並んでいる。ここは、アブラゼミやニイニイゼミの観察をしやすい場所だ。ニイニイゼミの鳴き声は、「チィー」という単調なものだ。見た目は全体的に茶色だが、よく見てみるとほのかにオレンジ色も入っており、かわいらしいセミである。

ポイント⑧ 遊歩道
両サイドには、コブシ、ケヤキ、ヤマモミジなど様々な種類の樹木が植えられている。この場所は、敷地の中で最も多くの種類のセミに出会える、おすすめのスポットである。ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクホウシの鳴き声を聞くことができ、運が良ければクマゼミの「シャアシャア」という声も聞こえることがある。また、ミンミンゼミは、ここ以外のエリアではほとんど見ることができない。鮮やかなグリーンの模様がオシャレな、私の最もお気に入りのセミである。

ポイント⑨ 並木道
遊歩道の先には、ケヤキの並木道がある。ケヤキの木にはぬけがらが多くつく。つまり、夕方から夜にかけての時間帯に訪れれば、高確率で、セミの羽化を見ることができるのである。一時限りの、彼らの「もうひとつの姿」は、妖精のごとく神秘的で、思わず見とれてしまう。

ポイント⑩ スギ
これまたゆるやかな登り坂だが、①のエリアとはだいぶ雰囲気が違う。左手には、太い幹をどっしりと構えたスギの木が、何本もそびえ立っている。ニイニイゼミ、アブラゼミ、ツクツクホウシの抜け殻が確認できるが、花粉アレルギー持ちの私にとっては、少々近寄りづらい場所である。