受賞作品一覧

荒池玉虫の森観察路

最優秀賞
内藤遊多
愛知県
名古屋市立原中学校
中学校2年生
第30回 中学生の部

全体説明

僕の住む町から歩いて二十分、そこに名古屋市農業試験場(通称:農業センター)がある。僕は幼い頃から虫探しをして大きくなったので、虫が捕れる場所を見つけ、そこに毎年夏に通うことを繰り返している。草原もあり林も田も池もあるこの地に通うようになったのは5年前からである。この農業センターを含む荒池緑地は南西の「荒池」、北東の「大提池」という二つの池をつなぐように広がる。僕が昔、夢見ていた虫「タマムシ」を初めて見つけたのもここだ。だが近年、そのタマムシが非常に多く見られる。夏の荒池のエノキの木に行けばすぐに見つけられるほどだ。そのことから「タマムシの森」と名付けた。

荒池は毎日通ってもあきることのない、生き物の宝庫だ。この名古屋有数の緑地、「荒池タマムシの森」を観察路として歩くと、生き物好きならたまらない出合いがあるだろう。

観察ポイントごとの説明

ポイント1

農業センターの正門から北門へ出てまたセンター東門へ戻る観察路の最初のポイントです。夏は入ったとたんにニイニイゼミを初めとした数種のセミの大合唱が聴こえます。木がたくさん植えられ、林の中のような正門前ロータリーではナミアゲハやクロアゲハなど多種多様なチョウやトンボが春~秋ならいつでも出迎えてくれます。このポイントを出ると、しばらくは農業センター中の多様な植物の植えられた道を歩いていきます。

 

ポイント2

センター北門から出て、竹林の小道を抜けていくと二つ池、田んぼと畑があるポイント2、3、4、5があります。まずポイント2の畑です。明るい草地も付近に広がり、たくさんのトンボ、チョウ、バッタが見られます。ここでは荒池緑地に最も多いヘビ=シマヘビを見ることが多いです。絵に描いたシマヘビはのんびり日なたぼっこをしている所です。

 

ポイント3

このポイントは、田んぼと二つの池が集まっている水辺地帯の一番北にある田んぼです。この田は無農薬のため、多様な水棲生物が見られ、稀少なヒメミズカマキリも稀に発見します。春には田植えも体験できて、魚が泥水に見え隠れする様が間近で見られます。田周近の草原では、秋になるとマツムシの合唱が聴こえます。脇に1本の巨大なエノキが生えていて、春からナナフシが大きくなっていく様が観察でき、タマムシも生息しています。

 

ポイント4

二つ池の下池のポイント4では、水棲生物が豊かに息づいています。ですが、ここにはザリガニやカダヤシ、ウシガエルが繁栄してしまっていて、外来生物が目立つ池となっています。最近は「生き物を捨てないで」という看板が立てられた程です。「どうか、これ以上、日本に外来種が広まらないように、」とここに来るといつも思います。でも日本の生き物も負けてはおらず、在来魚やトンボ達も、たくさん下池でも見ることができます。

 

ポイント5

二つ池の上池のポイントです。下池より小さいものの、草がおい茂り、沼のような外観です。ここにも、外来魚は住みついてしまっていますが、モツゴ、ギンブナ、コイなどの在来魚もたくさん生息しています。下池より草が多いので、バッタの仲間などの陸上昆虫も多く見られます。この池から元のコースへ戻ると、住宅地が右に広がる小道をしばらく進み、やがて森の奥へ突き進んでいるかのようなうす暗い脇道に入ります。

 

ポイント6

森の中をはしっているこの道では、またたくさんの虫と出会うことができます。入って少しすると、右手に竹林が見えてきます。その付近に奇妙なクモを見かけます。アリに凝態しているアリグモです。あまりよく見かける生きものでないだけに、出合うと嬉しいです。長そで長ズボンで歩かないとおそろしいことになります。後のポイント14~18の竹林道も同じです。

 

ポイント7

ポイント6からしばらく歩くと、フェンスに隠された森の中の道が見つかります。中に入っていくと、樹液のでている木に、たくさんの虫を見つけられます。カブトムシやネブトクワガタ、まれにコクワガタなんかの人気物からトゲナナフシ、なんていう珍しい昆虫まで様々です。カナブンやカミキリ、カブトムシなんかが、樹液に集まって場所のとり合いをしている所を見ると、心がウキウキします。でも夏限定なのが残念です。

 

ポイント8

ここは、ポイント7の反対側にある小道の入口です。やはり樹液の出ている木がありますが、ここでの主役はノコギリクワガタ達です。この虫についてはポイント15で紹かいします。さて、そのクワガタに紛れて、樹液に来ているのがコロギスです。本来は肉食のバッタの仲間で、木の上に住みます。この虫は今、名古屋で減りつつあるということで、この荒池の地で守って行きたい虫の一つです。

