共存する人工湖と自然の観察路
佐久間 麻由果
東京都
小野学園女子高等学校
高校3年生
全体説明
湿地帯でもあった山と谷に、飲・用水のためにダムを建設し、里山の自然を壊さないように選別除草などを取り入れつつ地域の人々に守られながら自然と共存している散歩道です。
近くでは、水平線が丸く見える山・ぶどう狩り・ビオトープも行われていて、里山・住宅地・観光地が密接している地域です。
湖では、ジョギング等をして楽しむ人々の目を四季折々の木々や鈴虫等の虫の鳴き声が楽しませてくれる傍らで、多くの絶滅危惧種が見受けられ東京サンショウウオやメダカも見られると地域の方に教わりました。
観察中、散歩道ですれ違う方々に見所や珍しい植物等の説明を頂き自然を大切にしている気持ちが、とても深く伝わってきました。散歩道で捕まえた蝶やトンボの飼育・習性等自宅に帰ってからの観察も楽しかったです。
生活に必要なものを備えつつ、自然を守っている理想的な環境づくりを目指し、自然の再生・共生を実現したこの人工湖周辺を紹介したいと思います。
観察ポイントごとの説明
①山蛭
頭上の葉っぱに、うねうねする生き物がいたので、よく見たら山蛭でした。
落下したら、血を吸われてしまう所でした。
以前、足をかまれた時は、30分後くらいから痛み出し、なかなか血が止まりませんでした。
蚊と同じく麻痺させる成分で痛みを感じず、血が固まらない成分を出すのだそうです。
蛭除けの薬はないのかなと話をしていたら、地域の方に、ポカリスウェットや虫よけスプレー(ディートという成分)が蛭除けになると教わり驚きました。
②野ウサギ
葉がカサカサ動き、ずっと隠れた動物を覗いていたら、近隣の方が、「野兎だよ」と教えてくださいました。住宅地の直ぐ傍で野生の動物がいる事にも驚きましたが、野ウサギ病という、人に感染するおそれのある病気を持っているかもしれないから、やたらに触らないほうがよいと聞き動物は平気でも人間には、感染症を起こしてしまうのはなぜなのか不思議に思いました。
③モウセンゴケ
湿った足元で羽音がしたので見ると、ブヨが赤い毛の様な部分に捕まっていました。
葉と毛のような部分が丸まって、何枚かの葉で抑え込んでいるようで、少し怖かったけど、指で触ってみると、ねばねばしていましたが丸まってきませんでした。
食べられるものと、食べられないものを区別できるようでした。
この地域は昔、湿地だったせいもあり、モウセンゴケの様な食虫植物が育つ様です。
梅雨時に訪れた時には、ねばねば部分がきらきら光って綺麗でした。
④赤い実
夏はサルトリイバラ、冬はマンリョウ等多くの季節で赤い実をつけた木々がたくさんあり、緑の山に赤い実がとてもよく目立っていました。
お正月飾りでよき見かけるマンリョウは見た目も美しいですが、根は解毒・鎮痛効果があると祖母に教わりました。
人と深く関わっている植物だなと感心しました。
自然を残す事は未知の病気への薬の発見につながる可能性があるので自然を大切にしなければと改めて思いました。
⑤藤
頭の上を大きなエンドウ豆のさやがぶら下がっているなぁと思ったら藤の実でした。
藤の花が少し残っていたので判りましたが、同じ木とは思えませんでした。
茶色になったさやを開くと、チョコレート菓子のような種が入っていました。
祖母は、若芽や花をてんぷら等にして食べられると聞いたことがあるそうです。
調べると、つるは家具になり、藤瘤は胃がん薬にもなるくらいだそうです。
とても古くから人と関わっている植物だとわかりました。
⑥オトシブミ
クリ等の葉のトンネルをくぐろうと見上げたら、葉の裏にロールキャベツの様な物がたくさんついていたので開けてみると、中に卵が1つ入っていました。
よく見ると上の方には、巻いている途中のものや、地面に落ちている物など、いろいろな状態で、やがて幼虫の餌となる葉に卵を産んで巻く習性は、とても面白いと思いました。
⑦トカゲ
草地の斜面を黒いトカゲが素早く逃げて行きました。
一瞬蛇かと思って驚いてしまいましたが、トカゲと分かり尻尾を踏んだら切り離すか試そうと追いかけましたが、あっという間に逃げられてしまいました。
とてもつやつやした黒いうろこでしっぽのほうがやや青っぽく黄色のラインがきれいでした。
祖父が小さい頃トカゲで遊んだ事があると話してくれましたが、あんなに素早いトカゲをどうやって捕まえることが出来るのか不思議です。
⑧バッタ
オンブバッタ・ショウリョウバッタ等、多種なバッタがたくさんいました。
草や草の色に見分けがつきませんでしたが、草むらに踏み込んでみるとあちこちへ飛んで逃げていくので、こんなにいたのかと驚かされます。
祖父母の小さい頃には、イナゴやバッタは揚げたり佃煮にして食べたそうですが、そのままの姿だと聞いてちょっと食べたいとは言えませんでした。
⑨ハナイカダ
「面白い植物あるよ。」と、地域の方に教わり見に行くと、葉の真ん中に花や実をつけたハナイカダを発見しました。
あじさいのような葉で中央の葉の部分までの葉脈だけ太く、その先は普通の葉と同じでした。
花の実が葉に乗っているようでとてもかわいかったです。
若芽は食べられる山菜・実は果実酒として飲めるのだと教わり実を食べてみたくなりましたが、まだ紫で熟していなかったので、とても酸っぱくて食べられませんでした。
⑩山栗
散歩道で一番目立っていた植物は山栗の木で、たくさんの実をつけたくさん自生していました。
とげとげのイガはまだ青く、茶色になる秋には、美味しい実をたくさん実らせるなぁと楽しみになりました。すでに落下している実は、虫に食べられてしまいました。
植物の栄養を無駄なくするためのようです。
親しみのあるこの植物は、縄文時代から食べられていた記録があり、野生の栗は、昔と変わらない味がするのかなぁと思いました。
⑪ヨモギ
葉の裏が白く、菊の葉のようで、祖母と一緒にヨモギの団子を作ったことがあるので、すぐにヨモギだとわかりました。
ヨモギは、食用だけでなく、漢方薬として人々に親しまれています。
祖父が戦争に行った叔父から聞いた話では、マラリアに感染した時、ヨモギ汁を飲んで治ったと話してくれたそうです。
おいしいうえに健康によく、薬になる万能なこの植物をいつまでも大切にしたいです。
⑫カルガモ
特に冬になると、マガモ等の水鳥をたくさん見かけますが、初めてカルガモを見つけました。
親鳥の後ろに小さいカルガモの姿と、黄色いくちばしの先端で判りました。
ヒナ達が、一生懸命泳ぐ姿はとてもかわいかったです。
ジョギング中の方々も足を止めて観察していて、とても心が和みました。
⑬カマキリと蝶
斜面を登っていくと羽音がするので探してみると、傍の木でカマキリが蝶を捕食中でした。
カマキリは、私が見えているのか、よく見ようと覗きこむと、隠すように向きを変えてしまい、どの方向から覗いても、まるで見られたくないかのように向きを変えられてしまいました。
観察中のかなり長い間、蝶が逃げようと羽音を響かせていました。
カマキリは死んでいるエサは食べないそうですが、生きたままで残酷な食べ方は、ひどいなと思いました。