応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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受賞作品一覧
優秀賞
第33回 高校生の部

Let’s Go! 渡良瀬遊水地

赤石 もも

群馬県
群馬県立大泉高等学校
高校1年生

全体説明

渡良瀬遊水地は、自然豊かな場所として多くの人に知られており、お年寄りの散歩道やイベント会場、植物などの自然を間近で観察するために使われている。季節によって、様々な遊水地の姿を見ることができる。3月~5月には、黄色やピンクなどの明るくてかわいらしい花、6月~8月には、黄色や白などの元気の良い大きな花、9月~11月には、ピンクや紫の淡いきれいな花を観察することができる。そして、遊水地の近くにはいろいろな施設もある。初めて遊水地に行く人でも、遊水地内について詳しく知ることができる、わたらせ自然館。遊水地になる前にあった、谷中村のことを学ぶことができる、板倉文化財資料館などだ。私がここを散歩道として決めたのも、美しい景色と充実した施設で学んだことを、皆さんに伝えたいと思ったからである。

今回遊水地を訪れて、植物を観察することで、これからもこの自然の美しさを多くの人に伝えていきたいなと思った。

観察ポイントごとの説明

ポイント① ヘビイチゴ ナナホシテントウ

遊水地に入ってすぐの歩道の脇に、赤く実ったヘビイチゴの実と、その周りで気持ちよさそうにナナホシテントウが飛んでいるところを見ることができる。

歩道の両脇にはたくさんのヘビイチゴが並んでいた。「ヘビ」と聞くと少し怯んでしまうが、実際は小さな赤くかわいらしい実だ。群生しているヘビイチゴを見ていると、まるで野原に赤い星が散らばっているように見えた。これからどんな植物に出会えるのかわくわくしてきた。

ポイント② ヤセウツボ オオイヌノフグリ

歩道を進むと、右側に木陰の休憩場がある。そこには、遊水地内を散策して、疲れた体を休めるためのベンチがある。ベンチの近くでは、ヤセウツボやオオイヌノフグリなどを見ることができる。

ヤセウツボはベンチの隣でジッとしていて、オオイヌノフグリは芝生を青く染めるかのように広く生息している。風でなびく青色を見ると、疲れた心も体もリフレッシュできる。吹いてくる風は、とてもさわやかで気持ちの良いものだった。

ポイント③ チュウヒ オオヒラタシデムシ

さわやかな風を浴びた後、再び足を進めるとヨシ原が見えてくる。ここでは、春先に渡良瀬遊水地特有の「ヨシ焼き」が行われる。黒い地面から新しく芽が出て、春の訪れを感じることができる。絶滅しかけていた植物も、ヨシ焼きを行ったことで芽を出し、個体を増やした例もあるそうだ。

このヨシ原には、多くの生物が生息する。上空にはチュウヒ、地上にはオオヒラタシデムシなどがおり、多種多様な生物があふれている。

ポイント④ オギ原

ヨシ原の反対側にはオギ原がある。一見すると、ヨシとオギは非常によく似ている。そばで見るとヨシは茎の内部が詰まっていて、葉は緑単色、オギは茎の内部が空洞になっていて、葉の中央には白い筋があるという違いがよく分かる。

オギを観察しようと手にとった時、チクリと何かが私の手に刺さった。オギの茎には無数の半透明な毛が生えていた。刺さった毛を抜こうとしてもなかなか抜けない。今度オギに触れる時は、気を付けよう。

ポイント⑤ クワ

ヨシ原とオギ原に囲まれた道を進むと、旧谷中村役場跡が見えてくる。ここは谷中村最後の役場があった場所である。

もう建物の跡はなかったが、谷中村がまだ栄えていた時に、村人の手によって植えられたエノキ・クワ・クムギはまだ成長し続けていた。現在でも、クワは6月になるとドドメという実をつける。村人たちの想いがこめられた木々を見て、当時の様子が頭に思い浮かんだ。

ポイント⑥ セイタカアワダチソウ

旧谷中村役場跡の目の前には、開発中のハート型のため池がある。ここには、外来植物のセイタカアワダチソウが数多く生息している。セイタカアワダチソウは、根から他の植物に有害な毒素を排出し、自生地を拡大するため、絶滅危惧種の生息を脅かす存在である。そのため、各地域で多くの人々が除草作業を行っている。しかし、外来種は他の植物に比べ生育が早い。私も除草作業に参加して、自分の手で絶滅危惧種を守りたいと思う。

ポイント⑦ エキサイゼリ オオタカ

ハート型のため池の左側にもヨシ原が広がっている。このヨシ原の中に入って、足元に注意して進んで行くと、絶滅危惧種のエキサイゼリを見つけることができた。エキサイゼリの花は白くてとても小さく、逆さにした線香花火のように可憐な花を咲かせていた。ヨシ原の中を歩く機会があったら、ぜひ足元に注意して見てほしい。また、この場所ではオオタカを見られる時もあるため、足元だけでなく空も見上げて見てほしい。

ポイント⑧ アマドコロ

ポイント⑦で紹介したヨシ原に沿って歩いていくと、大きな芝生が生えている広場が見えてくる。人気のない木の陰に、絶滅危惧種のアマドコロが生息している。花の色は白色で、形はまるで風鈴のよう。水が滴っているかのように花がついている。アマドコロの名前の由来はそこから来ている。アマドコロを見て私はきれいだな、風が吹いたら鈴の音が聞こえそうだと思った。見ているだけで涼しく感じた。

ポイント⑨ ツバナ

また少し進むと、広い野原に着く。この広い野原では、モンシロチョウやアゲハチョウなどの蝶がひらひらと飛んでいる。所々に背の高い植物が生息している。その中に、ツバナを見つけた。ツバナを太陽の光で当ててみると銀色に光る。その日はとてもいい天気だったので風が吹くたびにキラキラと光っていた。そのような光景を見ながら、そこでお弁当を食べた。まるで、ピクニックをしに来たかの様に楽しい気持ちになった。

ポイント⑩ ノウルシ スズメ

いよいよ、遊水地の出口が見えてきた。その場で360°ゆっくり回転してみたら、ノウルシという植物を見つけた。葉の緑色から、花の黄色になるまでグラデーションのようになっている。自然の植物が、きれいなグラデーションをしていてびっくりした。そんなことを思いながら出口に向かっていたら、スズメがこっちに飛んできた。私はスズメがお見送りをしてくれたのだとうれしく思った。また、遊水地に訪れたいと思う。

観察レポート ポイント⑥⑦⑧

今回の観察を通して、渡良瀬遊水地には数多くの絶滅危惧植物が存在することが分かった。実際に観察をしてみて、これらの植物は、花が小さく儚い印象を持った。渡良瀬遊水地研究所所長の白井さんからお話を伺う機会があり、外来植物の増殖や発芽率の低さが原因とのことでした。そこで、私は自治体が主催する外来植物除去作業に参加し、セイタカアワダチソウなどの除草を行った。半日程度の作業であったが、くたくたになり達成感を感じた。しかし、広大な遊水地にとって半日の作業では微々たる量であり、継続するという大切さを改めて感じた。きれいな花をたくさんの人に見てもらうため、これからも遊水地を自分の手でも整備していきたい。

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