応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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受賞作品一覧
優秀賞
第37回 団体の部

今昔を結ぶアオの物語 ~ 1000年をつなぐ里山を未来へ ~

やましおちっち〔神ゼミ河川調査班〕(代表:山田善将)

広島県
広島県立油木高等学校
高校2年生

全体説明

油木(ゆき)は広島県の中東部に位置する面積381.98㎢、総人口約9000人の神石高原町の中にあります。油木の町の歴史は深く、亀鶴山八幡神社という神社は1000年以上前からあると言われています。神社が大きいことから、1000年前にも油木に人の暮らしがあったことが想像できます。
今回のルートは、標高約500~350mほどで、高低差が150mもあり、里山、河川などさまざまな場所が存在します。また、高低差があるからこそ色んな生物が生息しているのではと考えています。
自然や生態系が豊かな一方、多様な問題があります。一部の場所ではブルーギルが川に生息していることも確認しました。外来生物についてはまだまだつかめていないことが多くあります。これからの研究でいろんなことを明らかにしていき、油木の生物多様性を次の1000年へと繋げていきたいです。

観察ポイントごとの説明

①中国自然歩道
中国5県を一周する総延長約2295㎞の長距離自然歩道です。その通りでムラサキシジミを見つけました。木の葉の上に止まっており、翅を閉じているときは茶色や赤褐色で、地味な見た目をしていますが、翅を広げると光沢のある美しい青紫色が目に飛び込んできます。翅を広げた大きさが約4㎝ほどでひらひらと飛びます。飛んでいる姿は可愛らしく、チラチラ見える青紫色が美しいです。

②神社脇の道
スギ、モミの大樹が介在している林と水田に挟まれ、水辺に集まる生物、それらを捕食する生物や林に生息する生物が集まるこの場所ではホソミイトトンボが観察できました。ホソミイトトンボは淡青色で全長が30~40㎜と小さく、またその名の通り胴体が糸のように細いのが特徴的です。夏型と越冬型がいるようで、それぞれ体長と体色が変わります。夏型に比べ、越冬型の方が体調が大きく、また茶色っぽい地味な色をしています。

③崖下のオアシス
雨が降ると山の斜面にある岩から水が滲み出て、その水を飲みに蝶などが飛んでくる場所です。観察した日にはシオカラトンボが飛んでいました。ヤゴの時は赤褐色なのに大人になると淡いアオ色になるところがなんとも不思議です。他の水を飲みに来たチョウ類などを捕食するためか、はたまた産卵目的で来たのでしょうか。すぐそばにはキツネノカミソリが群生しています。調べてみると園芸種のようで一体どこから来たのでしょう?

④福井橋
水田と里山に囲まれさまざまな生物が行き来する福井橋。その脇の木々に囲まれた道の地面で、青い羽根を拾いました。私たちは、大きさや色からブッポウソウの羽根ではないかと予想しました。地域の鳥に詳しい方に羽根を見ていただいたところ、「ブッポウソウの羽根で間違いないだろう」とのことでした。ブッポウソウの特徴的な鳴き声である「ゲッゲッゲ」というような鳴き声も近くで聞いていましたが、その姿を見ることはできていません。
ブッポウソウは体長30㎝ほどの中型の鳥で、夏鳥として日本に飛来します。日本では里山と深い森がある場所に生息しており、胴体は光沢のある青色の羽根で覆われ、光の加減で緑色に見えることもあります。広島県では絶滅危惧I類(CR+EN)に選定されています。1980年代には油木町のいたるところで見られる夏鳥でしたが今では、見ることが少なくなったそうです。

⑤田んぼと小川
道の下には水田や畑が広がっており、脇を流れる川にハグロトンボがいました。オスの胴体は光沢のある青緑色や金緑色に輝き、メスの胴体はくすんだ黒っぽい色をしています。ひらひらと飛ぶ姿は何とも可愛らしいです。
畑の隅にはホタルブクロが咲いています。白やピンクの小さな花で、名前の由来は蛍を捕まえて花に入れて遊んだからという説と、提燈の事を「火垂る袋」と呼ぶ地方がありそれに似ているからという二説があります。

⑥油木小学校横
小学校の横の道にはムラサキツユクサが群生しています。鮮やかなアオ色をしている小さな花で20㎝程の大きさでした。その付近には、キンミズヒキも咲いていました。黄色の小さな花が特徴的で、力強く上へ上へと伸びているようでした。花の周りにはルリシジミたちが飛んでいます。小さな蝶で翅の表面は青紫や瑠璃色をしていて可愛らしさもあり美しい蝶です。

⑦ラミーカミキリの生息地
川の近くに生えているカラムシの上で、ラミーカミキリが確認できました。小さくて短距離を飛び回るので観察に苦労しました。淡いあお色に黒の模様でまるでチョコミントのようです。このラミーカミキリを調べてみると、非意図的に中国からやってきた外来種のようでカラムシなどの植物への食害や在来昆虫との競合などの影響があるそうです。今後観察がさらに必要になってくるでしょう。

⑧蝶の水飲み場
木陰があり、川が近いので乾きにくいという違いはありますが、崖下のオアシスと同じように山の斜面にある岩から水が滲み出ている場所です。ここには水を飲みに来たカラスアゲハがいました。水を飲む理由は体を冷やすためだということを地域の方に教えていただきました。カラスアゲハは警戒心が強く観察が難しいです。黒色の翅を広げると角度によって青や青緑色に変わり、思わず美しさから声が漏れてしまいます。

⑨細谷川
河原にはさまざまな植物、水中にはカゲロウなどの水生昆虫やハヤやヨシノボリ類の魚類が生息している細谷川には、植物の葉にモリアオガエルが擬態していました。モリアオガエルは、初夏などに池などの上にある木に泡状の卵を産みます。理由は水中の外敵から逃れるため、乾燥を防ぐためなどと言われています。その近くにはキツネノマゴが花穂に1~2個、ピンク色の花を咲かせていました。

⑩景天橋
細谷川に架かり木々に挟まれている景天橋に、ニホントカゲがいました。日光浴をしているようでしたが、こちらに気づくと物凄い勢いで逃げていきました。体に黒や褐色に縦線があり、しっぽにかけて青緑や青色になっていたので幼体です。この橋の下で釣りをしているとブルーギルが釣れました。生態系に影響を及ぼす可能性が高く、誰かが密放流したのか、はたまたどこかから流れてきたのか、今後詳しく調査していきたいと思います。

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