過去の受賞作品

ヒメギフチョウと歩こう!赤城の保全調査

入選
小髙 七海
群馬県
群馬県立大泉高等学校
高校2年生
第33回 高校生の部

全体説明

群馬県の中心にそびえる赤城山。群馬県民に馴染み深い上毛かるたで「裾野は長し 赤城山」という札が存在するほど愛されており、県を代表する山の1つである。そんな赤城山は、黒檜山や駒ヶ岳、地蔵岳など多数の山岳で構成されている複成火山だ。その中で私が選んだのは、モロコシ山というあまり知られぬ比較的小さい山だ。私はその山に昨年、環境保護活動の一環として初めて登った。初めて聞いた山の名前に、トウモロコシを連想させながら登ったのは記憶に新しい。運動が苦手な私であるが、植物や虫と関わりながら登りきった時の達成感は、何ものにも変えがたいものはあった。

このモロコシ山は、関東地方で唯一、ヒメギフチョウという希少な蝶が住まう山でもある。今回の観察路は、登山しながら発見した植物や、このヒメギフチョウの観察のポイントなどを紹介していきたいと思う。そして、環境と人間との関わり方について、考えるきっかけになればと思う。

観察ポイントごとの説明

①キャンプ場 スミレ

数ある登山口の1つに、キャンプ場が入り口となっている場所がある。しかし、山頂に生息するヒメギフチョウは、なかなかこの場所で見かける事はない。主に餌となる蜜は別の花であるため、ここでヒメギフチョウを見る機会はほとんどないと言える。

②山道 オシダ

キャンプ場を抜けた先にある山道の入り口。鬱蒼と生え揃うスギ林の中に歩を勧めると、初めに目に留まるのは、オシダというシダ植物だ。

オシダは、春先と春半ばで姿が大きく変わる。まだ肌寒い春先は茎が丸まり、一見巨大なゼンマイにも見える。暖かな春半ばになると茎が伸び、葉が開いてくる。その姿はまさにシダの特徴を持っている。

このオシダの群生を見ると、今年もモロコシ山に来たのだなと感じさせてくれる。

③山道 ブヨ

モロコシ山の登山道全体で言えることなのだが、ブヨがいる。私は、羽音が聞こえると、体がビクッと反応してしまう。

知っている方はご存知だと思うが、ブヨに刺されると赤く腫れ、痛みを伴う場合がある。

昨年、私は何箇所も刺され、苦い思いをした。虫除けなど、登山をする際はきちんと準備をする事が大事である。山を甘く見てはいけないと、思い知らされた意味で、思い出として強く印象付けられた虫だ。

④山道 シカ

小川を過ぎて暫くすると、森の向こうでシカを見かけた。遠目から、角がないのでメスだということが確認できた。見る事ができたのは1頭だけだったが、この近くに仲間の群れでもいるのだろうか。私は野生のシカを初めて見た。思っていたよりもずっと大きく、可愛いと感じた。その後道なりで、木の樹皮が歪に剥けたところも見ることが出来た。姿は見えずとも、このモロコシ山で生息していることが分かる。

⑤山道 ヒトリシズカ

スギ林の終盤に差し掛かると、ヒトリシズカという白い線状に咲く花を見つけた。所々小さな群生になっているのが確認できた。青々とした茂みの中で凜と咲くヒトリシズカは、白が映えてとてっも可憐な姿だった。その近くで姿も名前も似ているフタリシズカの群生も見つけた。ヒトリシズカは葉も花も全体的に小さかったが、フタリシズカは葉が大きい。歩いている間に見かけた雰囲気だと、フタリシズカの方が多いような気がした。

⑥中腹部 ウスバサイシン

山の中腹に差し掛かると、道の脇にハート型の葉がちらほらと見え始める。ウスバサイシンという、ヒメギフチョウにとってなくてはならない植物だ。

地面から茎が2本伸び、その上に葉が1枚ずつ対に生えていた。まるでサツマイモの葉みたいだなと感じた。この植物は、ヒメギフチョウの大切な産卵場所であると同時に、幼虫の餌となる。葉の下に花を付ける珍しい植物だ。

⑦中腹部 カタクリ

落ち葉が沢山積もった場所にちらほら見える。俯く様に咲く薄い紫色の小さな花を見つけた。これがヒメギフチョウの一番の餌となるカタクリだ。資料の写真でも、カタクリにとまるヒメギフチョウが最も多かった。立ち止まってふと、ヒメギフチョウの姿をつい探してしまう。残念ながら、カタクリにとまるヒメギフチョウをまだ見た事はないが、いつか見てみたい。

⑧中腹部 キツツキ

登山中に、コツコツと規則正しい何かをたたく様な音が聞こえた。その音を頼りに森の中をじっと探してみると、ある一本のカラマツの木に小さな影を見つけた。それがキツツキだと気付くのに、そう時間はかからなかった。どうやら餌を探しているようだ。

キツツキだと分かると、初めて本物を見たことに気分が高揚する自分がいた。見ることができたのはそれっきりだが、次に登る時にまた出会うことが出来たらいいなと思う。

⑨山頂付近 アズマイチゲ

登山もそろそろ終わりを迎える。広葉樹林の葉が落ち、程よく日が差し込む中、脇に白い花が咲いていた。一緒に登山をしていた方から、アズマイチゲという春を告げる花だ、という事を教えていただいた。花びらは10枚程で、本当に真っ白だ。一株に一輪だけ花が咲いていた。見ていると可憐ながら孤独感をも含む、気高い印象を与えてくれた。他の植物と比べ見かけることは少なかったので、山頂付近では頑張って探してみて欲しい。

⑩赤城山山頂 ヒメギフチョウ

山頂に差し掛かると、時々視界に映る小さな命。この登山の目的とも言えるそれは、小さいながらも元気に羽ばたいている。しかし、毎回見る度にどこか儚さも感じられるのは、保護活動を通してこの蝶の希少性を学習したからだろう。

ヒメギフチョウは次の世代を作るために奔走している。ここで子孫を残すことができないと、来年もモロコシ山に現れるヒメギフチョウが減少してしまうのだ。来年もまた姿を見せてほしい。

【より深い観察レポート】

ポイント⑥⑩について

観察して分かったことであるが、ウスバサイシンンはヒメギキョウの産卵場所であり、生まれた時から幼虫の餌となる重要な植物である。実際に保全活動のひとつである産卵調査を行ったときに、卵の付いたウスバサイシンごと盗掘されている場所を発見した。環境破壊だけでなく、直接的な人間の手による被害を見て衝撃を受けた。微々たる力だが、毎年の保護活動を継続して、ヒメギフチョウの力になりたいと感じた。このウスバサイシンの群生地は、私にとって環境と人間との関わりを考えさせられる場所となった。ヒメギフチョウにとって、環境破壊や盗掘は脅威以外のなにものでもない。だからこそ、私たちはこの山の環境を守らねばならないのだ。