応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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環境大臣賞
第33回 高校生の部

里山防災林の道~芋掘りハイキングロード~

和田 侑佳

大阪府
大阪府関西創価高等学校
高校1年生

全体説明

私にとっての自然の道で思い浮かぶのは、高校へ通う交野の道とお父さんの会社で開かれる芋掘りハイキングで通る、神戸市西区の雌岡山の山登りハイキングコースである。それで私は、雌岡山の山登りハイキング道を選んだ。

雌岡山は、神戸市西区神出町にある標高249m、山頂に東経135度の子午線が通っている山だ。私の住む西神ニュータウンの住宅地とたった5km離れているだけだが、明石海峡大橋を南に望む、一面田畑に囲まれた静かな所である。

東に約2km離れた雄岡山と2つのため池をはさみ対峙しており、朝夕はお散歩コースとなっている、地元になじみ深い「ふるさと兵庫100山」や「神戸らしい眺望景観10選」に選ばれた山である。

いつもは秋に行く道であるが、この暑い夏に行くといつもと違ったどんな生き物、植物、景色が見れるか楽しみだ。

観察ポイントごとの説明

ポイント① 「災害に強い森づくり」裏山の整備と防災機能の強化が図られた里山

平成16年の台風災害にふまえて、森林整備、簡易な防災施設の設置や管理道の整備を行い、里山の防災機能を高めている。

ポイント② アゲハが飛んでいる

キアゲハ、アオスジアゲハ、モンキアゲハ、クロアゲハ、と多種なアゲハが飛び交っている。アゲハとキアゲハは見分けにくいが、アゲハの夏型は黒いのが目立つ。キアゲハの夏型は赤青といったカラフルなのが目立つ。そのためこの場所で見かけたのはキアゲハだと思われる。

カラスアゲハ、クロアゲハは山間部によく見かけられるアゲハのため、飛んでいる場所で区別はできないが、カラスアゲハは表が青緑に輝いており、大して、クロアゲハは模様がないことから、この場所で見たのはクロアゲハと思われる。

ポイント③ 笹が沿道に続く

山道に入ったところから道に沿って笹が生え続いている。笹は、繁殖力が強いため、山道の始めから最後まで広い範囲まで繁殖していった結果だと思われる。特に、半ばで一気に多くなった部分がある。その理由として、上にかぶさる木々が少なくなっていたことによるものだと思われる。気をつけなければいけないのは、笹による里山特有の植物が生育しなくなっていく恐れがあると感じた。

ポイント④ ツチバチが赤土と道を行きかう

メスは、コガネムシ系の幼虫を求めて地表すれすれを飛ぶ。獲物をさがしあてると毒針で刺し、麻酔して、獲物の腹面の一定の部位に産卵し固定する。幼虫はコガネムシの幼虫を食べて育つという。スズバチは見ても、スズメバチのような比較的危険なハチは全体を通して見られなかった。この山道が人通りが多いため山奥にいるのか、駆除によって見られないのか疑問だ。

ポイント⑤ クモの巣の不思議

金魚すくいの「ポイ」のようなきめ細やかな網、笹を包むように袋状、というように特徴的だったので、印象的だった。

調べてみると、クサグモの可能性が高い。螺旋状に広がっているような一般的な巣、つまり捕獲のための巣とは違って、住むための巣だと考えられる。実際巣の中には、クモの卵らしきものの黒い球があった。

ポイント⑥ タカサゴユリが咲いている

沿道にしか見かけることのないユリ。種子を多くつけ、風で運ばれて分布を拡げるため、繁殖力が高いが、近年、開発による原野の減少を受けて分布を狭めているという。更地や荒地になった場所に突然出現することもあるということで、私の身近では開発された道路際の斜面で気付くことが多い。

