応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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受賞作品一覧
入選
第32回 高校生の部

歴史のある自然路~目白~

久保 ゆり

東京都
都立国際高等学校
高校1年生

全体説明

私の住んでいる街は、都会の真ん中にありながら、大変自然に恵まれている。駅のそばには学習院大学があり、大学の中も外も濃い緑におおわれている。また、線路をはさんだ学習院大学の反対側には、おとめ山がある。おとめ山は漢字で書くと、「御留山」または「御禁止山」になる。昔からこの辺りは、将軍の狩り場であり、一般人は立ち入ることができなかった。そのせいか、自然が守られ、今でもうっそうとする程の緑が残っている。おとめ山は落合台地の南斜面にあたり、この辺りの台地は急な斜面のあちこちから水も自然を残す大きな役割をしていたのではないだろうか。明治になり、この一帯は東側が近衛家、西側が相馬家の所有となった。由緒ある土地だからこそ先人が大切に自然をのこしてくれたのだろう。私はその恩恵を受け、存分に散策を楽しみたいと思う。

観察ポイントごとの説明

①学習院大学

学習院大学は都心部にありながら、深く美しい緑に囲まれている。多くの種類の木々の周りでは、様々な生き物を目にすることができる。大学内には文化財に指定されるような歴史的建物があり、それらを取り囲む自然は四季折々の風情を楽しませてくれる。正門の桜、西門から西板門の椿も美しいが、大学中央のイチョウやカエデも捨てがたい。血洗いの池はうっそうとした緑の真ん中にあり、ザリガニが見つかることもある。

②近衛町

学習院の西坂門を出て、高田馬場方面へ山手線沿いに下っていく。高架下を通り、右側の坂を上って行くと日立目白クラブが見えてくる。一本道をまっすぐ行けば、旧近衛邸のケヤキが見つかる。このケヤキは樹齢百年を超える大木だ。屋敷の車廻しにあったと伝えられている。そびえ立つ姿は堂々としており、勇ましい。すぐ近くにはスダジイの大木もあり、近衛家の歴史に思いをはぜることができる。まさに近衛町のシンボルだ。

 

③おとめ山の桜

おとめ山の中心を通っている道では、美しい桜並木を見ることができる。春には多くの人の目を鮮やかなピンク色の花で楽しませてくれる。やわらかい色合いの葉桜を見ると、生命力を感じる。この道路の左右にはおとめ山公園が広がり、この辺りは福島の相馬地方の殿様が所有していた相馬家の庭園だったそうだ。過去に思いを馳せながら、ゆっくり歩いていくのは本当に楽しい。

 

④おとめ山公園 -水辺-

山を下りながら左の公園に入っていくと、小さな生き物がたくさん見られる池に出る。特にカメが可愛らしく、何匹も連なって日向ぼっこをしている。コイやカエル、ザリガニもいて、小さな子供たちもよく見に来ている。また、周りにはキチジョウソウ、ツワブキ、ワレモコウなどの野草が生い茂っている。

 

⑤おとめ山公園 -稲荷側-

道路を渡り、向かいのおとめ山公園に入ると、うっそうと茂る緑の樹木があらわれる。入り口付近にはホタルを育てている場所がある。江戸時代にはホタルがたくさんいたらしい。園内には湧水も見られ、水がこの樹木と生き物を支えているのだろう。樹木の種類は多く、約百種に及び、ケヤキ、カエデ、ミズキ、コナラ、エノキ、スダジイなどがあげられる。樹は太く、高く、ひんやりとした空気を感じる。

 

⑥保育園前

こちらは小さな道路に面している保育園の前で、メダカを育てている。道路にそって細長い場所でメダカが観察できる。スイレンの下で、メダカが元気よく動いており、人影を感じると、さっと隠れてしまう。メダカを赤ちゃんの頃から育てており、大きくなっていく姿を誰でも気軽に見ることができるのが嬉しい。

 

⑦氷川神社

氷川神社は相馬坂と七曲坂の間に位置する。江戸時代は下落合の鎮守であった。新目白通りに接しているが、静かで歴史を感じさせる佇まいがあり、ケヤキやツバキの緑が訪れる人々を優しく迎えてくれる。夏はセミの声がよく聞こえ、騒がしいくらいだ。

 

⑧野鳥の森公園

薬王院の手前を右に入っていくと、森の中に小さな池がある。昼であっても、樹木のせいか暗い雰囲気がする。この落ち着いた空気が、鳥たちを安心させるのかもしれない。ウグイス、キジバト、シジュウカラ、メジロ、オナガ、ヒヨドリ、ツバメなどを見ることができる。一度に色々な種類の鳥を見ることはなかなかできないが、その日に出会えた鳥を家に帰って確認するのが楽しみだ。

 

⑨薬王院

野鳥の森公園に隣接する真言宗の大きな敷地の寺院である。新宿区みどりの文化財(保護樹林)に指定されており、その面積は四千七百平方ノートルになる。ケヤキやイチョウの大木が空高くそびえているので、都会であることを忘れてしまう。ボタンの花は見事で、手入れのいきとどいた院内はすがすがしい。長い階段を上ると、おとめ山の西側になり、かなり急であることがわかる。

 

⑩神田川

古くは江戸の町への給水の役割を果たしていた。今となってはきれいな水とは言えないが、三鷹市の井の頭池を水源とし、途中で善福寺川、妙正寺川を合わせ、隅田川へ注ぐらしい。川沿いには桜が植えられ、夏にはホタルが見られたときもあり四季の風情があふれていた。水中の生物はなかなか見ることはできないが、鳥がときどきやってきては羽を休めている。特にコサギは白い体が美しく、涼し気であった。

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