応募期間

2024年6月1日 (土)~ 9月30日 (月)

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受賞作品一覧
優秀賞
第39回 高校生の部

身近な自然を知り尽くす!古川自然観察路

木原博翔

広島県
崇徳高等学校
高校2年生

全体説明

太田川から注ぎ、広島市安佐南区を流れる古川は、古くから愛されてきた川です。その中でも、川内地区を流れる古川は「古川せせらぎ河川公園」と呼ばれ、春から秋にかけて毎年多くの人が訪れ、バーベキューや生物観察、川遊びなど、子供から大人まで自然を楽しめる憩いの場となっています。そんな古川せせらぎ河川公園内の古川は、下流域、中流域、中上流域、上流域と、川の全ての景観が凝縮されており、川のほとりにはしばしば湿地も見られます。そのため、流水性の生き物はもちろん、止水性の生き物も多種多様です。また、これらの川の一連の環境や景観、そこに生息する生き物は全て、遊歩道を歩いて見て回ることができます。そんな自然豊かな古川せせらぎ河川公園の古川は、1歳の頃からの思い出の場所であり、私を昆虫の世界へ導いてくれた場所でもあります。この私のお気に入りの場所へ、皆さんをご案内しましょう。

観察ポイントごとの説明

<1>

古川せせらぎ河川公園の一画にある川内第一公園には、大きなエノキの木がたくさんあり、ここではヤマトタマムシを見ることができます。よく晴れた日の日中、雄はエノキ林の林冠を活発に飛び、時には地上3〜4mほどの低い場所を飛ぶこともあります。運が良ければ、桜の枯れ木などで雌の産卵も見られます。しかし、公園内では6年前から個体数が減少しています。

 

<2>

薄暗飛翔性のトンボで、早朝5時〜6時頃と夕方5時30分〜7時頃にのみ活動していました。古川では第一・第二古川合流地点と第二古川(第一古川、第二古川のそれぞれの場所は地図上に記載)で主に見られます。本種の雄は他のヤンマ科のトンボよりも明らかに小型であり、雌は翅の付け根が濃い黒褐色であるため、飛行中でも容易に判別することができます。私が所属している佐東公民館古川トンボしらべ隊での調査では、本種は夕方よりも早朝の方が、飛行速度が遅く高度が低いため観察しやすいことが分かりました。また本種は、広島市内では個体数が極めて少なく、特に雄の観察は困難です。そんなマルタンヤンマが古川で安定的に見られるのは、本種の生息環境である「周囲に雑木林や樹林のある水生植物の豊富な水域」が守られているからだと考え、改めて古川の豊かさを実感しました。

 

<3>

日本の国蝶(国を象徴する蝶)であるオオムラサキに近い仲間で、雄の翅は美しい青紫色の構造色(光の反射によって見える色)に輝きます。古川では岸辺に生えるヤナギ科の樹木の樹上でよく見られ、樹液を吸う姿や、雄同士が樹冠を滑空しながら争う様子が見られました。本種は近年、全国的に見ると減少している地域もあり、大変貴重な蝶です。

 

<4>

日本では珍しいスズキの仲間の純淡水魚で、別名カワメバルとも呼ばれます。絶滅危惧種ⅠB類(環境省2020年)に指定されている貴重な魚です。古川では、第一・第二古川の至る所で見られました。本種は、国内では京都府以西の西日本に分布する魚ですが、近年は東京都の多摩川水系などに国内外来生物として定着しているようで、これらの地域では在来生物を脅かす原因になっているそうです。

 

<5>

国内で繁殖するサギの仲間では最大で、古川では至る所で見られました。小魚を捕まえて食べる様子をよく見かけましたが、爬虫類や甲殻類、時には他の鳥のヒナやネズミも好んで食べるということを知り、驚きました。古川では、アオサギの他にコサギ、ダイサギ、チュウサギも見られます。

 

<6>

古川では近年減少傾向にある珍しい鳥です。第一・第二古川で見ることができました。また、小型の淡水魚や水生昆虫、貝などを好み、それらを狙って川にダイブする姿を観察することもできました。運が良ければ、捕まえた淡水魚などを岩に叩きつけるところや獲物を飲み込むところを見ることができるかもしれません。ちなみに、獲物を岩に叩きつけるのは捕まえた獲物を弱らせたり、食べやすくしたりするためだそうです。

 

