応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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環境大臣賞
第37回 団体の部

自然満喫ツアーへようこそ

地域環境系列環境ゼミガイド班(代表:後藤小華)

北海道
北海道標茶高等学校
高校3年生

全体説明

私たちが通う日本一の敷地面積を誇る標茶高校には身近に多くの植物や動物が住んでいます。実際に私たちは自然満喫ツアーと題して高校に地域の方々を招待してガイド活動を行っています。この地図上のガイドルートは、沈砂ゾーン、脱窒湿地、ツリー広場、源流の四か所に分かれています。各箇所とてもきれいです。
この標茶高校は昔、集治監でした。ガイドルートにはその名残であるものや、集治監があった時代から生えている樹木、集治監時代のことを現代に伝えてくれる文書庫など、多くの財産が残っています。季節によって観察できる植物が変化し、他の地域では見ることのできないものまで、多くの植物を目にすることができます。動物はキタキツネや二ホンザリガニ、タンチョウが見られます。水辺には、水がきれいな場所にしか咲かない花や草が多く生え、この地域の水のきれいさを教えてくれます。

観察ポイントごとの説明

観察ポイント①
高校の校舎から校門側へ歩くと、明治32年に公文書を保管する場所として建てられた文書庫が見えてきます。現在の標茶高校の敷地には130年くらい前、釧路集治監という刑務所のようなものが設置されていました。この文書庫も当時建てられ、移築されずに残っている貴重なものです。
集治監の廃止後は明治40年から、軍馬を育てる軍馬補充部が設置されました。このときつくられたものが蹄洗場です。馬の蹄を洗う場所で、すり鉢状にくぼんでいます。おおいかぶさるようにはえる大きな木はミズナラです。とても太く、幹に高校生が2人手をまわしてやっと指先がふれるくらいです。終戦後軍馬が不要になり軍馬補充部が廃止された後、馬産のノウハウをいかして現在の標茶町の基幹産業、酪農業が発展しました。軍馬山側の牧草地では、よくエゾシカの群れを見ることができます。驚かせてしまうとお尻の白い毛をふくらませて逃げていきます。

観察ポイント②
道のわきにある農業用水路にはミニ湿原から流れてきた軍馬川が流れています。授業のなかで水生生物を探したとき、二ホンザリガニを見つけました。日本固有のザリガニで、北海道と本州の東北地方だけに生息しています。外来種のウチダザリガニなどとくらべると色合いが暗いこと、体が小さく、丸みを帯びているような印象を受けます。

観察ポイント③
小さな橋を渡った先のミニ湿原には、ハンゴンソウが少し花火に似た黄色い花を咲かせています。葉が手のひらのように裂けているのが特徴的です。花が咲く前は何かわからず、図鑑を見て頭を悩ませました。葉の形が似ている特定外来生物のオオハンゴンソウもあります。

観察ポイント④
林に入ると、一気に緑が濃くなったような感じがします。真夏だと、すごく天気のいい日でも林のなかはうっすらと陰っています。そんな林床で見ることのできるのが、オオウバユリです。つやのある肉厚で大きな葉をしげらせ、7月ごろ横向きの白いユリのような花を咲かせます。発芽から開花までに7年ほどかかるそうです。アイヌの人たちは鱗茎からとれるでんぷんを保存食にしていたそうです。アイヌ語名はトウレプです。

観察ポイント⑤
オオウバユリと同じようなところで見られるのが、バイケイソウです。葉に縦に走った葉脈が目立ちます。有毒で、山菜と誤認しやすいため食中毒の事故が多いため注意が必要です。6月ごろに緑がかった白の花を咲かせたあとは、茶色く枯れていきます。

観察ポイント⑥
ツリフネソウはゆらゆらとぶら下がった不思議な形の花です。上に出ている茎の何本かには赤っぽい硬い毛のようなものがあります。初めて見たときは独特な見た目に驚きました。色は鮮やかな赤紫色から白っぽいものまで様々です。高校では白っぽいものをよく見る気がします。ほとんど同じ形の黄色い花をつけるキツリフネも咲きます。

観察ポイント⑦
軍馬川源流までさかのぼると、これもまた軍馬補充部があった時代の名残、浄水池を見つけることができます。ここから銅の水道管をひき、水を送っていました。標茶最古の上水道です。コンクリートで作られたダムのようなものがあり、きれいな水を好む水中性の多年草、バイカモが生育しています。8月ごろ、梅に似た白い花をつけます。今年もちらちらと咲いていました。水温は7度くらいで、真夏でも手がしびれるほどの冷たさです。

観察ポイント⑧
源流から引き返して足元を見ると、5~6月に白く大きな花をつけるオオバナノエンレイソウが咲いていました。葉、がく、花弁をそれぞれ3枚ずつもつ花で、葉の葉脈は網目のように細かく走っています。この花も、発芽から開花まで10年程度かかるそうです。北海道大学の校章になっています。

観察ポイント⑨
シダの仲間、クサソテツがたくさんある場所です。春先はうずを巻いて丸まっていた葉がどんどん広がっていき、夏ごろに鮮やかな緑の大きなブーケのようになるさまはとてもきれいで不思議です。さて、そんなところでみつけたのがマムシグサです。茎に見えるものは偽茎というそうで、マムシのような紫褐色のまだら模様があります。花も実も特徴的です。あまり見ないので見つけたときはうれしかったです。

観察ポイント⑩
エゾニワトコは8月ごろに実が赤くなり、高さ3~5mの落葉樹です。

観察ポイント⑪
牧草地に面した林の端、明るいところで見られるのがホザキシモツケです。淡い色合いのふわふわした花を咲かせます。群生することの多い低木です。少し似た花でエゾノシモツケソウもあります。こちらは多年草です。

観察ポイント⑫
8月末にみつけたのはエゾトリカブトです。大き目の青紫色の花に目がひきつけられます。猛毒性のアルカロイドを含み、全草が有毒です。食べるとけいれんや呼吸不全に至って死亡することもあります。アイヌの人たちは矢毒として狩猟に使ったそうです。

観察ポイント⑬
エゾエンゴサクは早春に咲くケシ科の花です。花の色は青系、紫系、赤系など変化に富みます。スプリングエフェメラルといって、春早い時期に花を咲かせたあと、ほかの植物の若葉が広がるころには地上部は枯れてなくなり、その後は翌春まで地中の地下茎で過ごす草花です。アイヌの人たちは根の塊茎を掘り、焼く、煮る、煮たものをつぶして餅のようにするなどして食べたそうです。アイヌ語名はトマです。

観察ポイント⑭
牧草地には特別天然記念物のタンチョウが飛来します。多い時だと10羽近く観察できたこともありました。標茶では身近な鳥で、通学中に頭上を飛んで行ったり、教室の窓から見えたりします。鳴き交わす声が遠くから響いてくることもあります。北海道東部の湿原を中心に分布するツルです。冬には授業でタンチョウについて学び、鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリで観光客の方に高校生がタンチョウガイドをする活動も行っています。

観察ポイント⑮
同じく牧草地や陸上トラックのあたりでよく見かけるキタキツネです。雑食性で、ノネズミ類や昆虫類、果実などいろいろなものを食べます。夏毛の時は輪郭が一回り細くなったように見えます。エキノコックスを媒介します。校舎まで戻り、自然満喫ツアーは終わりです。

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