 

ポイント9

森の中の道もあとわずか、という辺りに、ポイント9があります。ここの木で(種類は不明)、シロスジカミキリという大型のカミキリを発見したことがあります。非常に稀な種で、夜行性であるため、めったにお目にかかれないのです。いつまた現れるかと、初夏になるといつも気にしてしまいます。

 

ポイント10

森から一気開けたグラウンドに出た辺りがこのポイントです。グラウンドの近辺には、草原が多いため、カンタンやヒメギスといった「鳴く虫」が多く見られます。大型のトンボも、よくここをナワバリとしており、初夏にはウチワヤンマが軽快に飛ぶ姿が見られます。さらにトンボの王様といわれるあのオニヤンマもここ、荒池に生息しています。一度捕えると二度と忘れない大物です。あと、ここでもタマムシを見ることができます。

 

ポイント11

森の奥から続く右に草原、左に森がある小道を歩いていると、たくさんのチョウやトンボが上空を舞います。荒池緑地の中でも、最もたくさんの虫が飛んでいる道じゃないかと思います。また、路上にも様々な虫達が見つかります。キオビベッコウがジョロウグモを運んでいたりすると足をとめて見入ってしまいます。このポイントもタマムシが飛んでいるのを見かけます。

 

ポイント12

二つ池や田んぼと正反対の所にあるトンボ池には、その名の通り、トンボのヤゴやゲンゴロウの仲間などの水棲昆虫が多く生息しています。ポイント11のトンボ達や12のオニヤンマもこの池で育ったものだと考えられます。ハイイロゲンゴロウとヒメガムシはともによく名古屋の水辺に見られます。池のまわりは草原になっており、ツユムシなどのバッタ、チョウトンボなどの成虫のトンボが飛び交っています。

 

ポイント13

長く続いた道もこのエノキの木のポイント13で左の竹林道に入るため、お別れです。このポイントは樹液の出ているエノキの木に集まる虫が中心です。カナブンで満員の樹液に、そのエノキの木で幼虫が育つゴマダラチョウが生まれ育った木に大人になっても樹液を飲みに来ます。エノキの木はゴマダラチョウにとって、一生の家なのかもしれません。そのチョウを狙ってハラビロカマキリ、エノキが食草で同じのタマムシもここでよく見かけます。

 

ポイント14

竹林道に入ると左右を木が竹に挟まれます。その道上がポイント14です。クロアゲハがゆっくりと通りすぎたり、タマムシがキラキラ太陽に反射させながら飛んでいたり、上ばかり見ていると下の道にシマヘビがいたりする、楽しい出合いの道です。

でもこの道は土曜と日曜しか開放されていないんです。

 

ポイント15

竹林道の左側に果樹園、そのとなりに小屋があります。ここには僕の入っている「荒池ふるさとクラブ」という自然観察会の小屋で、実は田んぼ、二つ池、トンボ池の管理もしています。この小屋の近くに2本のクヌギの木があり、そこにカブトムシやノコギリクワガタ、オオスズメバチが樹液求めてやって来ます。ノコギリクワガタは、荒池緑地に最も多いクワガタで、大きなオスはアゴが曲がっていて、とてもかっこいいです。

 

ポイント16

15の小屋を抜けると果樹園に出ます。

では果樹よりも下に注目します。あちらこちらでニホントカゲとニホンカナヘビの子供が見つかります。とてもかわいらしく、ついつかまえて見てしまいます。このトカゲ達のエサとなる豊かな虫たち、コオロギやカメムシがたくさんここにはいて、また、トカゲ達と同じ捕食者であるチョウセンカマキリも多く見られます。

 

ポイント17

また小屋を抜け、もとの竹林道に出ます。いよいよ竹林に囲まれ、視界が竹でいっぱいになります。この道に時々、ナガサキアゲハがチョウ道を作ります。大きなチョウなので飛んでいると大きな存在感があります。竹林の奥に赤い虫が飛ぶ姿を見かける時がありますが、それは赤い羽根のベニカミキリです。竹林の下草なんかに「ジキジキ…」と鳴いているのはササキリです。荒池緑地に非常に多く生息している鳴く虫の仲間です。

 

ポイント18

竹林道の右や左にいくつかの横道がありますが、その内の1本、コナラ広場へ出る道に入ります。コナラ広場がポイント18です。この広場週辺の竹林を下草に、ヤマトヒバリという鳴く虫がたくさん生息しています。声は「リュリュリュ……」といった感じで、気づきにくいですが、とてもかわいい虫です。このポイントには、秋になると、アサギマダラが飛来します。運が良ければ見ることもできます。この後、竹林道に戻った先がゴールです。