<7>

近年河川の改修工事などにより大きく数を減らしており、準絶滅危惧種(環境省2020年)に指定されている貴重なトンボです。川底に砂泥の堆積した川にのみ生息し、古川ではこのような環境が至る所で見られるため、個体数は少ないものの、安定して生息しています。主に第一古川で見られました。本種はヤマサナエと姿がよく似ていますが、襟にあるL字模様がヤマサナエよりも細かいという点で見分けられます。

 

<8>

ヤツメウナギ科に属する淡水生物で、絶滅危惧種Ⅱ類(環境省2020年)に指定されています。ウナギによく似ていますが、本種は顎がない「無顎口類」と呼ばれるグループに属しており、口は吸盤状で、魚とは口の構造が異なっています。そのため、魚類ではないという説もあるようです。一生を川で過ごし、大きいもので20cmほどにまで成長します。古川では、第一古川の川底の砂泥でよく見られました。

 

<9>

アオハダトンボは、名前の通り全身が青緑色で、金属のような光沢をもちます。準絶滅危惧種(環境省2020年)に指定されており、広島市内では太田川支流の中上流部の2ヶ所にしか生息していないとされてきました。しかし、私の所属している佐東公民館古川トンボしらべ隊の調査で、古川での生息を確認することができました。主に第一古川で見られ、盛んに水面を飛び交う雄の様子がなんとも上品でした。

 

<10>

ハラビロトンボは、名前の通り腹が広く、体長3cmほどの小さなトンボです。湿地性の典型的なトンボで、古川では雨水や河川からの分離でできた湿地で見られました。本種の見どころは、未成熟、亜成熟(半成熟)、成熟とで体色が異なることです。未成熟期は雌と同じく雄は黄色く、亜成熟期になると黒色、成熟期になると青色へと色が変化します。これだけ色が変化するので、まるで種類が違うようでおもしろいです。

 

<11>

日本国有のカメで、近年外来種のミシシッピアカミミガメなどの影響を受け、数を減らしています。準絶滅危惧種(環境省2020年)に指定されています。透明度が高くきれいな水質を好み、古川では第一古川の最上流部で見られました。しかし、個体数は少なかったです。過去に子ガメを確認しているため、繁殖できているようですが、外来種との交雑による本種の遺伝子汚染は頭を悩ませます。

 

<12>

毎年6月になると、第二古川の最上流部をゲンジボタルが飛び交います。山間地域と比べると個体数は少ないですが、幼虫の放流活動によって現在も本種の美しく舞う姿を見ることができます。市街地環境にある古川でひっそりと優しい光を放つゲンジボタルを見ていると、古川の自然を守りたいという気持ちが強くなりました。

 

<13>

カネヒラは、古川では唯一のタナゴの仲間です。主に第二古川の流れが緩やかな場所で見られ、盛んに雄同士が縄張り争いをしていました。繁殖期の雄は全身が美しいピンクと青緑色に染まり、その美しい姿は、水面越しからでも目立つほどです。初めてカネヒラを捕まえた時の驚きと感動は、今でも忘れられません。この感動を古川に訪れた人たちと共有したいです。

 

<14>

ツユムシはキリギリスの仲間で、草原に生息する昆虫です。かつては草原で普通に見られましたが、近年は建物の建設や都市開発などによって草原が減少し、本種の個体数が減っています。古川の周囲には草地が発達しているので、古川では至る所で見ることができました。本種は「ジー」と継続音で鳴くのかと思っていましたが、実際は「シリー・プチプチ」と途切れるように鳴いていました。とても変わった鳴き声でした。

 

<15>

アキアカネは典型的な水田の赤トンボですが、川内地区やその周辺地域は田んぼが極めて少なく、本種をたくさん見ることができる場所はここ、古川せせらぎ公園だけかなと思いました。古川がいかに豊かであるかが分かります。本種は初夏に成虫になると、体が赤くなって成熟するまで近くの林や山の中で過ごします。そのため、古川の周囲の樹林環境を大切にすれば、私たちとうまく共存できるのではないでしょうか。

 

<15>

グンバイトンボは名前の通り、雄の脚には相撲で使われる軍配のようなものがついています。雌にはこの軍配のようなものはありません。全国的に個体数が減っている貴重なトンボで、準絶滅危惧種(環境省2020年)に指定されています。本種は水中の植物の茎に産卵するため、古川で草刈りや河川整備などを行う際は川岸の水生植物や水中の水草を残すようにすれば、グンバイトンボにとってより住みやすい環境になると思いました。

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