ポイント⑦ 開けた公園にトンボの飛行

ギンヤンマ、アキアカネ、シオカラトンボ、コシアキトンボが、地面にとまったり宙をホバリングしている。最初に水辺にいるはずのギンヤンマなどのトンボがいることに疑問をもった。アキアカネの場合、暑さをしのぐために羽化した後に、高山へ移動して過ごすそうだ。暑いのが苦手なのならば、地球温暖化による影響を大きく受けやすいのではないかと思われる。その他、農薬の影響や田んぼの減少がトンボの生息数に関わっているのだろう。

ポイント⑧ 開けた公園でジバチが肉団子を作って、運んでいる様子あり

スズメバチの仲間は、幼虫のために昆虫を捕らえ、肉団子にして巣に持ち帰るという。近くには、セミ、トンボがいた。それらを捕らえて、肉団子にしていた可能性が高い。

ポイント⑨ セミの鳴き声の構成が変わった?

真ん中あたりに来て、聞こえてくる鳴き声に変化が現れた。登り始めは、アブラゼミとツクツクボウシであったのが、ミンミンゼミが大きく聞こえてきた。ミンミンゼミは、アブラゼミやクマゼミと比べると暑さに弱いセミでることから木陰や標高が影響しているのかと思われる。

ポイント⑩ 分かれ道の開けたところで飛んでいるオニヤンマ

ギンヤンマと同じく水辺にいるはずのオニヤンマ。山にいる目的は何だろう。オニヤンマは危険な昆虫スズメバチをも捕食することがあるぐらい獰猛なトンボ。肉食であるため大量のセミがいるこの場所にきたのではないかと思う。

ポイント⑪ 周りの木立がスギ木立に変わった

頂上手前でスギ木立が現れた。スギは主に木材や防風林として利用されている。この場所に村の財産のためか防災機能の強化のためか植林されたのだろうか。それとも、もともと雌岡山全体がスギに覆われていたところ、侵食や開発によってここの一部分だけが残って収まったのだろうか。

せみの鳴き声にヒグラシの声が多くなる。ヒグラシは、スギ、ヒノキの林で見られることが多く、そしてヒグラシは涼しいのを好んでではなく、暗いのを好んで時間的に遅くに鳴いているということだ。

この環境は、ヒグラシにとって良好な条件だったに違いない。

ポイント⑫ 頂上の広場の広葉樹に多くのモンキアゲハ、カラスアゲハを見かけた

この二つのアゲハの共通点として、黒いので天敵から逃れるため森の中で紛れやすいからなのではと思った。

モンキアゲハは、暑い時間帯でも活発に飛んだり、成虫は庭先の園芸種など、さまざまな花の蜜を吸うためよく見かけられる種である。幼虫はミカン種を食べるため、成虫はミカン科の植物に卵を産むそうだ。

カラスアゲハは、都会には少なく、郊外でよく見らとれる。同じく幼虫はミカン科の葉っぱを食べながら育つため、成虫はミカン科の樹に産卵する。

これらのことから、その広場の周辺にミカン類の木々があった可能性がある。産卵のため、又は孵化したばかりのアゲハが舞っていたと考えられる。

ポイント⑬ 動物、鳥はほとんど見かけなかった

入り口、標高が低いところで、スズメ。上空で飛行中のとびを見たが、せみの鳴き声にまぎれたのか鳥のさえずりを確認できなかった。木立の間を飛ぶ姿も見かけることがなかった。

 

感想

観察中、すれ違った散歩されている方への取材で、10年前20年前のこの自然道の変化を聞いたところ、「変化についてあまり感じていない」との回答であった。

また、見かけることのなかった鳥についてお聞きしたところ、8月初旬までウグイスが鳴いていたことを聞いた。

明石海峡大橋が眺望できる距離にあり、またニュータウンに近いにもかかわらず、雌岡山の周りにはまだたくさんの田畑が存在し、ため池も多くあることから、自然が守られ続けてきたのかなと思う。

芋堀りの時に感じることができなかった植物やはっている昆虫、飛んでいる昆虫に目を凝らして、動いている生き物を見て、知らなかった生き物の生態を調べてみると、ここ雌岡山の環境が守られ、恵まれていることを改めて感じた。雄岡山も同じような環境であるのか。機会があるならば、調べてみたい。

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